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賃貸用建物を建て替える場合の所得税の取扱い

2024-12-26(木) 18:57:47

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不動産,不動産の上の存する権利,一定の船舶又は航空機の貸付けによる所得を不動産所得といいます。

広告等のため,土地,家屋の屋上又は側面,塀等を使用させる場合の所得も不動産所得に該当します。

下宿等のように食事を供する場合の所得は,事業所得又は雑所得となります。

 

ところで,長く不動産賃貸業を営んでいる場合には賃貸用建物を建て替えることもありますが,その場合に発生する各種費用の所得税法上における取扱いは,それぞれ次のとおりです。

 

(1) 立退料

従前から不動産賃貸業の用に供している建物の賃借人を立退かせるために支払う立退料は,その支払いが確定した年分の不動産所得の必要経費に算入します。これは当該建物を引き続き使用する場合であっても,取壊して建替える場合であっても同様です。

ただし,当該建物の譲渡に際して支出するもの又は当該建物を取壊してその敷地となっていた土地等を譲渡するために支出するものは,譲渡所得の金額の計算上,譲渡費用として控除されるため,不動産所得の必要経費に算入することはできません。

なお,土地や建物の取得に際して,それらの賃借人に支払う立退料その他その賃借人を立退かせるために要した費用は,その土地や建物の取得費又は取得価額に算入されます。

 

(2) 取壊費用

従前から不動産賃貸業の用に供している建物を取壊すための費用は,その取壊しが完了した年分の不動産所得の必要経費に算入します。

なお,建物及びその敷地を取得した場合において,その取得後おおむね1年以内に当該建物の取壊しに着手するなど,当初から当該建物を取壊して土地を利用することが明らかであると認められる場合には,その取壊費用は土地の取得費に算入されます。

 

(3) 資産損失

従前から不動産賃貸業の用に供している建物について,取壊し,除却,滅失その他の事由により損失が生じたときは,その不動産賃貸業が事業的規模であるか業務的規模であるかにつき,その損失の金額(損失発生直前の帳簿価額等)の取扱いは,それぞれ次のとおりです。

① 不動産賃貸業が事業的規模の場合

その損失の金額(保険金,損害賠償金等によって補填される部分の金額及び資産の譲渡により又はこれに関連して生じたものを除く)は,その損失が生じた日の属する年分の不動産所得の必要経費に算入します。

② 不動産賃貸業が業務的規模の場合

その損失の金額(同上)は,その損失が生じた日の属する年分の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入します。

 

事業的規模と業務的規模の取扱いの違いは,事業的規模の場合は損失の金額を必要経費に算入することで所得がマイナスとなることがありますが,業務的規模の場合は「所得の金額を限度として」必要経費に算入するため,所得がマイナスとなることはありません。

 

この違いは,その後の他の所得との損益通算に影響します。

 

なお,事業的規模であるか業務的規模であるかは,その不動産賃貸業の規模が社会通念上事業と称するに至る程度か否かで判断しますが,次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況,貸付資産の管理の状況等からみて,これらの場合に準ずる事情があると認められる場合には,特に反証がない限り,事業的規模として取扱われます(いわゆる5棟10室基準)。

①貸間,アパート等については,貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。

②独立家屋の貸付けについては,おおむね5棟以上であること。

 

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