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区分所有マンションの管理費と修繕積立金の損金性
法人が区分所有する賃貸マンションの管理費や修繕積立金について、各管理組合へ支出した事業年度に全額損金算入が認められるか否かが争われた裁判で、福岡高裁は、実際に費消した部分のみ損金算入できるとして、全額損金算入できると主張した納税者の訴えを退けました(平成22年5月27日判決)。
マンションの管理組合は、毎事業年度の初めにその年度の予算を決めますが、このとき、一般的には過度な余剰金は発生しないように予算を決定します。
所有者から徴収した管理費が、おおよそその年度において支出されていれば問題ありませんが、余剰金が多すぎると、支出した管理費の損金性が問題になります。
今回の福岡高裁判決では、実に、支出した管理費の70%以上が余剰金として管理組合に滞留しており、課税当局も裁判所もそのことを問題視し、余剰金部分については、未だ債務は確定していないと認定しました。
また、修繕積立金についても、通常は長期修繕計画等を策定し、それに基づき徴収すべきところ、今回の事件では長期修繕計画がなく積立金の算定根拠が全く不明であり、更に、管理費との区分もされないで積立金が管理運営されており、とても債務が確定しているとは言えないと認定しました。
要するに、管理費及び修繕積立金というのは名目であり、意図的に法人から管理組合へ資金を移動することにより蓄財を図ったと認定されたわけです。
今回の事件は、20棟余りも所有する法人のケースでちょっと極端ですから、この判決が及ぼす射程範囲もおのずと限られると思いますが、マンションの管理費の損金性については考えさせられる判決です。
ちなみにこの判決は最高裁に上告されており現在係属中です。
最高裁がどのような判断を下すのか、注目されます。
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第二会社方式での第二次納税義務
赤字が続く会社の中には、組織再編を通じて難局を打開しようと検討する会社も多いと思いますが、昨今、注目を浴びている第二会社方式では第二次納税義務に注意したいところです。
第二会社方式の概略は以下の通りです。
赤字会社が様々な事業を営んでいる場合において、その中の優良事業のみを抽出して本体から切り離し別会社化します。そして、本体に残った赤字部門を清算し、今後は別会社化した優良事業のみで事業を行っていく、これが第二会社方式です。
このとき注意したいのが、赤字部門のみとなった本体を清算する場合、金融機関や社長などから債務免除を受けた金額が欠損金を上回るケースです。
債務免除を受けた場合には債務免除益という収益を認識するのですが、これが繰越欠損金よりも少なければ課税されずに済みますが、繰越欠損金よりも多い場合にはその多い金額について法人税等が課税されます。
そして、通常は、清算してゆく会社ですから課税されたとしても納税する資金がありません。
そうすると、「資金がないから納税できない」では税務署は許してくれず、第二次納税義務といって優良部門を切り離した別会社に納税義務が移ります。
結局、税金はどこまでもついてきます。
上記の例に限らず、第二次納税義務まで含めたタックスプランニングは非常に重要です。
短期間での高額役員退職金は課税強化へ
我が国では、退職金は給与の後払い的性格を考慮し、担税力の観点から課税軽減措置が取られています。
具体的には、退職金から勤務年数に応じた「退職所得控除額」を控除し、更にそれを1/2にしてから税率を乗じて所得税を計算します。
ところが、天下りにより財団法人等の役員に就いた人や、外資系企業の役員等については、極めて短期間で役員を退職して退職金を受給するケースが散見されます。
民主党の税制改正プロジェクトチームではこれを問題視し、短期間で役員退職金を受給したケースについては1/2課税の軽減措置を適用しない方向で検討がなされています。
また、政府税制調査会の全体会合においても、同様の指摘がなされています。
「短期間」の定義については、退職所得と同様に1/2課税が採用されている短期譲渡所得を参考にし、
「5年以下」で調整が図られているようです。
更正の請求期間が5年になるかも知れません
いったん提出した申告書に間違いがあることが判明した場合、
追加で納税する必要がある場合の申告を修正申告といいます。
反対に、払い過ぎていた税金の還付を求めることを 「更正の請求」 といいます。
修正申告は何年後でも提出することができますが、
更正の請求は、もともとの申告に係る法定申告期限から1年以内と定められています。
一方、国は、納税者が提出してきた申告書に間違いがあることを発見した場合には、
「更正」処分をすることができ、この更正することができる期間は増額更正の場合には法定申告期限から3年以内(法人税は5年以内)、減額更正の場合には同5年以内となっています。
ここで気を付けたいことは、納税者が税金の還付を請求する権利は1年しかありませんが、国は5年以内であれば還付することができるという点です。
では、納税者が、法定申告期限から1年を超えて税金を払い過ぎていたことを発見した場合にはどうすればいいかといいますと、「嘆願書」というものを提出し、還付の請求をします。
但し、これは法律上の権利ではありませんので、嘆願書を提出したからといって税務署が必ずしも還付してくれるとは限りません。
現在の国税通則法では上記のような法律構成になっています。
が、これが変更になるかも知れません。
政府税制調査会に設置された納税環境整備プロジェクトチームの検討によれば、納税者が 「更正の請求」 をすることができる期間を、「法定申告期限から5年以内」 に変更することを予定しているようです。
これが実現すれば、国が増額更正することができる期間と、納税者が更正の請求をすることができる期間が同じになり、国と納税者とのバランスが保たれることになります。
実現してほしい改正の一つです。
法人設立初年度と2年度の消費税免税が課税になるかも知れません。
消費税法上、資本金1,000万円未満で法人を設立した場合には、設立初年度と2年度目の消費税が免除されています。
これを悪用して、2年度目が終了したらその法人は解散し、別の法人を設立して、また設立初年度と2年度目の消費税の免除を受け、これを繰り返すことにより消費税の免税を受け続けるという租税回避行為が見受けられますが、これを封じる税制改正が議論されています。
平成23年度税制改正では、
「課税売上高が1,000万円を超えることが期の途中で明らかになった場合には、翌期から消費税を課税とする」
方向で検討中とのことです。
何をもって 「1,000万円を超えることが明らかになった」 と判断するのか難しいところですが、どうやら半期で1,000万円を超えていると、「1,000万円を超えることが明らかになった」 とするようです。
そうすると、期の後半で返品や契約変更、契約破棄等があった場合はどうなるのか。
疑問です。