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仮想通貨に関する税務の取扱い
昨年11月から12月のたった1ヶ月の間に3倍以上に急騰した「ビットコイン」や,仮想通貨交換会社コインチェックから大量に流出した「NEM」が話題になっておりますが,今回はこれら仮想通貨に関する税務の取扱いを概観してみます。
まず,課税の問題が生じるタイミングは当然ながら所得(利益)が生じた時ですが,具体的には次のような場合に課税の問題が生じます。
①仮想通貨を売却(円やドルに換金)したとき
②仮想通貨で商品を購入したとき
③仮想通貨と仮想通貨を交換したとき
④マイニングにより仮想通貨を取得したとき
※マイニングとはブロックチェーンでの複雑な計算作業を行った対価としての報酬を仮想通貨で得ること。
①は100で購入した仮想通貨を120で売却した際の差額20が利益となり課税され,④はもらった仮想通貨そのものが利益となり課税されます。これらは比較的解りやすいと思いますが,②と③は具体例を用いて解説します。
<②の具体例>
3月9日 100万円で2ビットコインを購入した。
9月9日 7万円の商品購入に0.1ビットコインを支払った
この場合,0.1ビットコイン(簿価5万円)で,7万円の商品を購入できたことになりますので,2万円が利益となり課税されます。
<③の具体例>
3月9日 100万円で2ビットコインを購入した。
9月9日 1ビットコインを他の仮想通貨と交換した。交換時の他の仮想通貨の時価は60万円だった。
この場合,1ビットコイン(簿価50万円)で,60万円の他の仮想通貨と交換できたことになりますので,10万円が利益となり課税されます。
利益を計算するには保有している仮想通貨の簿価を適正に把握しておく必要がありますが,同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合における簿価の算定は移動平均法により計算します(継続適用を条件に総平均法によることもできます)。
次に所得区分ですが,仮想通貨により生じた所得は原則として雑所得に該当します。
但し,個人で事業を行っている人が,事業用資産として仮想通貨を保有し,これを決済手段として使用している場合には事業所得に該当します。
また,あまり例は無いと思いますが,仮想通貨による利益で生計を立てている場合も事業所得に該当します。
事業所得に該当しますと他の所得(給与所得や不動産所得など)との損益通算が可能となりますが,雑所得の場合は他の所得との損益通算はできません。
よって,仮想通貨により損失が生じた場合であっても税務上は何ら考慮されないケースがほとんどです。
よくある間違いとしては,給与所得者が副業で仮想通貨取引やFX等を行っている場合に,その仮想通貨取引等で生じた損失を給与所得と相殺して確定申告するケースが散見されますが,これは誤りです。
ちなみに,年末調整済みの給与所得者は他の所得が20万円以下の場合,確定申告は不要です。
但し,医療費控除や住宅ローン控除を適用するため確定申告する場合には,他の所得が20万円以下であってもこれを除外することはできません。
仮想通貨は一応通貨ですので商品購入などの決済手段として使用できますが,仮想通貨そのものの価値が変動するため,常に課税の問題と隣り合わせですので注意が必要です。
賃貸不動産における小規模宅地等の特例の見直し
昨年12月14日に平成30年度税制改正大綱が公表され,相続税における小規模宅地等の特例について要件が改正されることになりました。
小規模宅地等の特例とは,個人が,相続又は遺贈により取得した財産のうち,その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち,一定の限度面積までの部分については,相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上,80%又は50%を減額するという制度です。
賃貸不動産等の貸付事業用宅地等の場合は,相続税の申告期限まで事業継続し保有している等の一定の要件を満たせば,200㎡まで50%の評価減を受けることができます。
今回の税制改正大綱では,次のような文章で要件が追加されました。
「貸付事業用宅地等の範囲から,相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等(相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者が当該貸付事業の用に供しているものを除く。)を除外する。」
当該要件が追加されたことにより,相続対策として賃貸不動産を購入しても,購入してから3年以内に相続が開始した場合には,その購入した賃貸不動産に対しては小規模宅地等の特例は適用できなくなります。
但し,もともと不動産貸付業を事業的規模で3年以上行っている者についてはこの要件は適用されません。
つまり,事業的規模で3年以上不動産貸付業を行っていた者が,亡くなる3年内に購入した賃貸不動産であっても小規模宅地等の特例の適用があるということです。
尚,事業的規模か事業的規模以外かの判断基準は,所得税基本通達26-9にある所謂「5棟10室基準」が採用されるものと思われます。すなわちマンションやアパート等の場合は室数がおおむね10室以上,戸建ての貸家の場合はおおむね5棟以上で,事業的規模と判断されます。
これらをまとめますと以下のようになります。
相続開始までの3年間=A期間として,
<A期間に新たに貸付事業を開始した人>
A期間に購入した賃貸不動産について小規模宅地等の特例の適用無し
<A期間以前から貸付事業を行っているが事業的規模ではない人>
A期間に購入した賃貸不動産について小規模宅地等の特例の適用無し
<A期間以前から貸付事業を行っていて事業的規模である人>
A期間に購入した賃貸不動産について小規模宅地等の特例の適用あり
この改正により,相続開始直前にタワーマンション等を購入して一時的に相続税の課税財産を圧縮するというような相続対策は不可となりまた。
少なくともこうした相続対策を検討する場合には3年以上の年数が必要となりましたので,早め早めに対応する必要があります。
この改正は平成30年4月1日以後に開始する相続から適用されます。
但し,平成30年3月31日以前に取得した賃貸不動産については適用されません。
よって,新たに賃貸不動産による相続対策を検討している人で,これから3年以内に相続が開始しそうな場合には,平成30年3月31日までに物件を購入しますと滑り込みセーフとなります。
一括転貸方式における留意点
不動産賃貸業において法人を活用する場合には,同族会社に管理を委託する管理委託方式,同族会社に一括して賃貸し同族会社が第三者に転貸する一括転貸方式,同族会社が直接不動産を所有する自己所有方式がありますが,今回は,一括転貸方式における留意点を整理してみました。
一括転貸方式は,個人が所有している不動産を,その個人又は親族が主宰する同族会社に一括して賃貸するとともに,その同族会社に不動産管理を委託し,同族会社が第三者である入居者へ転貸する方式で,サブリース方式とも呼ばれます。
一般的に,個人から同族会社へ賃貸する場合の賃貸料は空室の有無にかかわらず一定額であり,それ故空室があった場合のリスクは同族会社が負うことになります。
個人で不動産賃貸業を行う場合の家賃収入は全て個人に帰属しますが,一括転貸方式の場合には同族会社を経由して家賃収入が個人へ流れることになりますので,個人と同族会社,同族会社と入居者の家賃に差をつけることにより,同族会社に資金を滞留させることが可能となり,これが個人から法人への所得分散を実現します。これが最大のメリットです。
しかし,行き過ぎた所得分散は当然課税当局とのトラブルの原因になりますので,適正な比率を設定する必要があります。
第三者から収受する家賃収入を100とした場合の同族会社の取り分は,一般的には10%~15%程度,最大でも20%といわれることが多いですが,同族会社が実際に行っている業務内容にもよりますので,管理業務の実態に即して決定します。
そのために,まず,個人と同族会社間において,賃貸借契約兼管理委託契約を締結し,経営上生じる様々な費用を個人と法人のどちらが負担するのかを細かく定めておく必要があります。
具体的には,建物の所有者は個人ですので,建物本体,建物付属設備(受水槽,浄化槽,エレベーター等),構築物(門や塀等)の修繕や保守管理に関する費用は個人負担となり,通常の不動産賃貸における費用,例えば入居時・退去時のクロス,壁,畳,フローリング等の改修費用,室内クリーニング費用,共用部分の水道光熱費や電球交換費用等は同族会社負担となります。
次に,不動産管理会社という位置付けとなる同族会社の留意点ですが,管理の実態を書面で残し第三者に客観的に示すことができるようにしておくことが重要です。
具体的なポイントとしては,①入居者との賃貸借契約においては同族会社が賃貸人となっていること,②入居者からの家賃収入は同族会社名義の預金口座に入金されていること,③修繕や清掃等の通常の不動産賃貸に関する請求書や領収書は同族会社名となっていること,④消防や防災設備の点検業務は同族会社として発注していること,などが挙げられます。
また,日々の不動産賃貸に関する出来事(各業者との連絡や打合せ,入居者からのクレーム,入居希望者の内覧対応,賃貸借契約の締結等)を日頃から日誌としてノート等に書き止めておくことも,同族会社としての管理業務の実態を証明する資料として非常に有効です。
同族会社は上場会社のように所有と経営が分離している法人とは異なり,少数株主により恣意的に税負担を減少させる行為や計算を行うことが可能であるため,とかく課税当局もそのような先入観で税務調査に当たる節があります。所得税法157条の「同族会社の行為計算の否認」規定は伝家の宝刀と言われ,同族会社の行為を無視して課税処分することが可能であるため,この規定に抵触しないよう十分に留意する必要があります。
参考:月刊税理2017年12月号
居住用不動産の譲渡と相続に係る税務上の取扱い
相続を見据えて居住用不動産を生前に譲渡した場合と,相続した後に相続人が譲渡した場合の税務上の取扱いを以下に概観します。
<生前に居住用不動産を譲渡した場合>
1.居住用不動産の譲渡所得の特別控除
自己が居住している居住用不動産を譲渡した場合には所得税及び住民税が課税されますが,居住用不動産を譲渡した場合には所有期間の長短に関わらず,その譲渡所得の金額から最高3千万円を控除することができます。
この特例は,その不動産が今は空き家であっても,或いは他の用途に供した場合であっても,その不動産に居住しなくなってから3年目の年の12月31日までに譲渡すれば適用が受けられます。
2.居住用不動産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
自己が居住している居住用不動産で,その譲渡した年の1月1日において所有期間が10年を超えるものを譲渡した場合には,一般の譲渡所得と区分し,適用される税率が軽減されます。
・一般の長期譲渡所得の場合
所得税15%住民税5%
・軽減税率の長期譲渡所得の場合
長期譲渡所得6,000万円以下 所得税10%住民税4%
長期譲渡所得6,000万円超 所得税15%住民税5%
<相続した後に相続人が居住用不動産を譲渡した場合>
1.相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続又は遺贈により取得した資産を相続開始のあった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合には,納付した相続税額のうち次の算式により計算した金額を,その譲渡した資産の取得費に加算することができます。
資産を譲渡した者が納付した相続税額×A/B
A=譲渡資産の相続税の課税価格
B=資産を譲渡した者の相続税の課税価格
2.被相続人の居住用不動産(空き家)の譲渡所得の特別控除
相続又は遺贈により被相続人の居住用不動産を取得した相続人が,平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に,その居住用不動産を譲渡した場合で一定の要件に該当する場合には,その譲渡所得の金額から最高3千万円を控除することができます。
一定の要件の主なものは次の通りです。
・被相続人が一人で居住していたこと
・昭和56年5月31日以前に建築されたこと
・区分所有マンションでないこと
・相続以後は未利用であること
・相続から3年目の年の12月31日までに売ること
・売却代金が1億円以下であること
<どちらが有利か>
居住用不動産を生前に譲渡した場合と,一旦,相続してから譲渡した場合とでは,税務上どちらが有利となるかはケースバイケースだと思いますが,居住用不動産の売却時期や相続発生のタイミング,各種特例の適用の有無により税額が大きく異なるため,できればどちらも試算してみた方が良さそうです。
例えば,10年超居住した居住用不動産を譲渡した場合には前述した3千万円の特別控除と長期譲渡所得の軽減税率を同時に適用できますが,売却代金から諸経費や税金を差し引いた残額が金銭として相続財産となります。
一方,居住用不動産を相続してから譲渡した場合には,まずは居住用不動産が相続財産となりますが,場合によっては小規模宅地等の特例という最大で8割も評価減が可能となる特例を適用できるかも知れませんし,前述した相続税の一部を取得費として加算することができるかも知れません。
尚,前述した相続財産を譲渡した場合の取得費の特例と,被相続人の居住用不動産(空き家)の譲渡所得の特別控除は選択適用です。

