HOME >BLOG

BLOG

土地とともに取得した建物をすぐに取壊した場合の会計処理

2018-12-01(土) 13:23:20

カテゴリー:

法人が,建物が建っている土地をその建物と一括して購入した場合において,当初からその建物を取り壊して土地を利用する目的である場合には,その建物の取得価額と建物の取壊し費用は,土地の取得価額に含めることになっています。

 

法人税基本通達7-3-6

法人が建物等の存する土地(借地権を含む。)を建物等とともに取得した場合又は自己の有する土地の上に存する借地人の建物等を取得した場合において,その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等,当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは,当該建物等の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額(廃材等の処分によって得た金額がある場合は,当該金額を控除した金額)は,当該土地の取得価額に算入する。

 

このような取扱いをする理由は,もともと建物は利用する意思がなく,その土地上にビルを新築するということが明らかであれば,欲しいのはその土地ということになりますので,そのような場合には建物の取得価額とその取壊し費用は土地の取得価額に算入すべきであるという考え方に基づきます。

 

建物の取壊しが取得後「おおむね1年以内」という基準ですが,これは形式基準ですので,たとえ建物の取壊しが取得後1年経過後であっても,当初から土地だけを利用する目的であることが明らかな場合には,建物の取得価額とその取壊し費用は土地の取得価額に含める必要があります。

 

尚,その建物を取り壊すまでの間に,実際にその建物を事業の用に供している場合には,その事業の用に供した期間に対応する減価償却費の計上は認められます。

 

次に,上記とは反対に,当初は建物を利用するつもりで土地及びその上に存する建物を取得し,実際にその建物を利用していたものの,後発的な理由から取得後1年以内に建物を取り壊したような場合には,その建物の償却後取得価額及び取壊し費用は,土地の取得価額に含めず,費用計上して差し支えないと考えられます。

 

これは,上記通達の文言が,「当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは」と条件を付していることから読み取れます。

 

例えば,当初は倉庫として利用する目的で土地及び建物を取得し,実際に倉庫として利用していたものの,その後の社内事情等で建物を取り壊して本社ビルを建築することとなった場合には,たとえその取壊しが取得後1年以内であっても,その倉庫の償却後取得価額及び取壊し費用は,その取壊しをした事業年度の費用になると考えられます。

 

但し,その後発的理由を立証するのは課税庁側ではなく納税者側であり,後日の税務調査においては必ず調査項目に上がると思いますので,後発的理由により取壊した経緯等を詳細に記録し,きちんと説明できるようにしておく必要があります。

 

ちなみに,法人税だけでなく所得税にも同様の趣旨の通達があります。

 

所得税基本通達38-1

自己の有する土地の上に存する借地人の建物等を取得した場合又は建物等の存する土地(借地権を含む。以下この項において同じ。)をその建物等と共に取得した場合において,その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手するなど,その取得が当初からその建物等を取壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは,当該建物等の取得に要した金額及び取壊しに要した費用の額の合計額(発生資材がある場合には,その発生資材の価額を控除した残額)は,当該土地の取得費に算入する。