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就業規則は大丈夫ですか? (その1)
社会保険労務士の先生と話をしていてよく話題になるのですが、就業規則はきちんとしておかないと怖いです。
就業規則が無かったり、有っても不十分だったりすることのリスクはかなり大きいです。
今後、何回かにわけて就業規則のお話をします。
就業規則の作成は労働基準法に定められていて、10人以上の労働者(パートやアルバイトを含む)がいる場合には、全ての会社が就業規則の作成と労働基準監督署への提出が義務付けられています。
では、10人未満の会社は就業規則が無くても良いのか、となりますが、そんなことはありません。
労働者が10人未満であっても就業規則が無いことのリスクは大きいですので、労働者の人数にかかわらず就業規則はきちんと作成すべきです。
就業規則が無かったために、或いはあっても内容が不十分だったために会社が損害を被ったというケースは枚挙にいとまがありません。
具体例は後述することにしますが、就業規則を作成する上で絶対にやめるべきなのが、ネットや書籍などから就業規則の雛型を入手し、適当に手直しして就業規則を作成したつもりになることです。
こんな就業規則でしたら無いほうがマシです。
雛型就業規則で自社の就業規則を作成したつもりになっているとしたら、きちんと見直しをして作成し直すことをお勧めします。
参考文献
下田直人『人が動く!組織が変わる!「勝ち組企業」の就業規則』(PHPビジネス新書・2008年)
会社解散後、社長に第2次納税義務が生じるかも知れません。
平成22年度の税制改正において、清算所得課税は廃止され、平成22年10月1日以後に解散した法人からは通常の損益計算と同様に税務処理を行うこととなりました。
が、ここで注意が必要です。
これまでは法人が解散した場合には、清算所得課税といって通常の損益計算ではなく、財産制のあるもののみ課税の対象とする清算所得課税でしたが、今後は通常の損益計算となりましたので、例えば、社長が会社に対する債権を放棄した場合には、会社は債務免除益を計上しなければならなくなりました。
もっとも、債務免除益を計上した場合であっても、今回の改正において期限切れ欠損金の利用範囲が大幅に拡大したため、実態が債務超過であればこの債務免除益と期限切れ欠損金を相殺させ過大な税金が生じないような手当はなされています。
しかし、この期限切れ欠損金は無条件で利用できるものではないため、所定の手続きを失念すると、結局、債務免除益に対して課税がなされてしまいます。
そして、上記のような手続きを失念する会社の場合、たいていは既に残余財産を分配してしまってから納税しなければならない事態が発覚し、結局、社長や清算人に対して第2次納税義務が生じることが多いようです。
この第2次納税義務というのは本当に厄介な規定ですので、同族会社の社長は常に念頭に入れておくことをお勧めいたします。
給与と報酬の区分をめぐる問題
社会保険の負担が大変だとか、源泉徴収事務が煩雑で面倒だ、といった理由から、これまで社員に支払っていた給与を、業務請負契約などの報酬に変更して支払おうとする会社がたまにありますが、これは一歩間違うと痛い目にあいます。
給与とは 「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得」 と規定され、いわゆる雇用契約に基づくものです。
一方、報酬とは 「農業、漁魚・・・その他のサービス業のほか、対価を得て継続的に行う事業から生ずる所得」 と規定され、いわゆる請負契約に基づくものです。
この場合において、雇用契約に該当するのか請負契約に該当するのかは、実態に即して判断され、会社の都合で決まるものではありません。
区分の基準としては次の二つが重要視されます。
①非独立性
例えば、まだ引き渡しを終えていない完成品が不可抗力のため滅失してしまった場合において、その者が権利
として報酬の請求をなすことができるか否か。できる場合には給与としての要素が強いと思われます。
②従属性
例えば、契約の内容から他人の代替が可能である場合には、報酬としての要素が強いと思われます。
また、仕事の遂行に当たり、個々の作業について指揮監督を受けずに自己の裁量において業務を行う場合に
は事業としての要素が強いと思われます。
どちらも所得税を源泉徴収する必要がありますが、給与の場合はその支払金額と扶養者の数に応じ、一覧表に規定する所得税を徴収します。
一方、報酬の場合は、たいがいの場合は支払金額の10%の所得税を徴収します。
そして、もっとも問題となるのが消費税です。
会社が決算で納税する消費税は、売上に係る預かり消費税から、支払いに係る仮払い消費税を控除することによって算出するのですが(仮払い消費税の方が大きかったら還付となります)、この場合において、給与は 「非課税仕入」に該当し、控除することができません。
一方、報酬は 「課税仕入」 に該当し、控除することができます。
両者の差は、単純に考えれば給与の支払金額の5%ですから、かなり違うことになります。
当然、控除することができる報酬の方が納税額は少なくなるのですが、それを目当てに会社の判断で給与に該当するものを報酬として消費税の計算を行うと、当然のことながら税務調査で否認され、過少申告加算税や延滞税などの余計な税金まで課せられてしまいます。
あくまでも実態で判断するものであって、会社の都合で判断するものではありませんので、注意が必要です。
新寄付金税制について ~税務調査で寄付金認定された場合~
平成22年度の税制改正で寄付金に対する税制上の取扱いが改正され、法人による完全支配関係にある
内国法人間の寄付については、
寄付をする内国法人においては損金不算入
寄付を受ける内国法人においては益金不算入
となりました。
この改正に関する法人税通達9-4-2の5の当局による解説では、 「無利息貸付などの金銭の授受を伴わない経済的利益の供与を受けた場合であっても、その利益供与が法人税法上の寄付金に該当する場合には、支払利息などを損金算入するとともに、同額の受贈益を益金に計上する両建て経理を行った上で、この受贈益が益金不算入になる。」 と記述してあります。
要するに、無利息で金銭の貸付を受けた場合であっても、支払利息に相当する金額を算定して、
(借方)支払利息 (貸方)受贈益
という仕訳を計上して、この受贈益が益金不算入だということです。
ここで、疑問なのが、平時は上記の仕訳を計上していなくて、税務調査でそれを指摘された場合です。
きちんと仕訳をしていれば益金不算入の取扱いを受けることができたのに、仕訳をしてない状態で税務調査の際にそれを指摘された場合、益金不算入の取扱いが受けられなくなってしまうのか?
結論としては心配不要です。
それは、新寄付金税制では確定決算や確定申告において上記のような両建て経理が求められているわけではないので、仮に税務調査で上記のような指摘があった場合であっても、きちんと益金不算入の規定の適用が受けられます。
税制改正の影響で保育料や健康保険料の負担も増加するかも知れません。
平成22年度税制改正において、子ども手当の導入に伴い、所得税と個人住民税の扶養控除の一部(0歳~15歳)が平成23年分から廃止されることとなりました。
また、高校授業料の実質無償化に伴い、やはり所得税と個人住民税の扶養控除の一部(16歳~18歳)が平成23年分から減額されることになりました。
これにより、所得税と住民税の負担が増加することになるわけですが、税金だけでなく、健康保険料や保育料の負担も増加する可能性があります。
といいますのは、多くの市区町村は国民健康保険料の保険料を、個人住民税の約1.2倍~1.5倍くらいで計算しています。
また、保育園の保育料や公営住宅の家賃も、個人住民税に連動させて負担額を決定している場合がほとんどです。
そうしますと、必然的に個人住民税の負担が増えれば、それに連動して国民健康保険の保険料や保育園の保育料が値上がりする、というわけです。
これは大変だ、ということで、現在、政府税制調査会では 「控除廃止の影響に係るPT(プロジェクトチーム)」 を立ち上げて、行政サービスの負担増を防ぐ対処案をまとめています。