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居住用不動産の譲渡と相続に係る税務上の取扱い

2017-12-02(土) 16:43:15

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相続を見据えて居住用不動産を生前に譲渡した場合と,相続した後に相続人が譲渡した場合の税務上の取扱いを以下に概観します。

<生前に居住用不動産を譲渡した場合>

1.居住用不動産の譲渡所得の特別控除

自己が居住している居住用不動産を譲渡した場合には所得税及び住民税が課税されますが,居住用不動産を譲渡した場合には所有期間の長短に関わらず,その譲渡所得の金額から最高3千万円を控除することができます。

この特例は,その不動産が今は空き家であっても,或いは他の用途に供した場合であっても,その不動産に居住しなくなってから3年目の年の12月31日までに譲渡すれば適用が受けられます。

 

2.居住用不動産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例

自己が居住している居住用不動産で,その譲渡した年の1月1日において所有期間が10年を超えるものを譲渡した場合には,一般の譲渡所得と区分し,適用される税率が軽減されます。

・一般の長期譲渡所得の場合

所得税15%住民税5%

・軽減税率の長期譲渡所得の場合

長期譲渡所得6,000万円以下 所得税10%住民税4%

長期譲渡所得6,000万円超  所得税15%住民税5%

 

<相続した後に相続人が居住用不動産を譲渡した場合>

1.相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続又は遺贈により取得した資産を相続開始のあった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合には,納付した相続税額のうち次の算式により計算した金額を,その譲渡した資産の取得費に加算することができます。

資産を譲渡した者が納付した相続税額×A/B

A=譲渡資産の相続税の課税価格

B=資産を譲渡した者の相続税の課税価格

 

2.被相続人の居住用不動産(空き家)の譲渡所得の特別控除

相続又は遺贈により被相続人の居住用不動産を取得した相続人が,平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に,その居住用不動産を譲渡した場合で一定の要件に該当する場合には,その譲渡所得の金額から最高3千万円を控除することができます。

一定の要件の主なものは次の通りです。

・被相続人が一人で居住していたこと

・昭和56年5月31日以前に建築されたこと

・区分所有マンションでないこと

・相続以後は未利用であること

・相続から3年目の年の12月31日までに売ること

・売却代金が1億円以下であること

 

<どちらが有利か>

居住用不動産を生前に譲渡した場合と,一旦,相続してから譲渡した場合とでは,税務上どちらが有利となるかはケースバイケースだと思いますが,居住用不動産の売却時期や相続発生のタイミング,各種特例の適用の有無により税額が大きく異なるため,できればどちらも試算してみた方が良さそうです。

 

例えば,10年超居住した居住用不動産を譲渡した場合には前述した3千万円の特別控除と長期譲渡所得の軽減税率を同時に適用できますが,売却代金から諸経費や税金を差し引いた残額が金銭として相続財産となります。

 

一方,居住用不動産を相続してから譲渡した場合には,まずは居住用不動産が相続財産となりますが,場合によっては小規模宅地等の特例という最大で8割も評価減が可能となる特例を適用できるかも知れませんし,前述した相続税の一部を取得費として加算することができるかも知れません。

尚,前述した相続財産を譲渡した場合の取得費の特例と,被相続人の居住用不動産(空き家)の譲渡所得の特別控除は選択適用です。