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空き家に係る譲渡所得の特別控除

2023-03-20(月) 18:53:03

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総務省統計局による「住宅・土地統計調査」によりますと,空き家のうち賃貸用・売却用・二次的住宅(別荘)以外の今後利用が予定されていない空き家は,平成10年から平成30年の20年間に約1.9倍の182万戸から347万戸に増加しており,今後も急速に増加していくと予想されています。

 

適切に管理されずに放置されたままの空き家は,腐蝕等による倒壊の恐れ,アスベストの飛散やゴミによる悪臭,不審者の出入り,不審火や放火の恐れといった衛生面や防犯上の問題が生じるため,看過することはできません。

 

そこで,これ以上の空き家の増加を抑制するため,譲渡を促すという観点から,平成28年度税制改正により,空き家に係る譲渡所得の特別控除が創設されました。

 

この特例は,「一人暮らしだった被相続人が居住していた土地及び家屋を相続した相続人が,その相続開始から3年を経過した日の属する年の12月31日までに譲渡した場合には,その譲渡益から3,000万円を控除する」というものです。

概要は次のとおりです。

 

<家屋及び敷地に関する要件>

・相続等により取得した家屋及びその敷地であること。

・相続開始の直前において,被相続人が一人で居住していた家屋であること。

※ただし,次の要件を満たした場合は被相続人が相続開始の直前に居住していたものと認められます。

①被相続人が介護保険法に規定する要介護の認定を受け老人ホームに入所し,かつ,相続開始の直前まで老人ホームに入所していたこと。

②被相続人が老人ホームに入所した時から相続開始の直前まで,その家屋について,その者による一定の使用がなされ,かつ,事業の用,貸付の用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。

・昭和56年5月31日以前に建築された区分所有建築物以外の建物であること。

・相続時から売却時まで,事業の用,貸付の用,居住の用に供されていないこと。

 

<譲渡に関する要件>

・平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に行われる譲渡であること。

令和5年度税制改正において,令和9年12月31日までの譲渡に延長される予定です。

・相続開始があった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にした譲渡であること。

・その譲渡対価の額の合計額が1億円以下(共有で譲渡する場合には合計額が1億円以下)であること。

・耐震リフォーム等により,譲渡時において耐震基準に適合することが証明された家屋の売却であること,又は相続人が家屋を取壊して売却すること。

令和5年度税制改正において,売買契約等に基づき買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修又は除却工事を行った場合には,工事の実施が譲渡後であっても,売主は同特例の適用を受けられるようになる予定です。

・被相続人居住用家屋とその敷地の両方を譲渡するものであること(よって,どちらか一方しか相続していない場合には当該特例の適用はありません)。

 

<特別控除額>

・相続人1人当たり3,000万円(当該譲渡による所得金額が3,000万円に満たない場合にはその金額まで)。

令和5年度税制改正において,当該特例の適用を受ける相続人の数が3人以上の場合における特別控除額は1人2,000万円となる予定です。

 

<留意事項等>

相続税額の取得費加算の特例(相続により取得した財産を譲渡した場合に納めた相続税額の一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができるという特例)等の他の特例との併用が認められないケースもありますので,複数の特例の適用要件を充足する場合には,最も有利となる特例を選択する必要があります。

 

また,相続とは関係なく自己の居住用不動産を譲渡する予定がある場合には,複数年にわたり特別控除の適用を受けることができるよう譲渡する年をわけるなど,計画的な譲渡をお勧め致します。

 

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