HOME >BLOG
就業規則は大丈夫ですか? (その5) 残業代未払いは怖いです。
営業スタッフが多い会社などでは、残業時間を管理するのが大変なため、残業代を支払う代わりに手当(営業手当など)を支給しているところが少なくありません。
それ自体は問題ないのですが、きちんとそのことを就業規則に規定しておかないと後で大変なことになる場合があります。
<とある会社の例>
先月末で退職した社員が社長宛に手紙を送ってきました。
その手紙には在職中2年間の残業代を支払って欲しい旨の記載があり、丁寧にタイムカードのコピーも同封されていました。計算すると100万円にもなります。
残業手当の代わりに営業手当を支払っていると認識していた社長はその手紙をずっと無視していました。
すると、しばらくして労働基準監督署から呼び出しがかかりました。その社員が相談に行ったようです。
社長は担当官に次のように説明しました。
「うちは残業代は支払っていないが、その代わりに営業手当を支払っている。残業代よりも多い場合がほとんどだから問題ないはずだ。」
担当官
「社長の言い分はわかりました。ではその証拠を示すものを見せて下さい。」
社長が担当官に見せた就業規則と賃金規定には、次のように書いてありました。
「営業手当は営業職に従事する従業員に支給する。」
担当官
「社長、この規定では営業手当が残業代の代わりであるとは読み取れません。」
社長は口頭で、全社員に営業手当は残業代の代わりであると確かに言っていたようですが、証拠がなければ何にもなりません。
結局、この会社は元社員の言うとおり100万円を支払いました。
この手の残業代未払いに伴うトラブルは今後更に増加する傾向にあります。
自社の就業規則や賃金規定が問題ないか、確認しておくことをお勧めします。
6親等の親族って誰だかわかりますか?
法人税でも相続税でも租税法では、同族関係というと「6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族」と規定されていることが多いのですが、自分から見て「6親等内の血族」がどういう人なのかすぐにわかる人っているでしょうか?
6親等の血族とは、
自分の曾孫の孫の子ども、あるいは
自分の甥(又は姪)の孫の子ども、あるいは
自分のいとこの孫、などです。
ちなみに3親等の姻族とは、
自分の曾孫の配偶者、あるいは
自分の配偶者の兄弟(又は姉妹)の子ども(要するに甥や姪)、あるいは
自分の配偶者の叔父(又は叔母)、などです。
この「同族関係」が関係してくる規定は租税法には山のようにあります。
例えば非上場株式を相続した場合の納税猶予という規定では、特別子会社が風俗営業などを営んでいると納税猶予を受けることができません。
この特別子会社とは、「会社とその代表者、代表者に係る同族関係者の議決権が50%を超える会社」となっているのですが、同族関係者が上記のとおり6親等内なんてあまりにも広範囲なため、そんな遠い親戚が何の営業をしているのか把握するなんて現実的ではなく、規定の有効性が疑問視されます。
このように、税法には現代には馴染まない不思議な規定が沢山あります。
こういう規定は時代に即して随時改定してほしいものです。
株の売買をしている方は要注意です。(みなし取得費について)
平成22年度税制改正により、平成13年9月30日以前に取得した上場株式等の取得費の特例(みなし取得費)については、平成22年12月31日をもって廃止されることとなりました。
この「みなし取得費の特例」とは、平成13年9月30日以前から引き続き所有していた上場株式等を、平成15年1月1日から平成22年12月31日までに譲渡した場合には、その上場株式等の譲渡所得の計算上、収入金額から控除する取得費は平成13年10月1日における価格の80%相当額とすることができる、という制度です。
個人投資家は、実際の取得費と平成13年10月1日における価格の80%相当額とを比較し、どちらか有利な方を選択することができたのですが、この制度が今年いっぱいで廃止されることとなりました。
ここで注意が必要なのが、古くから所有していたり相続により取得した場合など、実際の取得費がわからないケースです。
「みなし取得費の特例」が使えた場合は実際の取得費が不明であっても問題なかったのですが、同特例廃止後は実際の取得費が不明ですと、収入金額の5%が取得費だとして計算することになります。
そうするとほとんどのケースが大幅に所得が増えます。よって税金も増えます。
証券会社の一般口座に取得費が不明な上場株式がある場合は、早めに取得価額の把握に努めた方がよさそうです。
ペイオフ発動により生じた損失は税法上なんら救済されない?!
日本振興銀行の破綻により我が国で初めてペイオフが発動されましたが、個人の場合は税法上なんら救済されない可能性が高いです。
ペイオフでは、預金者一人当たり元本1,000万円までとその利息の合計額については預金保険制度により保護されます。しかし、1,000万円を超える部分については必ずしも全額は保護されません。
では、保護されなかった部分は税法上どのように取り扱われるでしょうか?
まず、利子所得の費用としてみることができるか否かですか、そもそも利子所得にはそこから控除できる費用という概念が存在しません。所得税法もそのようになっていますから、利子所得から費用として控除することはできません。
次に雑損控除を受けることができるか否かですが、雑損控除を受けられる場合とは、「災害又は盗難若しくは横領」により、資産について損害を受けた場合ですから、これにも当てはまりません。
次に個人事業主の場合の資産損失としての必要経費算入の可能性ですが、この場合の資産とは、「不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業の用に供される固定資産その他これに準ずる資産」となっており、普通預金や定期預金はこれに該当しないため、必要経費算入も不可です。
よって、個人の場合、現行税法では事業主であるか否かを問わず、ペイオフ発動により切り捨てられた部分は、税法上なんら救済されません。
但し、ペイオフ発動は我が国では初めてのケースであるため、今後何らかの手当がされるかも知れません。
注視していきたいと思います。
長崎年金訴訟の影響で5年を超えて遡って税金が還付
国税庁の10月1日付けの発表によりますと、長崎年金訴訟の判決を受けて、現行税法で還付可能な期間である5年を超えて税金を還付する方針のようです。
長崎年金訴訟についてはこちら↓
https://www.hkao.jp/20100901/142
国税庁の発表はこちら↓
https://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h22/sozoku_zoyo/pdf/9382.pdf
現行の国税通則法では5年以上遡って税金を還付することはできません。
これはあまり長く還付を認めてしまうと租税債権が確定せず、歳入の確保ができなくなるためです。
しかし、今回、国は5年以上遡って税金を還付する方針を決めました。
相続したゴルフ会員権の名義書換料が、ゴルフ会員権の取得費に含まれるか否かが争われた所謂右山訴訟でもそうでしたが、最高裁判決による影響はそれだけ大きいということなのでしょう。
ところで、5年を超えて遡るといっても無制限に遡るのではなく、民法上の一般貸金の消滅時効である10年を参考とし、平成12年分以降について特別立法を経て救済する方針のようです。
特別立法がいつ成立するのかは今後の話ですので今はまだ未定ですが、注視していきたいと思います。