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青山学院大学で税法ディベート大会に参加しました。

2012-10-31(水) 09:01:49

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10月27日(土)に,青山学院大学で税法ディベート大会が開催され,東京税理士会有志として参加してきました。

 

青山学院大学では,毎年,三木教授及び中村教授の共催として税法ディベート大会を開催しているようで,私は今回初めて参加してきました。

学生が対戦相手であるとはいえ,私はディベート大会初参加でしたので勝手がわからず,約2ヶ月前から準備を開始し,直前1ヶ月は毎週同じチームのメンバーで集まり,打合せを重ねてきました。

 

ディベートのテーマは,「遺産分割に要した弁護士報酬は,相続により取得した土地の取得費に含まれるか」です。

 

このテーマについて,課税庁側と納税者側にわかれてそれぞれ主張及び質問をし,その後,立場を替えて,また主張及び質問をする,という形式です。

 

ディベートが開始されるまで対戦相手がどのような主張及び質問をしてくるかわかりませんので,事前に対戦相手の主張及び質問を想定し,それに対する回答を準備しておくことが重要なのですが,これがかなり大変でした。

 

試合は,結果として我々東京税理士会有志チームが審査員3人全員から評価して頂き圧勝致しましたが,青学の学生もさすが三木ゼミの学生,なかなか手強かったです。

 

ちなみ,当日は我々の試合以外に2試合が開催され,これら2試合は東京青年税理士連盟が学生と対戦したのですが,どちらも学生が勝利しました。学生のレベルの高さが窺い知れると思います。

 

また機会があればディベート大会に参加してみたいと思います。

 

会社分割の乱用に歯止め

2012-10-15(月) 08:48:09

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最高裁は,平成24年10月12日第二小法廷判決で,要旨以下のような判断を下しました。

「株式会社を設立する新設分割がされた場合において,新設分割設立株式会社にその債権に係る債務が承継されず,新設分割について異議を述べることもできない新設分割株式会社の債権者は,詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができる。」

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82628&hanreiKbn=02

 

この背景には,倒産寸前の会社が,債務返済を免れようと会社法の会社分割制度を悪用するケースが後を絶たず,社会的に問題的になっていたことがあります。

 

債務を免れようとするカラクリの概要は以下の通りです。

倒産寸前の会社→会社分割制度を利用して,優良資産を有する会社と債務のみを有する会社に分割する

→優良資産を有する会社で事業継続→債務のみを有する会社は倒産(結果,債務を免れる)

 

本来,事業再編を促すのが目的である会社分割制度ですが,上記のような会社分割を意図的に繰り返し,債務返済を逃れようとする輩が横行していました。最高裁がこれに一定の歯止めをかけたと言えそうです。

 

 

 

ゴルフ会員権の譲渡による節税

2012-09-21(金) 08:50:30

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個人がゴルフ会員権を譲渡し譲渡益が発生しますと,譲渡所得として所得税及び住民税が課税されます。

一方,譲渡して譲渡損が発生した場合は,損益通算と言いまして,給与所得など他の所得と相殺できます。相殺すれば当然ですが税金が安くなります。

 

ところで,所得税法では,別荘や競走馬,1個30万円を超える貴金属や骨董品などを「生活に通常必要でない資産」と定義しており,これらを譲渡して譲渡損が発生したとしても,他の所得と相殺する「損益通算」の適用は無いと規定しています。これらはいわゆる贅沢品ですから,贅沢品を譲渡して損をしたとしても税金を安くしてあげる必要は無いという趣旨です。

 

ところが,所得税法上,ゴルフ会員権はこの「生活に通常必要でない資産」に含まれていません。よって,ゴルフ会員権を譲渡して譲渡損が発生した場合,給与所得など他の所得と損益通算することができます。

 

常識的に考えて,ゴルフ会員権が「生活に通常必要でない資産」であることは明らかですので,もう何年も前からこの部分は改正されると言われ続けていますが,今のところ改正されておりません。

 

お持ちのゴルフ会員権の相場が,購入した時よりも大幅に下落している場合,売却を検討されても良いかも知れません。

企業にお勤めで給与収入がある方の場合は,退職する前に検討して下さい。退職後ですと,折角譲渡損を発生させても,そもそも相殺する他の所得が無ければ意味が無いからです。

また,相続によりゴルフ会員権を手に入れた場合であっても,被相続人が購入したときの金額を引き継ぎますので,被相続人が購入したときよりも今の相場が下落している場合は,売却して譲渡損を発生させ,他の所得と損益通算することができます。

 

ゴルフ会員権に関する税制はいつ改正されてもおかしくありませんので,使える節税方法が封じ込まれる前に一度ご検討下さい。

消費税の税率改正に関する経過措置

2012-09-20(木) 09:39:38

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既報の通り「消費税法の一部を改正する等の法律案」が成立致しました。これにより消費税の税率が8%,10%と段階的に上がります。

 

具体的には,今から1年半後に5%から8%となり,更にその1年半後には8%から10%になります。

 

「消費税法改正で税率8%」と強調されて報道されていますが,今から3年後には消費税率は現在の倍となります。1割もの消費税が課税されるのはとても大変なことです。景気に悪影響を及ぼすのではないかと懸念されるのも首肯できるところです。

 

過去に消費税率が3%から5%へ改正されたときと同様に,今回も請負工事や資産の貸付け等については経過措置が講じられています。

 

●請負工事に関する経過措置

平成25年10月1日(指定日)の前日までに締結した工事・製造の請負に係る契約に基づき,平成26年4月1日以後にその契約に係る課税資産の譲渡等を行う場合,その課税資産の譲渡等については改正前5%が適用される。

(解説)

完成物の引渡しが平成26年4月1日以降である場合,原則として消費税率は改正後の8%が適用されるのであるが,建物の建設や機械の製造など通常数ヶ月以上かかる工事については,指定日の前日までに契約していれば,たとえ完成物の引渡しが平成26年4月1日以降であって

も,指定日現在の税率(この場合は5%)が適用される。

 

●資産の貸付けに関する経過措置

指定日の前日までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に基づき,平成26年4月1日前から同日以後引き続きその契約に係る資産の貸付けを行っている場合で,契約の内容が次の①及び②又は①及び③の要件に該当するときは,平成26年4月1日以後の貸付けに係る消費税は改正前5%が適用される。

①貸付期間と対価の額が定められていること。

②事情の変更等で対価の額を変更できないこと。

③契約期間中に解約できないこと。

(解説)

リース取引のように,一定期間リース物件を固定リース料でリースする場合において,指定日の前日までに契約したリースについては,リース期間が平成26年4月1日以降に入り込む場合であっても,指定日現在の税率(この場合は5%)が適用される。

 

このように,平成25年10月1日(指定日)の前日までに契約したものについては,物の引き渡しやサービスの提供が平成26年4月1日以降となった場合であっても,改正前の5%が適用されるため,建物や機械の設備投資,あるいはリースを予定している場合には,改正消費税との関連性を十分に検討する必要がありそうです。

大衆税目化する相続税

2012-07-25(水) 16:18:57

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 先の衆議院本会議において税制抜本改革法案が修正議決され参議院に送付されました。

 同法案は消費税法の改正項目以外にも所得税や相続税の改正項目を含んでいましたが,当初の法案が修正された時点で所得税や相続税に関する部分は丸ごと削除されています。

 これにより,所得税や相続税の増税は先送りになりました。

 しかし,相続税の増税は財務省の長年の夢ですので,来年以降の税制改正項目に必ず含まれると思われます。
 そこで,仮に相続税の税制改正が実現しますと,どれくらいの影響があるか検証してみます。

(予定されている改正項目)
・基礎控除の引下げ(定額控除5,000万円→3,000万円,法定相続人1人につき1,000万円→600万円)
・最高税率の引上げ(取得財産6億円超は50%→55%)
・死亡保険金の非課税限度額の引下げ(未成年者,障害者,同一生計の者に限定される)
・未成年者控除,障害者控除の引上げ(6万円→10万円)

(例)父・母・既に結婚して別生計の子2人の4人家族の場合。自宅は母が相続したとします。
*世田谷の自宅の土地(120㎡)路線価50万円×120㎡=評価額6,000万円
*世田谷の自宅の建物 評価額500万円
*預貯金 2,000万円
*生命保険金 2,000万円

第1次相続の相続税の計算は以下の通りです。
①課税財産額(6,000万円-4,800万円※1)+500万円+2,000万円+(2,000万円-500万円※2)=5,200万円
②基礎控除 3,000万円+600万円×3※3=4,800万円
③相続税額 (①-②)×税率※4=40万円

(※1)小規模宅地等の減額 配偶者が相続した場合は原則として80%減額
(※2)生命保険の非課税額は500万円×同居していた法定相続人の人数(今回は配偶者のみ)
(※3)法定相続人の数(今回は3人)
(※4)課税価額1,000万円以下は税率10%

第1次相続の納税額は40万円ですからそれほど問題ではありません。問題は第2次相続です。

第2次相続の相続税の計算は以下の通りです。
①課税財産額6,000万円※1+500万円+2,000万円+2,000万円※2=10,500万円
②基礎控除 3,000万円+600万円×2※3=4,200万円
③相続税額 (①-②)×税率※4=1,190万円

(※1)小規模宅地等の減額 同居してないので適用なし
(※2)生命保険の非課税額 同居してないので適用なし
(※3)法定相続人の数(今回は2人)
(※4)課税価額10,000万円以下は税率30%-700万円

 税制改正が実現しますと,上記のとおり第1次相続及び第2次相続の合計で1,230万円もの相続税額になります。

 今後,都心中心部に自宅を所有している方の相続人は,ほとんどの方が相続税を納税することになりそうです。

 よって,事前の対策が必要不可欠になると思われます。