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一般社団法人

2021-10-08(金) 17:19:30

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法人を設立して事業を始めようとするとき,株式会社又は合同会社を選択することが一般的だと思いますが,設立目的や事業内容等によっては一般社団法人という選択肢もあります。

 

一般社団法人というと公益社団法人や公益財団法人が頭に浮かび,自分で設立するというとピンと来ない方がほとんどだと思いますが,公益法人制度が改正された平成20年以降は,誰でも一般社団法人を簡単に設立することができるようになりました。

 

一般社団法人とは,「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立された社団法人のことをいい,設立登記をすることによって成立する法人です。

 

一般社団法人及び一般財団法人(以下,一般社団法人等)が行うことができる事業に何ら制限はありませんので,公益的な事業はもちろん,町内会・同窓会・サークルなどのように構成員に共通する利益を図ることを目的とする事業(共益的な事業)を行うこともできますし,あるいは,普通に商売として事業を行うことも何ら問題ありません。

 

では株式会社と何が違うのかというと,株式会社は「営利」活動を行うのに対し,一般社団法人は「非営利」活動を行うという点です。

この場合における「営利」とは,株式会社においては株主への利益の分配,一般社団法人では社員への利益の分配を意味します。

非営利だから利益を出してはいけないと誤解されやすいのですが,そうではなく,利益を出してもよいが分配してはいけない,ということです。

 

その他の主な相違点は次のとおりです。

一般社団法人 株式会社
設立者の人数 社員2名以上 発起人1名以上
出資金 不要 1円以上
役員の任期 理事2年(短縮可) 取締役2年(10年まで延長可)
原始定款認証 不要 要(印紙4万円)
設立登録免許税 6万円 15万円

 

 

税金の取扱いですが,法人税法では,一般社団法人の類型は次の3つに分かれ,それぞれの法人税の取扱いはそれぞれに掲げるとおりです。

 

1.公益社団法人・公益財団法人

一般社団法人等のうち,公益法人認定法に基づく公益認定を受けた法人をいいます。一般的には事業を始める際の選択肢にはなり得ないのでここでは省略します。

 

2.非営利型法人

公益認定を受けていない一般社団法人等のうち次の①又は②に該当するものは,法人税法上は公益法人等として取扱われ,特定の34種ある収益事業から生じた所得のみが課税対象となり,収益事業以外から生じた所得については課税されません。

 

①非営利型が徹底された法人

剰余金の分配を行わないことや解散時における残余財産を国や地方公共団体等に贈与することを定款に定めている等の要件を満たしている。

 

②共益的活動を目的とする法人

会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的とし,定款に会費の定めがあり,主たる事業として収益事業を行っていないこと等の要件を満たしている。

 

3.非営利型法人以外の法人

公益認定を受けていない一般社団法人等のうち上記2以外のものは,普通法人として取扱われ,株式会社と同様に全ての所得が課税対象となります。

 

このように3つに分類される一般社団法人ですが,商売として事業を始める場合には,ほとんどのケースで上記3に分類されますので,結局のところ税金の取扱いとしては株式会社とほぼ同じということになります。

 

よって,設立目的や事業内容等によっては,「一般社団法人」という名称が持つイメージを重視し,株式会社や合同会社ではなく,あえて一般社団法人を選択するというのも有益である場合があります。

 

生計を一にする親族

2021-09-01(水) 11:52:51

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所得税や相続税を計算する場合において,「生計を一にする親族」がいる場合には税負担が減少することがありますが,そもそも「生計が一である」とはどのような状態をいうのか,意外と判断が難しいこともあります。

 

所得税における配偶者控除や扶養控除は,その配偶者や親族が納税者本人と生計を一にしていること,というのが適用要件の一つになっていますが,実は所得税法には「生計を一にする」の定義規定がありません。

 

定義規定が無い場合は借用概念として他分野での定義を借用するか,あるいは社会通念上の常識で判断することになりますが,それでは判断が難しかろうという配慮か,国税庁は公式見解をHPにおいて公表しています。

 

当該HPによると,「生計を一にする」とは,

日常の生活の資を共にすることをいいます。会社員,公務員などが勤務の都合により家族と別居している又は親族が修学,療養などのために別居している場合でも,①生活費,学資金又は療養費などを常に送金しているときや,②日常の起居を共にしていない親族が,勤務,修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にしているときは,「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

としています。

 

また,所得税基本通達2-47(2)では,「親族が同一の家屋に起居している場合には,明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き,これらの親族は生計を一にするものとする。」としています。

 

ちなみ,国税通則法基本通達第46条関係9及び法人税基本通達1-3-4にも「生計を一にすること」に関する説明があり,所得税基本通達と概ね同様の内容となっています。

 

したがって,「生計を一にする」とは,必ずしも一方が他方を扶養する関係にあることをいうものではなく,また,必ずしも同居していることを要するものではありません。

 

夫婦共働きであっても「生計を一にする」といえますし,単身赴任や留学等で別居していても生活費を常に送金していれば「生計を一にする」といえます(ただし,夫婦共働きの場合は生計は一であっても,所得要件により配偶者控除が適用されるか否かは別問題です)。

 

よくある質問として,年金生活となった両親を納税者本人の扶養控除の対象として良いか?というものがありますが,日常的に両親の生活費を支弁している場合には扶養親族に該当しますが,そうでない場合は「生計を一にしている」とはいえないため扶養親族に該当せず,よって,納税者本人の所得税の計算において扶養控除を適用することはできません。

 

次に相続税についてですが,相続税法にも「生計を一にする」に関する定義規定がありませんので,所得税と同様に,借用概念又は社会通念上の常識で判断することになりますが,前出の各種通達における「生計を一にする」の意義と直ちに同一に解すべきとは認められないと判断した裁決例があることは留意すべきです。

 

相続税において「生計を一にする」がクローズアップされるのは,自宅敷地の評価額が最大で8割減となる小規模宅地等の特例においてですが,核家族化が進んだ現代では相続開始時に被相続人と別居していることがほとんどであり,別居しているが生計は一であるとして無理に小規模宅地等の特例を適用し,課税当局に否認されるケースが頻出しています。

 

特に,病気等で入院している又は介護施設に入所している親を日常的に子が面倒を見ている場合に「生計を一にしている」と主張することが多いのですが,入院又は入所前に同居していない場合には,過去の判決例・裁決例では消極的に判断されています。

 

「生計を一にしている」というためには,日常生活の資を共通にしていることを要し,少なくとも居住費,食費,光熱費その他日常の生活に係る費用の全部又は主要な部分を共通にしていることを要するのですが,多くの場合,確かに子が親の日常的な身の回りの世話をしているものの,親にかかる費用は親の口座から支出するなど,はっきりと費用負担が区別されていて,それが故に生計を一にしていたとは判断されないことが多いです。

 

「生計を一にする」という用語は,各種税法で使用されているものの定義規定が無く,且つ,必ずしも同意義で使用されていないことが課税上のトラブルを惹起させていますので,その判断は慎重に行う必要があります。

 

適格請求書等保存方式(インボイス制度)について

2021-07-27(火) 15:16:43

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令和5年10月1日から,消費税実務に大きく影響を及ぼす適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されます。

インボイス制度が導入されると,何がどう変わるのか,消費税の仕組みとともに概観したいと思います。

 

<消費税の仕組みと仕入税額控除>

消費税は,売上げに係る消費税から,仕入れに係る消費税を控除し,残額がプラスであれば国に納め,マイナスであれば国から還付されます。

この売上げに係る消費税から仕入れに係る消費税を控除することを「仕入税額控除」といいますが,インボイス制度が導入されますと,適格請求書が無い仕入については仕入税額控除ができなくなります。

 

よって,仕入税額控除を行うためには,仕入れの際に相手から必ず適格請求書を受領する必要があります。

現在でも一般的には通常の請求書(区分記載請求書)を受領していると思いますが,令和5年10月1日以後は適格請求書を受領することが重要となります。

 

<適格請求書とその発行事業者>

適格請求書は誰でも発行できるわけではありません。

適格請求書を発行しようとする事業者は,事前に税務署へ申請して適格請求書発行事業者として登録される必要があります。

この登録申請の受付は令和3年10月1日から始まります。

 

適格請求書には現行の区分記載請求書に必要とされる①~⑤の事項に加え,⑥~⑧の事項も記載する必要があります。

①請求書発行事業者の氏名又は名称

②取引年月日

③取引の内容(軽減税率の対象品目である旨)

④税率ごとに区分して合計した対価の額

⑤書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

⑥登録番号

⑦適用税率

⑧税率ごとに区分した消費税額等

 

登録番号は,法人番号を有する事業者は「T+法人番号」となり,それ以外の事業者は「T+13桁の数字(新たな固有の番号)となります。

ここで注意が必要なのが,適格請求書は仕入税額控除を適正に行うという目的があることから,適格請求書を発行しようする事業者は消費税課税事業者であることが前提となります。

免税事業者はそのままでは適格請求書発行事業者になることができません。

 

よって,免税事業者は,インボイス制度導入後,引き続き免税事業者のままでいるのか,課税事業者を選択して適格請求書発行事業者になるのかを選択する必要があります。

免税事業者のままであれば消費税の納税義務はありませんが,適格請求書を発行することができないため,仕入税額控除を行いたいと考える事業者との取引が無くなる可能性があります。

 

なお,仕入税額控除という名称ではありますが,ここでいう「仕入」とは商品や原材料の仕入だけを意味するのではなく,書籍や備品の購入,外注費や飲食代の支払いなど,およそ事業者が行うほぼ全ての消費税課税取引が含まれます。

 

ただし,次のような業種については適用請求書の発行が困難であると考えられるため,適用請求書の交付義務が免除されています。

①公共交通機関による旅客運送(税込3万円未満)

②卸売市場や農協等が委託を受けた農林水産物の譲渡

③自動販売機による商品販売(税込3万円未満)

④郵便切手による郵便サービス(ポスト投函したもの)

 

また,不特定多数の者に対して販売等を行う小売業,飲食店業,タクシー業などに係る取引については,適格請求書に代えて,適格簡易請求書を交付することができます。

適格簡易請求書とは上記8項目のうち⑤(書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称)の記載を省略したものです。

 

インボイス制度の開始まではまだ時間がありますが,間際になって慌てることのないよう,自らが発行する請求書が適格請求書の発行要件を備えているか,予め確認しておくことをお勧め致します。

 

代表者への貸付金,代表者からの借入金

2021-07-09(金) 10:09:59

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同族会社の場合,様々な理由から代表者へ金銭を貸し付けたり,逆に,代表者から金銭を借り入れたりすることがありますが,貸主と借主が実質的に同一人物ですので誰からも催促されず,故に長期間放置されがちです。

 

しかし,期間や利率,返済方法などの条件を決めないまま長期間放置しますと,課税上トラブルになる場合があります。

 

まず,代表者への貸付金ですが,無利息又は通常の金利よりも低金利で貸し付けた場合には,原則として,通常支払うべき利息相当額と実際に支払っている利息との差額が,代表者への役員報酬又は役員賞与として所得税が課税されます。

 

この場合における通常の金利とは,法人が他から借り入れて貸し付けたものであることが明らかな場合には,その借入金の利率により,その他の場合には,貸し付けを行った日の属する年の利子税特例基準割合(租税特別措置法第93条第2項(利子税の割合の特例))による利率をいいます。

ちなみに令和3年の利子税特例基準割合は1.0%です。

 

なお,次のような場合には無利息又は通常の金利より低金利で貸し付けたとしても所得税課税はありません。

①災害,疾病等により臨時的に多額の生活資金を要することとなった場合で,その返済期間として合理的と認められる場合

②法人における借入金の平均調達金利(例えば,当該法人が貸付けを行った日の前年中における借入金の平均残高に占める当該前年中の支払利息の額の割合など合理的に計算された利率)など合理的と認められる利率を定め利息を徴収している場合

③所得税が課税されるべき経済的利益の額がその法人の一事業年度あたり5,000円以下である場合

 

一方,貸し付けた法人側の税務上の取扱いですが,原則として,代表者に対する所得税の取扱いに準ずることになります。

すなわち,代表者に対し所得税課税される場合には法人側は受取利息と役員報酬(又は役員賞与)を認識し,所得税課税されない場合には法人側も課税上の問題無しという取扱いになります。

法人側で役員報酬(又は役員賞与)を認識した場合には法人税の計算上損金とならない可能性が高く,その場合は個人に所得税が,法人に法人税が課税され,ダブルパンチとなります。

 

次に,代表者からの借入金ですが,こちらは貸付金とは異なり,無利息又は通常の金利よりも低金利で借り入れた場合であっても,実務的には課税上問題となることは少ないです。

 

借り入れた法人は,支払うべき利息とそれが免除された債務免除益が相殺され損益が発生しませんし,貸し付けた代表者は,利息を受け取っていませんので原則として所得税課税はありません(注1)。

 

このように,法人税及び所得税ではそれほど問題とならない代表者からの無利息融資ですが,相続の場面においては問題となる場合があります。

 

代表者が法人へ資金を貸し付けたまま相続が発生しますと,その貸し付けた金額のうち未回収部分は貸付金として相続税の課税対象となります。

 

法人がきちんと返済できる場合には貸付金として相続税の課税対象となることは何ら問題ありませんが,回収可能性が低いにもかかわらず相続税が課税されてしまうと,相続人は自己の預金から納税しなければならないという問題が生じます。

 

よって,普段はあまり課税上の問題を生じさせない代表者からの借入金であっても,特に多額にある場合は何もしないまま放置しておきますと思わぬ課税を招くことがありますので,早めに対処しておく必要があります。

 

会社を経営していますと色々なことが生じ,同族会社とその代表者間で金銭の貸し借りをせざるを得ない場面というのは必然的に生じてしまいますが,少しずつでも良いので計画的に返済し,可能な限り互いの債権債務を解消しておくことが賢明と思われます。

 

(注1) 平和事件(最高裁H16.7.20第三小法廷判決):代表者がその経営する有限会社に3,000億円超の無利息融資を実施し,利息相当額の雑所得を代表者に認定し所得税課税された事件。よって,代表者の無利息融資が全く問題ないわけではなく,場合によっては所得税課税されます。

 

自筆証書遺言書保管制度

2021-05-25(火) 09:18:15

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遺言は相続をめぐる紛争を防止するために有用な手段であり,自筆証書遺言は自筆さえできれば遺言者本人のみで作成できますので手軽で自由度の高いものです。

しかし,遺言者本人の死亡後,相続人等に発見されなかったり,一部の相続人等により改ざんされたりする等のおそれが指摘されています。

そこで,自筆証書遺言のメリットを損なわずに問題点を解消するための方策として,自筆証書遺言書保管制度が創設されました。

 

<制度の流れ>

①自筆証書遺言書を作成する。

保管の際に,法務局職員(遺言書保管官)が自筆証書遺言書が民法が定める外形的な要件を充足しているか確認してくれますが,遺言の内容について相談に応じることはありません。

 

②保管の申請をする遺言書保管所を決める。

保管の申請ができる遺言書保管所は,遺言者の住所地,本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所です。

なお,既に他の遺言書を遺言書保管所に預けている場合は,その遺言書保管所となります。

 

③保管の申請をする。

保管の申請は予約制です。

申請書を法務省HPからダウンロード又は法務局窓口で入手し,必要事項を記入します。

そして,次の書類を用意して,予約した日時に遺言者本人が遺言書保管所へ出向いて申請をします。

イ.遺言書

ロ.申請書

ハ.添付書類(本籍記載の住民票など)

ニ.本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)

ホ.手数料(1通3,900円)

 

④保管証を受け取る。

手続終了後,氏名,生年月日,遺言書保管所の名称,保管番号が記載された保管証が交付されます。

 

<遺言者が預けた遺言書を見る場合>

遺言者は,遺言書の閲覧請求をして保管されている遺言書の内容を確認することができます。

遺言書原本の閲覧の場合は保管されている遺言書保管所でしか閲覧できませんが,モニターによる閲覧の場合は全国どこの遺言書保管所でも閲覧することができます。

閲覧請求できるのは遺言者本人のみで,事前に予約が必要です。

モニター閲覧は1回1,400円,原本閲覧は1回1,700円の手数料がかかります。

 

<保管申請の撤回>

遺言者は,遺言書保管所に保管されている遺言書について,保管申請の撤回をすることで遺言書の返還を受けることができます。

 

<相続が発生した場合>

遺言者の死亡後,相続人や受遺者は,遺言者が本制度を利用していることを既に知っている場合には,遺言書の内容の証明書である「遺言書情報証明書」の交付を請求することができます。

相続人等の一人が当該証明書の交付を受けると,遺言書保管官は他の相続人等に対して遺言書を保管している旨を通知することになっています。

また,相続人等は,亡くなった方が本制度を利用しているか不明な場合には,遺言書が保管されているか否かを確認するために「遺言書保管事実証明書」の交付を請求することができます。

それにより遺言書が保管されていることが判明した場合には,遺言書情報証明書の交付請求や遺言書の閲覧を行うことで,遺言書の内容を確認することができます。

 

従来の自筆証書遺言書は,遺言者自身が原本を管理する必要があり,また,相続人等は遺言者の死亡後に家庭裁判所で遺言書の検認を受ける必要がありましたが,本制度では法務局という公的機関が遺言書を管理することで,この検認手続きが不要となりました。

 

自筆証書遺言書保管制度は,費用をかけずに遺言書を作成し,安全に保管したいというニーズを満たす仕組みとして,今後普及していくことが期待されています。