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相続税の連帯納付義務

2012-06-08(金) 17:14:50

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 相続税法では,同一の被相続人から相続等で財産を取得した全ての者は連帯納付義務を有します。すなわち,本来負担すべき納税義務者が相続税を納付できず滞納していると,他の相続人が肩代わりするよう国税当局から求められ,求められた者はこれに応じる義務を有するのですが,従来からこの連帯納付義務はかなり問題視されていました。

 父が亡くなり,相続人は母,私,甥の3人の場合において,母と私は自己が負担すべき相続税を期日までに適正に納付したが,甥は何らかの理由により期日までに自己が負担すべき相続税を滞納していたケース。
 このケースの場合,母と私は甥の相続税につき連帯納付義務を有するため,国税当局から甥の相続税につき納付を求められると断ることができません。特に,本来負担すべき納税義務者が延納を受けている場合には事態は深刻です。

 相続税は現金一括納付が原則ですが,条件を満たすと物で納める物納や分割払いである延納が認められます。
 延納が認められますと,最長で20年に渡り相続税を分割して納付することになるのですが,途中で納付が滞るとその残額分だけ滞納状態となり,その結果,相続から長期間が経過した後に,突然,連帯納付義務者に多額の滞納税額の納付が求められることになります。

 この連帯納付義務,適正に納付した相続人にとってはあまりにも酷であるという理由で,かねてから改正が求められていたのですが,この度,当該連帯納付義務につき解除要件が設けられ,制度自体が緩和されました。

 当該要件は,①相続税の申告期限等から5年経過しても連帯納付義務者に納税通知書が発せられていない場合,②納税義務者が納税猶予又は延納を受けた場合,のいずれかです。
 
 本来納付すべき納税義務者が相続税を滞納している場合には,申告期限から5年以内に連帯納税義務者に何らかの通知がされているはずですので,上記要件に当てはまる多くは②になると思われます。すなわち,ある相続税の納税義務者が納税猶予又は延納の適用を受けた時点で,他の相続人はその納税猶予又は延納の適用を受けた者にかかる相続税につき,その連帯納付義務は無くなります。

 本改正ですが,過去の申告分にまで救済範囲を広げるため,平成24年4月1日前の申告期限に係る同日時点の未納税額も,同一の要件を満たすことで連帯納付義務が解除されます。
 そのため,4月1日前の申告期限に係る相続税でも,納税義務者が納税猶予又は延納の適用を受けている場合には,当該適用額については連帯納付義務は解除されます。
 ちなみに,当該連帯納税義務の解除要件ですが,贈与税の連帯納付義務については設けられておりません。