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住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税
父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた者が,その贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅取得資金を自己の居住用家屋の取得の対価に充てて,且つ,同日までに居住を開始した場合には,その贈与を受けた住宅取得資金のうち一定金額について,贈与税が非課税となります。
この,上記一定金額すなわち非課税限度額が,平成27年から改正されていますので,以下,概略をご説明します。
まず,大きな改正点として,非課税限度額の区分が「住宅取得資金の贈与を受けた日」から「住宅用家屋の取得に係る契約の締結日」に変更されました。
〇各年分の非課税限度額は以下の通りです。
(イ)下記ロ以外の場合
| 住宅用家屋取得の契約締結日 | 良質な住宅用家屋 | 左記以外 |
| 平成27年01月~平成27年12月 | 1,500万円 | 1,000万円 |
| 平成28年01月~平成29年09月 | 1,200万円 | 700万円 |
| 平成29年10月~平成30年09月 | 1,000万円 | 500万円 |
| 平成30年10月~平成31年06月 | 800万円 | 300万円 |
(ロ)住宅用家屋の取得に係る消費税等の税率が10%の場合
| 住宅用家屋取得の契約締結日 | 良質な住宅用家屋 | 左記以外 |
| 平成28年10月~平成29年09月 | 3,000万円 | 2,500万円 |
| 平成29年10月~平成30年09月 | 1,500万円 | 1,000万円 |
| 平成30年10月~平成31年06月 | 1,200万円 | 700万円 |
尚,「良質な住宅用家屋」とは,省エネルギー対策等級4以上であること,耐震等級2以上であること等の要件を満たすことにつき,一定の書類により証明されたものをいいます。
<平成27年中に住宅用家屋の取得契約を締結した場合>
平成27年中に住宅取得資金の贈与を受けて,同年中に住宅用家屋の取得契約を締結した場合の非課税限度額は良質家屋で1,500万円・それ以外で1,000万円ですが,物件の引渡し時期については注意が必要です。
そもそも,この住宅取得資金の贈与税の非課税制度は,贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住開始することが要件の1つとなっていますので,仮に工事期間延長等の理由で引渡し時期が遅れ,3月15日までに居住開始ができなくなってしまった場合には,この制度の適用はありません。
また,物件引渡しが平成28年である住宅用家屋の取得契約を平成27年中に締結した場合の非課税限度額は,契約締結日で判断しますので,上記と同様に良質家屋で1,500万円・それ以外で1,000万円です。
この場合,住宅取得資金の贈与を受けるのは,当然,平成28年中ということになります。平成27年中に贈与を受けても,この制度の適用はありません。
<平成28年中に住宅用家屋の取得契約を締結した場合>
平成28年の非課税限度額は,契約締結日と消費税率により区分されます。
まず,9月30日までに契約締結した場合の非課税限度額は,良質家屋で1,200万円・それ以外で700万円です。
次に,10月1日以後に契約締結した場合の非課税限度額ですが,こちらは適用される消費税率により異なり,適用される消費税率が8%の場合は9月30日までと同様に良質家屋で1,200万円・それ以外で700万円ですが,適用される消費税率が10%の場合には,良質家屋で3,000万円・それ以外で2,500万円と大幅に拡充されています。
非課税限度額が拡充されたのは納税者にとって有利であることは間違いありませんが,それとともに制度が複雑化しておりますので,確実に非課税の適用を受けるためには,契約締結日,物件引渡日及び贈与実施日につき,これまで以上に計画的に対応する必要があります。
仮に,要件を満たすことができず非課税の適用を受けられなかった場合には,改正前よりも多額の納税を迫られることになりかねませんのでご注意下さい。
同族会社に土地を低額譲渡した場合の課税関係
同族会社の社長が,様々な理由から自己が所有している土地を当該同族会社に譲渡することは間々あります。
この時,土地を譲渡することにより生ずる譲渡所得税を少なくしようと,意図的に時価よりも安い金額設定で譲渡することがありますが,その場合の課税関係はどうなるでしょうか。以下,概略をご説明します。
<事例>
・譲渡した土地の譲渡時における時価は約1億円
・実際にやり取りした譲渡対価は4千万円
・A社の株主は甲社長と乙(甲の親族)の2人で株式の所有割合はそれぞれ1/2
<土地を譲渡した甲社長の課税関係>
個人が,法人に対して,著しく低い価額の対価(譲渡時における時価の1/2未満)で,譲渡所得の起因となる資産を移転した場合には,その譲渡所得の金額の計算については,その譲渡の時における時価で譲渡したものとみなすこととされています(所法59①二,所令169)。
したがって,甲社長は時価1億円の土地をその1/2未満である4千万円で法人に譲渡しているため,譲渡対価は4千万円であっても,1億円で譲渡したものとみなして譲渡所得の計算を行うことになります。
<土地を購入したA社の課税関係>
法人が,時価よりも低い価額で資産を譲り受けた場合には,譲受価額と時価との差額に相当する金額は寄付を受けたものとして収益として課税されます(法法22②)。
したがって,A社は時価1億円の土地を4千万円で譲り受けているので,差額の6千万円は収益として課税対象となります。仕訳は以下の通りです。
| (借方) | 土 地 | 1億円 | (貸方) | 現金預金 | 4千万円 |
| 受贈益 | 6千万円 |
<株主乙の課税関係>
上記土地売買の直接の当事者でない株主乙に対しても課税関係は生じます。
すなわち,A社は,時価よりも著しく低い価額で土地を取得しているので,これによりA社の株価は上昇します。A社の株価が上昇しますと,乙自身は何もしていなくとも,乙が所有しているA社の株価が上昇したので,乙は利益を得たとみることができます(株を転売して利益を得られます)。
相続税法は,対価を支払わないで利益を受けた場合においては,当該利益を受けた時において,当該利益を受けた者が,当該利益の価額に相当する金額を,当該利益を受けさせた者から贈与により取得したものとみなす,と規定しています(相法9)。
つまり,乙は間接的に甲から贈与により利益を取得したとみなされて贈与税が課税されます。
このように,譲渡所得税が少なくなるどころか,かえって売主買主双方の税負担が大きくなり,しかも直接の当事者でない他の株主にまで課税関係が生ずる結果になってしまいました。
ちなみに,この著しく低い価額の対価で譲渡した場合の「みなし譲渡課税」は,個人が法人に対して著しく低い価額の対価で譲渡した場合に適用される規定であり,個人が個人に対して著しく低い価額の対価で譲渡した場合には適用されません。
但し,譲渡時の時価と実際の対価との差額に相当する金額につき,贈与税課税があることは先の法人の場合と同様です。
税法の世界では,所得税も法人税も相続税も贈与税も,基本的には全て「時価」を基準に考えますので,それよりも高い金額で取引しても安い金額で取引しても,何らかの課税関係が生ずると考えておけば,そう間違いはないと思います。
保険料贈与プランによる節税対策と納税資金対策
相続税の納税資金対策として,親が子に生命保険の保険料相当額の現金を贈与し,子がその現金で親を被保険者とする生命保険契約を締結するという「保険料贈与プラン」があります。以下,概要を解説します。
<例>
①父から子へ現金贈与(金額により贈与税課税)
②子が生命保険に加入
契約者:子 被保険者:父 保険金受取人:子
父が亡くなったら保険金を子が受け取る契約
③贈与によりもらった現金で保険料を支払う
父が亡くなると子が死亡保険金を受け取りますので,それを相続税の納税資金に充てようというプランです。
父自身が契約者及び保険料負担者となって生命保険に加入する一般的なケースでは,その死亡保険金は相続税の課税対象となってしまいますが,子が契約者及び保険料負担者であれば,死亡保険金は相続税の課税対象とはならず,子の一時所得として所得税の課税対象となるので有利です(注1)。
この方法によれば,収入の無い子(幼児や学生)であっても生命保険料を支払うことが可能となり,親から現金贈与を受けた子が直ちに生命保険会社に保険料を支払うようにしておけば,手元に贈与資金が滞留することなく,子の金銭感覚や生活感を狂わせることはありません。
贈与する金額は暦年贈与の基礎控除内である110万円以下でも構いませんが,年間110万円の保険料で確保できる死亡保険金は70歳男性で1,500万円程度,70歳女性で2,000万円程度に過ぎません。
そこで,多少の贈与税を負担しても少し多めに贈与し,確保できる死亡保険金をもう少し上積みしたいところです。例えば,年間310万円を贈与したことによる贈与税は20万円(※2)ですが,税引後の290万円の保険料であれば,70歳男性の場合で約4,000万円,70歳女性の場合で約5,600万円の死亡保険金を確保できます(※3)。
この「保険料贈与プラン」を実行する場合には,次の点に留意が必要です。
①贈与者(父)から受贈者(子)への贈与は,贈与者の預金口座から子の預金口座へ振込みにより実行すること。
②保険料は子の預金口座から自動振替により支払うようにすること。
③毎年,贈与契約書を作成し,必ず贈与税の申告をすること。
④毎年の贈与契約書と贈与税申告書の控えは全て保管しておくこと
⑤保険料を負担している子以外の所得税確定申告で,当該保険契約に係る生命保険料控除を適用しないこと。
これらの留意点を充足しない場合は保険料相当額の贈与があったものとは認められず,保険料はあくまでも父が負担していたものとして,その死亡保険金は相続税の課税対象であると認定されてしまうこともありますので注意して下さい。
注1:子の収入によっては必ずしも有利とはいえない場合があります。
注2:(310万円-110万円)×10%=20万円
注3:事例の死亡保険金は年払変額終身保険に加入した場合の目安です。
参考:国税庁事務連絡(昭和58年9月)「生命保険料負担者の判定について」
山本和義「相続対策の基礎知識と標準業務の進め方」271頁(清文社,2014)
直系尊属から贈与を受けた場合の税率の変更
贈与税には暦年課税(1年間の贈与に対して課税)と相続時精算課税(贈与時点で相続税を前払いし,相続の発生時に精算)の2種類があります。暦年課税の基礎控除は単年110万円で,相続時精算課税の非課税枠は累計2,500万円です。
暦年課税は単年で課税関係が終了しますので相続税とは関係ありませんが(一部例外有り※),相続時精算課税は累計2,500万円まで(他に特例有り)の贈与について贈与時点での課税はありませんが,相続発生時に精算するため相続税は発生する可能性があります。(※相続等により財産を取得した人が,被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときには、その人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額を加算します。)
暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利になるかは家族構成や財産額によりますので慎重な検討が必要となります。
今般,税制改正により,暦年課税の場合において,平成27年1月1日以降に,直系尊属(父母や祖父母等)から財産の贈与を受けた人(贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の人に限ります。)のその財産に係る贈与税の額は,一般税率ではなく,課税が軽減される「特例税率」を適用して計算することになりました。
特例税率の適用を受ける場合で,次の①又は②のいずれかに該当するときは,贈与税の申告書とともに,贈与により財産を取得した人の戸籍謄本又は抄本その他の書類でその人の氏名,生年月日及びその人が贈与者の直系卑属に該当することを証する書類を提出する必要があります。
①「特例税率の適用を受ける財産」のみの贈与を受けた場合で,その財産の価額から基礎控除額(110万円)を差し引いた後の金額(課税価格)が300万円を超えるとき
②「特例税率の適用を受ける財産」と「一般税率の適用を受ける財産」の両方の贈与を受けた場合で,その両方の財産の価額の合計額から基礎控除額(110万円)を差し引いた後の金額(課税価格※)が300万円を超えるとき(※「一般税率の適用を受ける財産」について配偶者控除の適用を受ける場合には,基礎控除額(110万円)と配偶者控除額を差し引いた金額(課税価格)となります。)
12月は今年の贈与を行え得る最後の月です。十分に検討して効果的な贈与を実施したいところです。
タワーマンションによる相続税対策の問題点
ここ数年,注目されているタワーマンションによる相続税対策を再び解説します(初回はこちら)。
不動産の実際の取引価額と相続税評価額の開差を利用した相続税対策は昔から頻繁に用いられる方法であり,タワーマンションの取得はその典型例です。
例えば,タワーマンション最上階の1室を3億円で取得した場合において,その相続税評価額が6,000万円程度とすると,その差額分だけ相続税の課税対象(課税価格)が減少します。
なぜこうなるかと言いますと,相続税を計算する場合における不動産評価の方法に起因します。
すなわち,マンションは土地の敷地持分と建物持分で構成されていますが,高層マンションほど1室当たりの敷地持分が少ないため,結果として評価額が低くなり,かつ,建物の固定資産税評価額が当該マンションの建築価額や市場価格よりも相対的に低く設定されているためです。
よって,タワーマンションの場合,1階と最上階の床面積が同じであれば,相続税評価額は理論上同じになります。実際の取引価額は1階と最上階では倍以上の差があることもありますが,現行税制ではこの差は無視されます。
故に,タワーマンションによる相続税対策が,巷,推奨されているわけです。
しかしながら,タワーマンションによる相続税対策については構造的問題点がありますので注意が必要です。
平成23年7月1日裁決(非公開裁決・TAINS F0-3-326)は,相続開始1ヶ月前に売買契約を締結し,2週前に所有権移転登記をしたマンションの価額について,相続税評価額(約5,800万円)ではなく,取得価額(約2億9,300万円)で評価するのが相当であるとして,納税者の相続税の申告を否認しました。この裁決の場合,課税当局は当該マンションの取得自体を否認し,当該取得代金(現金)が相続財産であると認定しています。
また,新聞報道(日経新聞H27.4.7朝刊)では,相続開始4ヶ月前に取得した賃貸マンションについて,相続税評価額(1億2,000万円)ではなく,取得価額(3億7,000万円)で評価し,課税処分が行われたようです。
いずれの事例も相続開始直前にタワーマンションを取得したことを否認されたものですが,もっとも,このような相続開始直前に不動産を取得することによる相続税対策の問題は,タワーマンションに限ったことではなく一般不動産にも言えることではありますが,タワーマンションの場合は相続人が相続開始直後に売却しなければならない事情が存するため,一般不動産よりもリスクを負っていると言えます。
なぜタワーマンションによる相続税対策は相続開始直後に売却しなければならないかと言いますと,近年,タワーマンションは乱立状態にあり,今後も多くのタワーマンションが市場に供給されると予想されますが,そうすると既存のタワーマンションの資産価値は新築時をピークに相対的に下がることはあっても上がることはほぼありません。
故に,タワーマンションによる相続税対策の場合,取得時よりも資産価値の下落が激しくない期間内に売却しておく必要があります。そうしないと,相続税の節税額よりもタワーマンションの値下がり損のほうが多額になってしまう恐れがあり,それでは何のための節税策であるかわからないからです。
しかしながら,この売却行為が相続税対策を否認する根拠になってしまうところが,タワーマンションによる相続税対策の構造的問題点だと言えるのです。
よって,相続税対策として不動産を取得する場合,タワーマンションのように資産価値の下落が激しいことが予想される物件よりも,資産価値の下落が激しくなく,場合によっては上昇するような物件(中央線沿線・城南地区等のRC賃貸物件等)を選定することが重要です。
尚,タワーマンションも自宅として購入する場合には問題ありません。相続開始直後の売却は避けたいところですが,仮に相続開始直後に売却した場合であっても自宅の場合は否認される可能性は低くなります。
参考:品川芳宣「最近の相続税節税策(スキーム)の真贋を問う!」季刊野村資産承継2015創刊号P76