HOME >BLOG
非居住者への不動産譲渡は要源泉徴収
所得税は,自らがその年の所得金額とこれに対する税額を計算し自主的に申告・納税する「申告納税制度」が建前です。
これと併せて特定の所得については,その所得の支払者がその支払の際に所得税を源泉徴収して納付する「源泉徴収制度」が採用されています。
この源泉徴収制度で最も一般的なのは会社が支給する給与等です。
給与等の支払者はその支払の際に,所得税を源泉徴収して国に納付しなければなりません。
これを源泉徴収義務といいます。
この源泉徴収義務は「義務」ですので,源泉徴収を怠ると罰則があります。
正当な理由なく納期限までに完納されなかった場合には納付すべき金額の10%に相当する不納付加算税が課されます。
さて,この源泉徴収制度ですが,会社が支給する給与や報酬及び配当等については比較的周知されていますので所得税を源泉徴収することを失念することは余りないのですが,不動産取引においても源泉徴収義務を有する場合があるので注意が必要です。
不動産取引において源泉徴収義務を有する場合とは,非居住者又は外国法人から一定の不動産を購入する場合です。
すなわち,非居住者又は外国法人から国内にある不動産を購入する場合には,その対価の支払をする者はその譲渡対価に対して10.21%の所得税及び復興特別所得税を源泉徴収し,国に納付しなければなりません。
ただし,購入する者が個人であって,自己の居住用に取得する場合で,かつ,対価の額が1億円以下である場合には源泉徴収の必要はありません。
ところで,所得税法における居住者と非居住者の区分ですが,居住者とは「国内に住所を有し,又は現在まで引き続き1年以上居所を有する個人」をいい,非居住者とは,「居住者以外の個人」をいいます。
また,住所は,個人の生活の本拠をいい,生活の本拠かどうかは客観的事実によって判定します。
したがって,居住者か非居住者であるかについて国籍は関係ありませんし,住所がどこであるかについて住民票の有無は関係ありません。
住民票が日本に無い外国人であっても,日本に1年以上居住していれば居住者に該当することはありますし,反対に,住民票が日本にある日本人であっても,客観的事実に基づく住所が外国にある場合には非居住者に該当することもあります。
一般的に不動産取引をする場合,仲介業者を介することが多く,プロでない限り売主と買主が直接やり取りすることはまれですが,仲介業者が必ずしも源泉徴収制度を承知しているとは限りません。
もし仮に,仲介業者が源泉徴収制度を知らず,売主が非居住者であるにもかかわらず売買代金の全額を売主に渡してしまったら,源泉徴収義務違反となり,譲渡対価の10.21%を買主が国に納税しなければなりません。
加えて,その源泉税の10%に相当する不納付加算税も課税されます。
結果として二重に支払ったこととなる源泉税については,当然,売主に返金請求することはできます。
できますが,相手が返金してくれるか否かはわかりません。
売った不動産が居住用であれば売主は引っ越しするでしょうし,それが外国であれば連絡を取ることも容易ではありません。
運良く連絡が取れたとしても,返金を拒否されたら,現実的には取立ては難しいです。
源泉徴収を失念した場合であっても,源泉税の本来の「負担者」である売主から国が直接徴収すれば良いという意見を耳にしますが,法律上の「納税義務者」はあくまでも買主ですので,国が売主に課税処分をすることはありません。
東京五輪以降,不動産価額が縮小すると予想する声も大きく,非居住者や外国法人が多くの不動産を売却するかも知れません。
そのタイミングで不動産を購入する場合には,くれぐれも源泉徴収義務にご注意下さい。
※ブログの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。
遺留分制度の見直し
遺留分制度とは,被相続人の有していた相続財産について,一定の相続人に一定の割合での承継を保障する制度です。
被相続人は,原則として,生前贈与や遺言により自己の財産を自由に処分することができますが,特定の相続人だけにすべての財産を相続させるという遺言を残していた場合,本来であれば自宅や預貯金を相続できたはずの他の相続人が何も相続できず,その後の生活に支障を来すということも考えられます。
そこで,被相続人が特定の相続人等に偏った遺言を残していた場合であっても,他の相続人が遺留分権利者である場合には,その遺留分権利者は遺留分の範囲内において相続財産を取得しうる権利(遺留分権)が与えられます。
この場合において,この遺留分権は行使される必要がありますので,遺留分が侵害された遺言が残されていた場合であっても,遺留分権利者が遺留分権を行使しなければ,その遺言の効力は有効となります。
遺留分権利者となる者は,配偶者,子,直系尊属です。兄弟姉妹は遺留分権利者とはなりません。
遺留分の割合は相続人が被相続人とどのような身分関係にあったかによって決まります。具体的には次のとおりです。
・相続人が直系尊属のみ・・・被相続人の財産の1/3
・上記以外・・・・・・・・・被相続人の財産の1/2
平成30年民法改正前は,遺留分権が行使されると,原則として遺留分の割合に応じて相続財産すべてが当然に共有(準共有)となっていました。
そのため,共有関係を解消するためには共有物の分割手続が必要となったり,相続財産が事業用財産であるのに事業に関与していない相続人にも事業用財産の共有持分が生じたりして,円滑な事業承継の妨げになるという問題が生じていました。
そこで遺留分制度の見直しが図られ,今後(令和元年7月1日施行)は,遺留分を侵害された者は,遺贈や贈与を受けた者に対し,遺留分侵害額に相当する金銭の請求(遺留分侵害額請求権)をすることができるようになりました。
この改正により,これまでは遺留分権の行使により当然に相続財産の共有関係が生じていましたが,これを回避することができるようになりました。
また,遺留分侵害額に相当する金銭の請求をされた場合に,請求された側に金融資産が無いことも予想されますので,裁判所の許可を得て,相当期間の支払猶予を認めることとなりました。
この遺留分侵害額請求権は,遺留分権利者が,相続開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないとき,相続開始の時から10年を経過したときは時効により消滅します。
上記のとおり,改正後は遺留分権の行使は遺留分侵害額請求権という金銭債権となったわけですが,請求された側に現金又は預貯金が無い場合,有価証券や不動産等の資産をその支払に充当することが考えられます。
この場合において,その支払に充当した資産は譲渡したものとして所得税及び住民税が課税されますので注意が必要です。
この点,民法改正前において遺留分権の行使により土地が共有となり,当該土地を共有持分に応じて分割する場合にはその分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱われるのと異なります。
※ブログの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。
貸し駐車場に関する相続税の取扱いについて
未利用の土地を相続した場合や,誰も居住していない居住用不動産を相続した場合には,そのままではもったいないですから土地の有効活用を検討するものの,賃貸用建物を建築して賃貸事業を行うほどの事業リスクは負いたくない,というケースは意外と多いです。
このような場合には貸し駐車場としての土地活用が有効です。そこで,今回は貸し駐車場に関する相続税の取扱いを概観します。
貸し駐車場にはさまざまな形態があり,どの形態を選択するかはその土地の場所,地積,形状,投下できる費用等を総合勘案して決定することになりますが,選択した形態によって相続税における財産評価額及び小規模宅地等の特例の適用の有無に違いがあります。
駐車場の形態としては,おおよそ次の4つが考えられます。
- 月極駐車場(アスファルト舗装等)
- 月極駐車場(青空駐車場)
- コインパーキングを自営する。
- コインパーキング業者に賃貸する。
財産評価について
それぞれの形態における土地の財産評価ですが,上記1から3は,いずれもその土地の所有者が自ら貸し駐車場として利用していることになりますので,更地と同様にその土地の自用地としての価額により評価します。
貸地ではなく自用地として評価するのは,土地の所有者が,その土地をそのままの状態で(又は土地に設備を施して)貸し駐車場を経営することは,その土地で一定の期間,自動車を保管することを引き受けることであって,このような自動車を保管することを目的とする契約は,土地の利用そのものを目的とした賃貸借契約とは本質的に異なる権利関係であり,この場合の駐車場の利用権は,その契約期間に関係なく,その土地自体に及ぶものではないと考えられるためです。
上記4は,コインパーキング業者に土地を貸し,当該業者が貸し駐車場を経営しているケースですが,この場合の権利関係は土地の賃貸借契約に該当しますので,その土地の自用地としての価額から,賃借権の価額を控除した金額によって評価します。
この場合における控除する賃借権の価額は,おおむね次のように評価します。
自用地としての価額 × 次の区分に応じ次の割合
賃借権の残存期間05年以下・・・・・・2.5%
賃借権の残存期間05年超10年以下・・・5%
賃借権の残存期間10年超15年以下・・・7.5%
賃借権の残存期間15年超・・・・・・・10%
小規模宅地等の特例について
小規模宅地等の特例は,被相続人が所有していた自宅敷地や事業用土地の評価額を減額してくれる特例です。
貸し駐車場に対して考え得る小規模宅地等の特例は,特定事業用宅地等としての80%減額か,貸付事業用宅地等としての50%減額かのいずれかですが,大前提として,駐車場業は特定事業用宅地等に該当する「事業」から除かれており,その規模,設備の状況及び営業形態等を問わないこととなっています。
よって,貸し駐車場が特定事業用宅地等に該当することはありません。
次に,小規模宅地等の特例の対象となる宅地等は,建物又は構築物の敷地となっている必要がありますから,アスファルト舗装や砂利敷き等の設備を有する必要があります。
そうしますと,上記1から4のうち,2の青空駐車場のみが小規模宅地等の特例の適用が無いということになり,他は貸付事業用宅地等としての50%減額が適用されます(面積制限有り)。
このように,貸し駐車場の形態によっては財産評価や小規模宅地等の特例の適用の有無に違いがあります。
貸し駐車場を始めるのはそれほど難しくないと思われますが,費用をかけずにロープと車止めだけで済ましますと,小規模宅地等の特例が適用されず,相続税におけるその影響額は小さくありませんので注意が必要です。
※ブログの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。
家族信託(≒民事信託)の概要
2019年6月18日,政府は認知症施策推進大綱を閣議決定しました。
もはや認知症はだれもがなりうるものであり,多くの人にとって身近なものとなっていることは間違いありません。2025年には最大730万人に達するという九州大学の推計もあります。
今回は,ここ数年じわじわと普及してきた認知症対策として有効な「家族信託」の概要をご説明します。
認知症とは判断能力が低下し,日常生活に支障をきたす状態のことをいいますが,認知症と診断されますと,例えば次のようなことができなくなります。
・所有している不動産を売却すること。
・不動産を購入すること。
・銀行からお金を借りること。
・銀行口座からまとまったお金を引き出すこと。
つまり,相続対策はほぼできなくなります。
判断能力が低下した人を支援する制度として,2000年に施行された成年後見制度がありますが,成年後見制度(任意後見含む)は次のようなデメリットがあり,財産管理という観点からはあまりお勧めできません。
・裁判所が後見人を選任するため,6割~7割の確率で第三者の後見人(弁護士や司法書士等)がつく。
・全く見ず知らずの人が財産を管理することになり,しかも報酬が発生する(最低でも月額2万円前後)。
・裁判所の監督下で財産管理が行われるため,不動産の売却や購入が事実上できなくなる。
つまり,こちらも相続対策がほぼできなくなります。
そこで,最近注目されているのが家族信託です。
家族信託であれば,裁判所が関与することなく,信託契約の内容に従い受託者の判断で制約なく財産管理を行うことができます。
信託といいますととても難しいことのように聞こえるかもしれませんが,実務で行われる家族信託は次のようにとてもシンプルです。
登場人物は2人だけ
・委託者=財産の所有者=父親
・受託者=財産を託される人=息子
・受益者=利益を受け取る人=父親
ものすごく簡単に説明しますと,家族信託とは,父親が息子に自宅や貸アパートの管理,運用及び処分を任せて(委託し),そこから生じる収益は父親が受け取る,ということを,信託契約という形式にすることです。
具体例
貸アパートを信託財産とする場合,まずは父親と息子で信託契約を締結します(信託契約書を作成します)。
その信託契約を根拠に,父親の貸アパートの名義が息子に変わります。
ただし,名義は変わりますが実質的所有者は父親のままです。
貸アパートの管理,運用及び処分の権限だけ息子に移行します。
形式的な所有者は息子となりますが,実質的な所有者は父親のままなので,それが第三者にわかるように登記簿謄本に記載されます。
信託契約締結後の家賃は受託者である息子が受け取ります。
このとき,自分の預金と混同しないように信託専用の口座を設けて分別管理をします。
貸アパートに関する必要な支払いはその信託専用口座から行います。
貸アパートの実質的所有者は父親のままですから,受け取った家賃は父親のものです。
よって,家賃収入に関する所得税の確定申告も父親の名によって行います。
息子に手数料を支払いたければ信託契約で定めることができますし,信託契約の終了をいつにするかも自由に定めることができます。
受託者である息子は,管理,運用及び処分する権限を与えられているので,貸アパートを建て直したり,信託契約の内容によっては貸アパートを取壊して土地を譲渡したりすることもできます。
この状態で,仮に父親の判断能力が低下し認知症と診断された場合であっても,その後の貸アパートの管理,運用及び処分は息子が行うことができます。
このように,家族信託であれば,本人が認知症と診断された場合であっても,その後の財産管理を予め自分が指定した人に委ねることができるので,相続対策を行うことも可能です。
また,家族信託は色々と応用することが可能で,例えば,遺言書では自分の遺産分割しか指定できないところ家族信託であればその次の代以降まで指定できるとか,工夫次第で様々な財産管理や遺産の分配が行えます。
※ブログの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。
