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贈与でもらった不動産を未登記で7年経過すれば贈与税は回避できる!?
贈与による財産の取得の時期は、書面によるものは契約効力発生の時に、書面によらないものについてはその履行の時に贈与があったこととされています。
ただし、その贈与の時期が明確でないときは、特に反証のない限り、財産の登記があった時に贈与があったものとして取り扱われます。
では、次のような場合、贈与税は回避できるでしょうか?
Aさんは7年前に父から自宅とその敷地を贈与により取得し、その内容を公正証書にしてずっと保管してきました。本来であれば贈与により取得した年の翌年3月15日までに贈与税の申告をしなければならないのですが、登記名義人を変更しなければ税務署はわかるまいと思い、名義変更はしませんでした。
そして7年後、課税の時効が成立したと思い、父からAさんへ登記名義人の変更を行いました。
(租税債務の時効は最長で7年です。)
Aさんのロジックは、「公正証書という書面を残しているのだから、贈与契約の効力発生時はあくまでも公正証書を作成した時である。不動産登記は義務ではないのだから名義変更をしなかったことに問題はない。だから贈与税を課税することはできない。」 というものでした。
はたしてどうか?
税務署は、不動産の名義変更を行ったときが贈与のときであるとして当然に課税してきます。
Aさんは争います。
そして、国税不服審判所は次のように裁決しました。
「本件公正証書の作成目的は租税回避にあり、それ以外に特段の必要性がなかったものと推認され(中省略)、実態の伴わない形式的文書にすぎず、本件公正証書によって贈与が成立したとは認めることはできない」
当然と言えば当然です。
これが認められればみんなやります。
しかし、次のようなケースは課税されずに済みました。
亡きBさんの相続税の申告に関し税務調査がありました。
調査を進めていくなかで、亡きBさんが10年前に相続人Cさんに現金5,000万円を贈与していることが発覚しました。Cさんはその現金で不動産を購入し、その名義はCさんで登記しました。
が、Cさんは贈与税の申告はしていませんでした。
税務署は何とかして課税できないものか色々言ってきます。
現金贈与は書面がないから贈与は実行されていない、よってその現金(預金)は亡きBさんの名義預金だ、よって今回の相続税の課税対象だ。
あるいは、
名義預金で不動産を購入したのだからその不動産は登記上はCさんでも本来の所有者はBさんだ、よって今回の相続税の課税対象だ。
更には、
その現金は贈与ではなくて貸付金だ、よって今回の相続税の課税対象だ。
しかし、最後は税務署は諦めました。
租税債務の時効は7年ですから、贈与税を課税するためには10年前に贈与があったのではなく、その後に贈与があったことを税務署は立証しないとなりませんが、きちんと登記されているのですからそれは無理です。
次に、相続税で課税しようとすると、贈与した現金は実は贈与ではなく貸付金であったと立証しなければなりませんが、他の状況から当事者同士に返済する意思があったとは思えない事実がありましたのでそれも無理でした。
結局、何のおとがめなしです。
よって、
「贈与でもらった不動産を未登記だと7年経過しても贈与税は回避できない。」ですが、
「贈与でもらった不動産を登記して7年経過すれば贈与税を回避できる。」場合もある、と言えそうです。
でも皆さんきちんと申告はしましょう。
長崎年金訴訟のおかげで税金が還付されます。
遺族が年金形式で生命保険金を受け取る場合、まずは相続発生時に今後受け取る年金総額の一定額に対して相続税が課税され、そしてその後、毎年受け取る年金に対して今度は所得税が課税されます。
これはおかしいのではないか?と長崎の主婦が提訴し、
最高裁は今年7月6日に 「これは二重課税に該当する」 として国側敗訴の判決を下しました。
この判決を受けて国税庁は、同じような事例でこれまでに所得税を納め過ぎた人については、請求があれば還付するとホームページなどで告知しています。
そして注目すべきは還付対象とする期間です。
現行の国税通則法では国が税金の還付をすることができる期間は5年前までと決まっているのですが、今回の判決を受けて野田財務大臣は以下のように述べています。
「5年を超える部分の納税の救済については、これは制度上の対応が必要になると思います。法的な措置が必要なのか、政令改正で済むのか、これはよく子細に検討させていただきたいと思いますけれども、関係者の皆様にご迷惑をかけないように、これも対応をしていきたいと思います。」
つまり、法を改正してでも還付すると述べたわけです。
これはかなり重要な発言です。
そもそも税法になぜ除斥期間が定められているかというと、いつまでも税金還付の請求(これを「更正の請求」といいます。)を受け付けていては、租税債権が確定せず、法的安定性がはかられないからです。
にも関わらず上述のように発言した財務大臣の真意はどこにあるのか、言わずもがな、という気がします。
いずれにしても、国が返してくれるというのですから、該当する方はきちっと更正の請求をして税金を還付してもらいましょう。
法人設立を司法書士に最初に相談すると損をします。
起業する人がまず最初に判断しなければならないのが、個人事業でスタートした方が良いのか法人でスタートした方が良いのかという問題。
答えはもちろん、事業の内容や規模、最初に融資を希望するのか否かなど、ケースバイケースで一概にどちらが有利ということは言えません。
税金だけが判断基準ではありませんが、法人であれば法人税が課税され、個人事業であれば所得税が課税されるわけですから、この税率と課税構造の違いも当然無視できません。
そこで、一つの判断材料として消費税を基準にする考え方をご紹介します。
一般的にはあまり知られていませんが、その年度に消費税が課税されるか否かは、2年前の売上が1,000万円を超えているかどうかにより判断します。
例えば、平成20年度の売上が1,000万円以下であったならば、平成22年度の売上がどんなに多くても消費税は課税されません。
逆に、平成20年度の売上が1,000万円を超えていれば、平成22年度の売上がどんなに小さくても消費税が課税されます。
では、2年前の売上がない場合はどうなるでしょう?
起業した年とその翌年は2年前の売上という概念が成り立ちません。
そこで、消費税法では起業した初年度と2年目は消費税を納税する義務を免除しています(法人の場合は資本金1,000万円未満の場合に限る)。
ということは、最初起業するときは個人事業でスタートして2年間の消費税免除の特典を享受し、その後、法人化して更に2年間の消費税免除を受ければ、合計4年間も消費税を納税しなくて良いことになります。
この辺りの税知識をきちんと持った司法書士であれば問題ありませんが、あまり税が得意でない司法書士ですと何も考えずに法人設立を勧められることもあるそうですので、注意が必要です。
1,000万円の車も購入した年で全額経費になる場合がある!?
会社で車を購入した場合、普通は購入した年にその全額が経費で落ちるわけではなく、減価償却という概念で耐用年数に応じて少しずつ経費にしていきます。
例えば、一般車を500万円で購入した場合、その耐用年数は6年ですので、経費に計上できる金額は以下の通りです。
事業年度:4月1日~翌年3月31日
耐用年数6年の場合の定率法償却率0.417
購入した日:4月1日
1年目 5,000,000円×0.417=2,085,000円←経費計上額 未償却残高2,915,000円
2年目 2,915,000円×0.417=1,215,555円←経費計上額 未償却残高1,699,445円
3年目 1,699,445円×0.417= 708,668円←経費計上額 未償却残高 990,777円
4年目 ・ ・ ・ ・ ・ ・
5年目 ・ ・ ・ ・ ・ ・
ところが中古車の場合、耐用年数は6年ではなく、以下のように計算して年数が決まります。
法定耐用年数-経過年数+(経過年数×20%)=残存耐用年数
(1年未満の端数は切り捨てで、計算の結果が2年に満たない場合には2年とします。)
すると、4年落ちの車の場合、
6年-4年+4年×20%=2.8年→2年(1年未満の端数切り捨てのため)
となります。
そして、ここがポイントですが、実は定率法の場合、償却率は1.000なんです。
すると、上記500万円の車が4年落ちの中古車だった場合、
1年目 5,000,000円×1.000=5,000,000円←経費計上額 未償却残高0円!!!
となります。
購入した中古車が1,000万円でも同じ理屈です。
購入したその年で取得価額全額の経費計上が可能となります。
年度の途中の10月に購入した場合でも、
10,000,000円×1.000×6か月/12か月=5,000,000円 となり、半分が経費になります。
ちなみにこの方法は、車両に関する減価償却費の計算方法として定率法を選択している場合のみ適用があります。定額法では駄目ですので注意して下さい。
未払残業代のお話
数年前から電車内で 「支払い過ぎた利息を取り戻せるかも知れません。」 という弁護士や司法書士の吊広告をよく見かけるようになりました。最近ではテレビやラジオでもCMを聴くようになりました。
多くの消費者金融は利息制限法の制限金利である20%を超えて貸付を行っていたため、これを超える利息を支払い続けてきた債務者は、利息の過払いが発生しているケースがあります。
20%と制限されているのに何故それを超えて貸付できるのかといいますと、別の法律である出資法が上限金利を29.2%と定めているからです。
こうした過払い金が発生している債務者に対し、完全成功報酬を謳って弁護士や司法書士が過払い金の返還交渉や訴訟を手掛けるようになり、同様の事例が一気に広がり 「過払い金返還請求」 という一つのビジネスが成り立つようになりました。
そして、次に注目されている同様のビジネスが、「未払残業代請求訴訟」 です。
これが前出の過払い金返還請求と同様に広がり始めると、日本の中小企業はかなりの打撃を受けます。
日本の中小企業の場合(大企業もそうかも知れませんが)、適正に残業代を支払っている企業はそう多くありません。良くも悪くも労使ともにサービス残業を甘受しているというのが現状です。
しかし、労働基準法が経営側の実態を顧みずに労働者保護の姿勢をより強めていることもあり、最近では 「あなたは残業代をちゃんともらっていますか?」 と未払残業代請求訴訟を煽るような弁護士も出てきています。
会社に不満があり退職していった人などは、完全成功報酬型の弁護士に依頼することで訴訟に躊躇することはないでしょう。
しかも労働基準法第114条は、「裁判所は、(中省略)~規定による賃金を支払わなった使用者に対して、労働者の請求により、~使用者が支払わなければならない金額についての未払い金のほか、これと同一額の付加金の支払いを命ずることができる。~」 と規定しており、場合によっては倍額の支払いを要するケースもあります。
よって会社側は、このような未払残業代請求訴訟を提訴されないよう事前に社会保険労務士などの専門家に相談し、万全の対策を考える必要があります。