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大衆税目化する相続税
先の衆議院本会議において税制抜本改革法案が修正議決され参議院に送付されました。
同法案は消費税法の改正項目以外にも所得税や相続税の改正項目を含んでいましたが,当初の法案が修正された時点で所得税や相続税に関する部分は丸ごと削除されています。
これにより,所得税や相続税の増税は先送りになりました。
しかし,相続税の増税は財務省の長年の夢ですので,来年以降の税制改正項目に必ず含まれると思われます。
そこで,仮に相続税の税制改正が実現しますと,どれくらいの影響があるか検証してみます。
(予定されている改正項目)
・基礎控除の引下げ(定額控除5,000万円→3,000万円,法定相続人1人につき1,000万円→600万円)
・最高税率の引上げ(取得財産6億円超は50%→55%)
・死亡保険金の非課税限度額の引下げ(未成年者,障害者,同一生計の者に限定される)
・未成年者控除,障害者控除の引上げ(6万円→10万円)
(例)父・母・既に結婚して別生計の子2人の4人家族の場合。自宅は母が相続したとします。
*世田谷の自宅の土地(120㎡)路線価50万円×120㎡=評価額6,000万円
*世田谷の自宅の建物 評価額500万円
*預貯金 2,000万円
*生命保険金 2,000万円
第1次相続の相続税の計算は以下の通りです。
①課税財産額(6,000万円-4,800万円※1)+500万円+2,000万円+(2,000万円-500万円※2)=5,200万円
②基礎控除 3,000万円+600万円×3※3=4,800万円
③相続税額 (①-②)×税率※4=40万円
(※1)小規模宅地等の減額 配偶者が相続した場合は原則として80%減額
(※2)生命保険の非課税額は500万円×同居していた法定相続人の人数(今回は配偶者のみ)
(※3)法定相続人の数(今回は3人)
(※4)課税価額1,000万円以下は税率10%
第1次相続の納税額は40万円ですからそれほど問題ではありません。問題は第2次相続です。
第2次相続の相続税の計算は以下の通りです。
①課税財産額6,000万円※1+500万円+2,000万円+2,000万円※2=10,500万円
②基礎控除 3,000万円+600万円×2※3=4,200万円
③相続税額 (①-②)×税率※4=1,190万円
(※1)小規模宅地等の減額 同居してないので適用なし
(※2)生命保険の非課税額 同居してないので適用なし
(※3)法定相続人の数(今回は2人)
(※4)課税価額10,000万円以下は税率30%-700万円
税制改正が実現しますと,上記のとおり第1次相続及び第2次相続の合計で1,230万円もの相続税額になります。
今後,都心中心部に自宅を所有している方の相続人は,ほとんどの方が相続税を納税することになりそうです。
よって,事前の対策が必要不可欠になると思われます。
交際費についておさらい
法人税法上,交際費課税という言葉がありますが,交際費とは何か,どのような課税の取扱いを受けるのか,再確認してみます。
まずは交際費の定義ですが,税法上の交際費等の範囲は社会通念上の概念よりも幅広く,租税特別措置法第61条の4第2項において「交際費等とは,交際費,接待費,機密費,その他の費用で,法人が,その得意先,仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう。」と規定されています。
そして,その取扱いについては同条第1項に規定されており,簡単に言いますと,資本金1億円を超える法人は一切交際費を損金の額に算入できず,資本金1億円以下の法人は600万円を超える部分と,支出した交際費の10%は損金の額に算入できません。
ここで留意点ですが,
①交際費という勘定科目で経理したか否かは問いません。別の勘定科目でも内容が上記定義に当てはまれば法人税法上は交際費として取扱われます。
②接待,贈答等の行為とは,もてなし,やりとり等の性質を持つ全ての行為をいいます。
③事業に関係がある者とは,間接にその法人と関係のある者やその法人の役員,使用人,株主も含まれます。
④支出するとは,支出の事実があったことであり,接待する等の行為があったことをいいます。よって,仮払や未払等の経理をしていなくともその行為があった事業年度の交際費等に含まれます。
尚,次のような費用は交際費等から除かれます。
①従業員の福利厚生のための運動会や旅行等に通常要する費用
②飲食費等のうち1人単価5,000円以下のもの
③広告宣伝のためのカレンダーや手帳の作成費用
④会議用のお茶菓子やお弁当
⑤出版・放送のための取材費
⑥社会事業団体や政治団体に対する拠金(寄附金)
⑦神社の祭礼等の寄贈金(寄附金)
⑧一般の工場見学者等に製品の試飲や試食をさせる費用
⑨得意先等に対する見本品等の供与に通常要する費用
⑩従業員等又はその親族等の慶弔や禍福に際し一定の基準で支給される費用 など
逆に,次のような費用は交際費に含まれます。
①会社の何周年記念,社屋新築記念等における宴会費や記念品代
②下請工場,代理店等となるための運動費
③得意先,仕入先等社外の者の慶弔・禍福に際し支出する費用
④得意先,仕入先等事業に関係ある者を旅行や観劇に招待する費用
⑤得意先,仕入先等の従業員に対して取引の謝礼として支出する費用 など
ちなみに所得税にはこのような規定は無く,「もっぱら個人事業の業務の遂行上直接必要と認められるもので,その必要である部分を明らかに区分することができる場合」と定められています。よって,業務の遂行上必要不可欠であると立証できるのであれば,法人税法のような上限金額はありません。
相続税の連帯納付義務
相続税法では,同一の被相続人から相続等で財産を取得した全ての者は連帯納付義務を有します。すなわち,本来負担すべき納税義務者が相続税を納付できず滞納していると,他の相続人が肩代わりするよう国税当局から求められ,求められた者はこれに応じる義務を有するのですが,従来からこの連帯納付義務はかなり問題視されていました。
父が亡くなり,相続人は母,私,甥の3人の場合において,母と私は自己が負担すべき相続税を期日までに適正に納付したが,甥は何らかの理由により期日までに自己が負担すべき相続税を滞納していたケース。
このケースの場合,母と私は甥の相続税につき連帯納付義務を有するため,国税当局から甥の相続税につき納付を求められると断ることができません。特に,本来負担すべき納税義務者が延納を受けている場合には事態は深刻です。
相続税は現金一括納付が原則ですが,条件を満たすと物で納める物納や分割払いである延納が認められます。
延納が認められますと,最長で20年に渡り相続税を分割して納付することになるのですが,途中で納付が滞るとその残額分だけ滞納状態となり,その結果,相続から長期間が経過した後に,突然,連帯納付義務者に多額の滞納税額の納付が求められることになります。
この連帯納付義務,適正に納付した相続人にとってはあまりにも酷であるという理由で,かねてから改正が求められていたのですが,この度,当該連帯納付義務につき解除要件が設けられ,制度自体が緩和されました。
当該要件は,①相続税の申告期限等から5年経過しても連帯納付義務者に納税通知書が発せられていない場合,②納税義務者が納税猶予又は延納を受けた場合,のいずれかです。
本来納付すべき納税義務者が相続税を滞納している場合には,申告期限から5年以内に連帯納税義務者に何らかの通知がされているはずですので,上記要件に当てはまる多くは②になると思われます。すなわち,ある相続税の納税義務者が納税猶予又は延納の適用を受けた時点で,他の相続人はその納税猶予又は延納の適用を受けた者にかかる相続税につき,その連帯納付義務は無くなります。
本改正ですが,過去の申告分にまで救済範囲を広げるため,平成24年4月1日前の申告期限に係る同日時点の未納税額も,同一の要件を満たすことで連帯納付義務が解除されます。
そのため,4月1日前の申告期限に係る相続税でも,納税義務者が納税猶予又は延納の適用を受けている場合には,当該適用額については連帯納付義務は解除されます。
ちなみに,当該連帯納税義務の解除要件ですが,贈与税の連帯納付義務については設けられておりません。
税務上の役員について
法人税法上,会社の役員については,一事業年度内において自由に報酬を増減できない,賞与を支払っても経費にならないなど,一定の制限があります。そして,法人税法上の役員は会社法などの規定よりも広範囲ですので注意が必要です。
法人税法上の役員とは,会社法などの法令上法人の役員とされる取締役,執行役,会計参与,監査役,理事,監事及び清算人のほか,法人の経営に従事している者のうち,次のいずれにも該当する者は役員とみなすこととされています(法法2十五,法令7)。
①法人の使用人以外の者で,その法人の経営に従事している者―すなわち,取締役や監査役などの地位にはありませんが,その法人内における地位,職務などからみて実質的にその法人の経営に従事していると認められる者は役員とみなされます。
②同族会社の使用人のうち,その会社の主たる株主グループに属している特定の者で,その会社の経営に従事している者―すなわち,形式的には使用人となっていますが,その会社に対する出資の状況からその会社を支配できる株主グループに属していて経営に従事している者は役員とみなされます。
このように,法人税法上の役員は,会社法などの法人の設立に関する法令において定められている役員の範囲よりも広範囲に定められており,その法人内における地位や職務の内容からみて,他の役員と同様に実質的に法人の経営に従事,参画している者は,役員とみなされることになっています。
では,具体的にどのような人が役員とみなされるのかといいますと,次のような者がこれに該当します(法基通9-2-1)。
①総裁,副総裁,会長,副会長,理事長,副理事長,組合長,副組合長その他これらに準ずる者で取締役又は理事でない者
②合名会社,合資会社等の人的会社における業務執行社員
③人格のない社団等の代表者又は管理人
④定款等において役員として定められた者
⑤相談役,顧問その他これらに準ずる者で,その法人内における地位,その行う職務等からみて他の役員と同様に,実質的に法人の経営に従事していると認められる者
ところで,最近は「業務執行役員」という呼称を耳にすることが多くなりましたが,執行役と執行役員とは全くの別物であって,執行役員は会社法で定められたものではありません。あくまでも会社が任意に採用したポストであって,経営における業務執行を担う点においては取締役と同じですが,会社法上の取締役ではありませんので代表訴訟の対象にはなりませんし,登記の対象にもなりません。
法人税法上においても,業務執行役員は前記のみなし役員に該当しない限り,役員として取扱われることはありません。
短期前払費用を活用した節税の盲点
短期前払費用は,決算期末直前に対応可能な節税方法として広く知られていますが,その実行が容易であるために本来は注意すべき点を忘れがちです。
そこで,今回は短期前払費用の留意点を確認します。
3月末決算の法人が3月中に4月分の家賃や保険料を支払った場合,会計上は,支払った3月の費用とはせずに4月の費用とするのが原則です。
但し,重要性が乏しいものについては例外的な処理が認められており,法人税基本通達2-2-14では次のように規定されています。
「前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう)の額は,当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが,法人が,前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において,その支払った額に相当する金額を継続して支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは,これを認める。」
要するに,本来は前払費用であるが,向う1年以内のものであれば継続適用を条件として支払った時に費用計上しても良いということです。
これを活用して,決算期末直前に向う一年分の事務所家賃や保険料などを一気に支払い,その支払った金額の全部を費用に計上することで利益を圧縮し,その結果,税額を抑えることができます。
以下,留意点ですが,まず,継続適用を前提条件としていますので,家賃や保険料を年払いにした場合,毎年同時期に同じ金額を支出する必要があります。年払いと月払いをコロコロ変更することはできませんので,資金繰りを充分に検討する必要があります。
次に,一定の契約に基づいている必要がありますので,2月まで月払いであった家賃を,契約変更をしないで一方的に3月から年払いにしたとしても短期前払費用の取扱いはできません。
次に,継続的に役務の提供を受けるために支出した費用である必要があるのですが,継続的な役務の提供とは「等質等量であるサービス」のことをいいます。
等質等量であるサービスには,土地や建物の賃借料,生命保険や損害保険の支払保険料,機械装置の保守料などが該当します。
一方,月刊誌の購読料はサービスではなく月刊誌の購入代金を前払いしたに過ぎないため等質等量のサービスには該当しません。
また,来期に実施される社員旅行のツアー代も,一時的な費用であって継続的サービスではないため等質等量のサービスには該当しません。
弁護士や税理士の顧問料なども毎月の報酬額は同一ですが,月によってサービスの内容が異なるため等質等量のサービスには該当しません。
短期前払費用を活用した節税は,決算期末直前に急場をしのぐには極めて使い勝手の良い節税方法ですが,上記のような留意点を充分に検討しておかないと税務調査で否認されがちです。活用する場合には注意しましょう。