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法人が貸付けを行った場合の税務上の取扱い
様々な理由から法人が取引先や関連会社,役員や使用人に対し金銭の貸付けを行うことがありますが,その貸付利息に係る税務上の取扱いは次のとおりです。
1.法人に対する貸付け(原則的取扱い)
法人税法では「有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供,無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のもの」は全て益金の額に算入すると定めていますので,原則として,無利息又は低利貸付により受けた利益については益金として法人税が課税され,無利息又は低利貸付をした側は寄付金と認定され,その損金計上が制限されます。
ゆえに合理的な利率を設定する必要があります。
この場合において,何をもって合理的な利率とするかは難しいところですが,一般的に,貸付けを行う法人における借入金の平均調達金利による貸付けは合理的な利率であると判断されます。
2.法人に対する貸付け(子会社等を再建する場合)
法人が子会社等に対して無利息又は低利貸付をした場合であっても,その無利息貸付等が,例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付等をしたことについて相当な理由があると認められるときは,その無利息貸付等により供与する経済的利益の額は,寄附金の額に算入されません。
3.法人に対する貸付け(災害等の場合)
法人が災害を受けた取引先に対して無利息又は低利貸付をした場合において,当該貸付けが取引先の復旧を支援することを目的として災害発生後相当の期間内に行われたものであるときは,当該貸付けは正常な取引条件に従って行われたものとされ,その無利息貸付等により供与する経済的利益の額は寄附金の額に算入されません。
4.役員又は使用人に対する貸付け
原則として,法人に対する貸付けの場合と同様に,役員又は使用人に対して無利息又は低利貸付を行った場合には,その貸付けにより役員又は使用人が受けた経済的利益の額が役員報酬(もしくは役員賞与)又は給与として所得税が課税されます。
ただし,次に掲げる経済的利益については課税されません。
(1) 災害,疾病等により臨時的に多額な生活資金を要することとなった役員又は使用人に対し,その資金に充てるために貸し付けた金額につき,その返済に要する期間として合理的と認められる期間内に受ける経済的利益
(2) 役員又は使用人に貸し付けた金額につき,使用者における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定め,これにより利息を徴している場合に生じる経済的利益
(3) (1)及び(2)の貸付金以外の貸付金につき受ける経済的利益で,その年(使用者が事業年度を有する法人である場合には,その法人の事業年度)における利益の合計額が5,000円以下のもの
なお,無利息又は低利貸付を行った場合における経済的利益の額は,法人が収受すべき利息と実際に収受した利息との差額になりますが,法人が収受すべき利息の計算については,当該金銭が法人において他から借り入れて貸し付けたものであることが明らかな場合には当該借入金の利率により計算し,その他の場合には貸付けを行った日の属する年の租税特別措置法第93条第2項《利子税の割合の特例》に規定する利子税特例基準割合による利率により計算します。
ちなみに,令和4年~令和7年における利子税特例基準割合は0.9%です。