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福利厚生費と現物給与

2012-01-10(火) 15:50:47

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 会社が支出した福利厚生に関する費用が,税法上損金として認められるか否か,また,受給者である役員や従業員に所得税が課税されるか否か,具体的事例をいくつかご紹介します。

①金銭の貸付け

会社が役員や従業員に無利息貸付けを行った場合には,原則として,それによる経済的利益は役員や従業員に対する給与として課税されます(災害・疾病等のやむを得ない事情がある場合を除く)

②住宅取得資金の貸付け

会社が従業員に低利で住宅取得資金の貸付けを行った場合において,それによる経済的利益が著しく大きくない限り(貸付利息が1%以上であれば)給与としての課税はありません。

③レクリエーション費用の金銭支給

役員や従業員に直接旅行費用を金銭で支給する場合は給与として課税されます。

④社員旅行

45日以内(海外の場合は現地滞在日数)であり,且つ,全従業員の50%以上が参加している場合は給与としての課税はありません。

⑤社内サークルの活動費用

会社が支出した金銭が各サークルの本来の目的に従って使用されている限りは給与としての課税はありません。

⑥残業者に支給する夜食代

会社が残業をした者に支給する夜食代については給与としての課税はありません。

⑦社長のゴルフ練習場の費用

取引先接待の為のプレー代は交際費に該当し,日頃の練習代を会社が負担した場合には当該練習代は社長に対する給与として課税されます。

⑧現物に代えて支給する作業服手当

事務服や作業服を現物で支給する場合には非課税ですが,現物ではなく手当として支給した場合には給与として課税されます。

⑨人間ドックの検診料

一定年齢以上は全員受診など,特定の者だけでなければ給与としての課税はありません。役員のみの場合は給与として課税されます。


上記取扱いは実際には細かな条件や例外規定がありますので適用する場合には充分な検討が必要です。

また,形式的に条件に合致している場合であっても,一般に公正妥当といえない場合や,或いは社会通念上の常識を逸脱している場合には異なる取扱いをすることもあります。



投資信託の売り時

2011-11-19(土) 14:58:38

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 資産運用のつもりで始めた投資信託が,この不景気で運用どころか元本割れしてしまっている方も多いと思いますが,そんな投資信託をいつまで持っているか非常に悩ましいところです。

 保有している投資信託が今後値上がりするとは限りませんし,単に損切りしたくないという理由だけで売却を先延ばしにしても資産運用の目的は達成されません。

 そこで,一旦,購入した時の価格を忘れることをお勧めします。

 100万円で購入した投資信託が50万円になってしまったのであれば,それは50万円でしかありません。その50万円をどうするかを考えるのが資産運用です。

 もし仮に,本当に100万円まで値が戻ると信じているのであれば,むしろ今の50万円という価格は破格のはずですから追加購入すべきです。しかしそうではなく,もう値が戻らないと思っているのであれば,売却して別の投資信託に乗り換えた方がいいでしょう。

 次に,100万円で購入した投資信託が200万円になっていた場合において,どのタイミングで売却して利益確定をすべきか,これも非常に悩ましいところです。

 もし仮に,この投資信託がまだまだ値上がりすると信じているのであれば,やはり追加購入を検討すべきでしょう。しかし,もう追加購入はしたくないと思っているのであれば,それはつまり,もう値上がりを期待していないということと同義ですので,その時点で売却をして利益を確定すべきでしょう。

 そして他の投資信託(別に金融商品でもかまいませんが)に資金を移動すべきです。

 誰でも損はしたくないですから投資信託等の金融商品を損切りの為に売却するのは勇気がいることです。

 しかし,今後値上がりが期待できない投資信託を塩漬けにしておいても何も良いことはありません。

 値下がりしている投資信託を損切りすべきか,或いは値上がりしている投資信託を利益確定すべきか,この判断に迷ったときは,「今,仮にこの投資信託をもっていないと仮定した場合において,はたして自分はこの投資信託を購入するだろうか。」と自問自答してみて下さい。

 そして,「買わない」という結論に至った場合は,その投資信託は今が売り時だと考えるべきです。

(参考:月刊社長のミカタ2011年11月号)

附帯税の概要

2011-10-24(月) 19:46:07

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自ら申告した申告書の内容が間違っていた場合や申告しなければならない者が申告しなかった場合等は,本来納税すべき本税に加え,附帯税を納税しなければなりません。

今回はその附帯税の概要をご説明します。

①過少申告加算税

 提出期限内に申告した申告書の内容が過少であった場合に課せられるもので,税率は追加で納付すべき税額の10%。但し,追加で納付すべき税額が最初に納付した税額と50万円とのいずれか多い額を超える場合には,その超過部分については更に5%追加される。

②無申告加算税

 提出期限内に申告書を提出しなかった場合に課せられるもので,税率は本来納付すべき税額の15%。但し,その納付すべき税額が50万円を超えるときは,その超過部分については更に5%追加される。

③不納付加算税

 源泉徴収による国税がその納期限までに完納されなかった場合に課せられるもので,税率はその完納されなかった税額の10%。

④重加算税

 上記①~③までの加算税が課税される場合において,納税者が事実の全部または一部を隠ぺいし又は仮装した場合に課せられるもので,税率はその隠ぺいし又は仮装した部分について35%(①と③の場合)又は40%(②の場合)。

⑤延滞税

 納付すべき国税を法定納期限までに完納しないときに課せられるもので,税率はその未納期間に対して未納部分の14.6%。但し,最初の2か月は7.3%(現在は更に措置法で4%+基準割引率に軽減されている)。

 延滞税は上記①~④と重複して課税される。

⑥利子税

 延納や物納,申告書の提出期限の延長等の措置に基づき法律の定めるところにより納付を延期した場合に課税されるもので,税率は原則7.3%。但し,現在は措置法で4%+基準割引率に軽減されている。相続税の延納等については更に軽減措置がある。

 単なる計算ミスやうっかり納税ミスでも原則として過少申告加算税や不納付加算税は課税されます。

 重加算税にいたっては最高で40%です。通常の法人税30%と合わせれば国税だけで70%です。これに地方税を加えますと脱税した場合の税率は80%~90%になります。

消費税の免税制度に新たな基準が加わります。

2011-09-27(火) 08:37:35

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消費税の免税制度が改正されます。

これまでは,前々年の課税売上が1,000万円を超える場合に消費税が課税されていましたが,改正後は,この基準に加え,前年の当初6カ月の課税売上が1,000万円を超える場合も消費税が課税されることとなります。

この改正は,平成25年1月1日以後に開始する年(法人の場合は事業年度)から適用になります。

そうすると,今後,法人成りを検討している方は注意が必要です。

例えば,平成22年から個人事業者として事業を開始した方で平成24年から法人成りを予定していた場合。

この場合,改正前までは,平成22年と平成23年は個人事業者として消費税免税,平成24年に法人成りをして平成24年と平成25年は法人として消費税免税,でした。

しかし,改正後は,平成24年の当初6カ月の売上が1,000万円を超えると平成25年は課税となります。

そこで,この場合の対応方法ですが,平成24年に法人成りするのではなく,平成23年の12月に法人成りをします。そうすると,この法人の事業年度は12月から翌年11月までとなります。

改正法は平成25年1月1日以後に開始する事業年度から適用となるわけですから,1年弱適用を受ける期間を後ろに引き延ばすことができます。

約1年分の消費税が得するわけですから検討の価値は大いにあります。

法人成りを検討している方は気をつけて下さい。

更新料裁判

2011-08-18(木) 08:12:32

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 更新料裁判とは,マンションやアパート,事務所等の不動産賃貸借契約において,更新料を支払うと定めた条項が消費者契約法に照らし,違法であるか否かが争われた裁判です。

 消費者契約法第10条は,「消費者の利益を一方的に害する契約は無効」と定めており,更新料がこれに該当するか否かが争点となっていました。

 下級審での判断は以下の通り割れており,更新料の支払いを定めた条項が有効であると判断したものもあれば,無効と判断したものもありました。

 東京地裁H17.10.26判決 有効

 京都地裁H20.01.30判決 有効

 大津地裁H21.03.27判決 有効

 京都地裁H21.07.23判決 無効

 大阪高裁H21.08.27判決 無効

 京都地裁H21.09.25判決 無効

 大阪高裁H21.10.29判決 有効

 大阪高裁H22.02.24判決 無効

 そして,大阪高裁での3つの裁判は全て上告され,最高裁がどのような判断をするのかが注目されていましたが,平成23年7月15日,最高裁は「更新料が高額過ぎなければ有効」とする初判断を下し,借主側の敗訴が確定しました。

 これにより,貸主側はこれまで通り更新料の条項を入れておくことができるようになりましたが,仮に貸主敗訴になっていた場合,貸主にとっては経営上かなりの痛手になっていたものと思われます。

 といいますのは,最高裁での借主側の主張は,更新料の支払いを定めた条項が無効であることを前提に,更新料の支払拒絶を主張するだけではなく,過去に支払った更新料の返還をも求めていたからです。

 もしも最高裁が更新料の支払い条項を無効と判断していたならば,全国で同様の訴訟が乱立し,賃貸事業は大混乱になっていたことでしょう。

 そういった意味において,この最高裁判決は大変意義のあるものと言えそうです。

 また,更新料裁判に類似する訴訟として取り上げられる敷引裁判ですが,こちらも平成23年3月24日の最高裁判決に続き,同年7月12日の最高裁判決でも敷引有効との判断が下されました。

 これにより,借主退去時に貸主が敷金から一定の金額を控除する敷引条項(関東ではこれを「保証金の償却」といいます。)は,消費者契約法に違反せず,原則有効であるとの見解が確立されたものと言えそうです。