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賃貸不動産における小規模宅地等の特例の見直し

2018-01-30(火) 10:11:13

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昨年12月14日に平成30年度税制改正大綱が公表され,相続税における小規模宅地等の特例について要件が改正されることになりました。

 

小規模宅地等の特例とは,個人が,相続又は遺贈により取得した財産のうち,その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち,一定の限度面積までの部分については,相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上,80%又は50%を減額するという制度です。

賃貸不動産等の貸付事業用宅地等の場合は,相続税の申告期限まで事業継続し保有している等の一定の要件を満たせば,200㎡まで50%の評価減を受けることができます。

 

今回の税制改正大綱では,次のような文章で要件が追加されました。

貸付事業用宅地等の範囲から,相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等(相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者が当該貸付事業の用に供しているものを除く。)を除外する。

 

当該要件が追加されたことにより,相続対策として賃貸不動産を購入しても,購入してから3年以内に相続が開始した場合には,その購入した賃貸不動産に対しては小規模宅地等の特例は適用できなくなります。

但し,もともと不動産貸付業を事業的規模で3年以上行っている者についてはこの要件は適用されません。

 

つまり,事業的規模で3年以上不動産貸付業を行っていた者が,亡くなる3年内に購入した賃貸不動産であっても小規模宅地等の特例の適用があるということです。

 

尚,事業的規模か事業的規模以外かの判断基準は,所得税基本通達26-9にある所謂「5棟10室基準」が採用されるものと思われます。すなわちマンションやアパート等の場合は室数がおおむね10室以上,戸建ての貸家の場合はおおむね5棟以上で,事業的規模と判断されます。

 

 

これらをまとめますと以下のようになります。

 

相続開始までの3年間=A期間として,

 

 <A期間に新たに貸付事業を開始した人

A期間に購入した賃貸不動産について小規模宅地等の特例の適用無し

A期間以前から貸付事業を行っているが事業的規模ではない人

A期間に購入した賃貸不動産について小規模宅地等の特例の適用無し

A期間以前から貸付事業を行っていて事業的規模である人

A期間に購入した賃貸不動産について小規模宅地等の特例の適用あり

 

この改正により,相続開始直前にタワーマンション等を購入して一時的に相続税の課税財産を圧縮するというような相続対策は不可となりまた。

 

少なくともこうした相続対策を検討する場合には3年以上の年数が必要となりましたので,早め早めに対応する必要があります。

 

この改正は平成30年4月1日以後に開始する相続から適用されます。

但し,平成30年3月31日以前に取得した賃貸不動産については適用されません。

 

よって,新たに賃貸不動産による相続対策を検討している人で,これから3年以内に相続が開始しそうな場合には,平成30年3月31日までに物件を購入しますと滑り込みセーフとなります。