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経営者保証に関するガイドラインについて

2014-03-22(土) 14:25:00

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株式会社等の法人が銀行などの金融機関から借入をする場合,その法人の社長が個人保証するのが我が国の常識です。

法人の借入ですが社長が個人保証しますので,実質的には個人での借入とほとんど変わりません。

仮に法人の経営が立ち行かなくなり法人として借入を返済することができなくなった場合には,それを個人保証している社長は私財をなげうってでも返済する義務があり,それができなければ自己破産です。

 

こうした社長の個人保証すなわち経営者保証は,経営者の規律付けや法人の信用を補完して資金調達を円滑にするという側面がある一方,経営者による思い切った事業展開や一度失敗した経営者の再チャレンジを阻害する要因になっているなど,様々な課題が存在します。

 

そこで,これらの課題を解消して中小企業の活力を引き出すため,日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会を事務局とする「経営者保証に関するガイドライン研究会」から,中小企業,経営者,金融機関共通の自主的なルールとして「経営者保証に関するガイドライン」が策定されました。

 

このガイドラインの適用は2014年2月からで,その概要は以下の通りです。

 

経営者の個人保証について,

①法人と個人が明確に分離されている場合などに,経営者の個人保証を求めないこと。

②多額の個人保証を行っていても,早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え,年齢等に応じて100万円~360万円)を残すことや,「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること。

③保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること。

などを定めることにより,経営者保証の弊害を解消し,経営者による思い切った事業展開や早期事業再生等を応援する。

 

尚,第三者保証についても上記②及び③については経営者本人と同様の取扱いとなります。

 

このガイドライン,残念ながら法的拘束力は有りませんが,金融庁と中小企業庁が実質的に主導した経緯があり,また,金融庁はそのHPにおいて「当庁としては,本ガイドラインの周知・広報に努めるとともに,金融機関に対して積極的な活用を促すことにより,本ガイドラインが融資慣行として浸透・定着していくよう努めてまいります。」とコメントしていますので,ある程度の実効性は期待できると言えそうです。

 

金融機関から見て自分の会社の債務者区分が「正常先」であるならば,迷わず保証人を外してもらいましょう。

ただし,その前に,会社財務の透明性を高め,公私混同を止め,しっかり利益を出して納税し,内部利益を蓄積する覚悟は必要です。

 

東京税理士会の会報に論文を寄稿しました。

2014-02-20(木) 22:03:17

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東京税理士会の会報に論文を寄稿しました。

 

東京税理士会 会報2014年2月1日号「論壇」

テーマ「売電事業における事業的規模の判定―不動産所得との比較論」

東京税理士会会報2014年2月1日号「論壇」

 

以下のHPにも掲載されています。

東京税理士会

ゴルフ会員権での節税は平成26年3月までに

2014-01-14(火) 08:54:27

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平成26年度の税制改正大綱が発表されました。いつ改正されてもおかしくないと言われていたゴルフ会員権の損益通算がついに適用不可となります。

不可となるのは平成26年4月以降の譲渡からです。

よって,含み損を抱えたゴルフ会員権で使用していないものがある場合には,来年3月までに譲渡しましょう。

 

制度の仕組みを確認します。

個人がゴルフ会員権を譲渡し譲渡益が発生しますと,譲渡所得として所得税及び住民税が課税されます。

一方,譲渡して譲渡損が発生した場合は,損益通算と言いまして,給与所得など他の所得と相殺できます。相殺すれば当然ですが税金が安くなります。

 

ところで,所得税法では,別荘や競走馬,1個30万円を超える貴金属や骨董品などを「生活に通常必要でない資産」と定義しており,これらを譲渡して譲渡損が発生したとしても,他の所得と相殺する「損益通算」の適用は無いと規定しています。

これらはいわゆる贅沢品ですから,贅沢品を譲渡して損をしたとしても税金を安くしてあげる必要は無いという趣旨です。

 

ところが,これまで所得税法上,ゴルフ会員権はこの「生活に通常必要でない資産」に含まれていませんでした。

よって,ゴルフ会員権を譲渡して譲渡損が発生した場合,給与所得など他の所得と損益通算することができました。

 

常識的に考えて,ゴルフ会員権が「生活に通常必要でない資産」であることは明らかですので,もう何年も前からこの部分は改正されると言われ続けていましたが,今回,ついにこの部分が改正されることになりました。

 

また,相続や贈与によりゴルフ会員権を取得した場合であっても,購入当初の取得価額を引き継ぎますので,被相続人や贈与者が購入したときよりも今の相場が下落している場合は,売却して譲渡損を発生させ,他の所得と損益通算することができます。

 

<計算例>

昭和60年に父親がAゴルフ会員権を500万円で購入したが,最近の相場での時価は約20万円の場合。

これを息子に贈与します。贈与税は年間110万円までは非課税ですので,Aゴルフ会員権を贈与しても息子に贈与税は課税されません。

息子は贈与により取得したAゴルフ会員権を知人や親戚,買取業者に20万円で売却します。

この場合の譲渡損益の計算は,譲渡価額20万円-取得費500万円=-480万円となり,480万円の譲渡損となります。

これを息子の給与所得と相殺することで所得税と住民税を安くすることができます。適用期限は平成26年3月末まで。

 

父親から息子に贈与した時点で名義書換料をゴルフ場に支払う必要がありますが,家族への贈与の場合は安い名義書換料で済む場合も多いですから,一度試算してみると良いかも知れません。

 

 

相続税の税務調査

2013-11-08(金) 18:02:49

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平成27年から改正相続税法が適用され相続税の基礎控除が大幅に減額されます。そのため首都圏では相続税の課税対象となる方が倍になると言われております。そこで今回は,相続税の申告後に税務調査に入り易いと思われるケースをご紹介します。

 

毎年の所得税の申告に比し,相続税の申告財産が少額である場合

所得税では年間所得2,000万円以上の人は所有する全ての財産を記載した「財産債務の明細書」を提出しなければいけないことになっていますので,適正に毎年申告していれば税務署はある程度の相続財産の予測がつきます。

 

亡くなる数年前に不動産や有価証券を売却していて,その売却代金が相続税の申告財産に含まれていない場合,あるいはその確認を要する場合

税務署には昭和40年くらいからの資料が残っているそうですので,過去の資料と辻褄が合わない申告は調査に来ます。

 

銀行等への照会から相続直前に多額の預金引出しがあるにもかかわらず,それが申告財産に含まれていない場合

税務署は被相続人及び相続人の銀行口座全てを過去3年分から5年分は確認しています。銀行は旧大蔵省管轄・郵便局は旧郵政省管轄でしたので,昔は郵貯は申告しなくて大丈夫,などという噂もありましたが,現在は全くそんなことはありません。

 

金融資産が多く,口座間の動きが多い場合

名義預金があるのではないかと疑われます。

 

多額の借入金がありながら,それに見合う申告財産がない場合

不動産購入などの借入理由がわかれば問題ありませんが,借入目的がはっきりしないと問題とされます。

 

遺産額が高額な場合

東京国税局管内では,3億円を目安に調査に入るか否かを決めているようです。

 

会社を経営しているオーナー社長等で会社に対し多額の借入金や貸付金がある場合

相続人が株主となっていて,その株が名義株なのではないかと疑われる場合もあります。

 

金取引を行っている場合

金や昔の割引債は無記名で取引することも可能なため,隠し財産が無いか確認に来ます。

 

海外投資を行っている場合

海外に隠し財産が無いか確認に来ます。特に,配偶者や相続人が海外居住や外国籍の場合は要注意です。

 

広大地の評価を行っている場合,鑑定評価で申告している場合,売却価格で申告している場合

相続税の財産評価は国が定めている「財産評価基本通達」に則って評価するのが通例ですが,それ以外の評価方法も違法ではありません。違法ではありませんが,通例から外れますので調査に入られやすいです。

 

 

相続財産については亡くなった方しか知らないことも多く,相続税は申告漏れが多い税目です。意図的な申告漏れは論外ですができる限り適正な申告を心掛けたいものです。

 

 

非嫡出子の相続分1/2規定は憲法違反

2013-09-25(水) 18:10:43

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結婚していない男女間に生まれた子供(非嫡出子・婚外子)の遺産相続分を,嫡出子の半分と定めた民法の規定が,法の下の平等を保障した憲法に違反するか否かが争われた家事審判の特別抗告審で,最高裁大法廷は,当該規定を「違憲」とする初判断を示しました。

 

1995年にも同様の事案がありましたが,このとき最高裁は合憲と判断していますので,判断を変えたことになります。

 

1995年に合憲とした最高裁決定の概要は次の通りです。「日本では結婚し夫婦間で子をつくる考え方を尊重する一方で,婚外子は夫婦間の子の半分の相続分を認め保護する。民法の当該規定は,法律婚の尊重(国の考え方)と婚外子の保護(個の尊重)の調整を図ったものだから,相続分に差があっても合憲である。

 

今回,違憲とした最高裁決定では,「家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきた(中略)。法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても,(このような)認識の変化に伴い,(法律婚の)制度の下で父母が婚姻関係になかったという,子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず,子を個人として尊重し,その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきている(中略)遅くとも2001年7月当時において(相続分に差のある民法の規定は)憲法に違反していた」と判事しました。

 

1995年当時は,法律婚尊重と婚外子保護の調整がより大切でありましたが,社会が変化し,遅くても2001年7月時点では,それよりも個人の尊重・個人の平等のほうが大切になった,ということでしょうか。

 

今回の最高裁決定に対する評価は今後色々なところで議論されることになり,早晩,民法の当該規定は改正されることになると思いますが,今後の相続実務においては,民法が改正されるまでの間であっても,当該決定を無視するわけにはいかなくなります。

すなわち,民法が改正されるのを待つまでもなく,2001年7月以降に発生した相続で現段階でまだ遺産分割が未確定のもの,あるいは今後発生する相続については,今回の最高裁決定を踏まえ,嫡出子であっても非嫡出子であっても相続分は平等である,ということになります。

 

尚,今回の違憲判断が他の同種の事案に与える影響について,「先例として解決済みの事案にも効果が及ぶとすれば,著しく法的安定性を害することになる」として,過去に決着している事案には影響を及ぼさないとしています。

 

よって,既に遺産分割が確定している事案について今回の最高裁決定を理由とする遺産分割のやり直しはできません。

 

 

<追記>

本件に関しては国税庁が,「相続税法における民法第900条第4号ただし書前段の取扱いについて(平成25年9月4日付最高裁判所の決定を受けた対応)」を公表していますので,そちらも参考にして下さい。

http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h25/saikosai_20130904/index.htm