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副業節税にご用心

2023-01-25(水) 16:43:51

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ここ数年,政府が副業を推進していることもあり,日本企業の中でも副業を認めるケースが増加しているようですが,給与所得者によるいわゆる「副業節税」をめぐり,課税当局とトラブルになるケースが増加しているようです。

何が問題視されているのか,以下,概観してみたいと思います。

 

給与所得者Aさんは,令和4年中に副業を開始し,税務署に開業届を提出しました。

もうすぐ令和4年が終わりますが,副業開始初年は収入よりも必要経費の方が多くかかり,マイナスとなりそうです。

 

年明けに確定申告をしますが,副業が「事業所得」に該当する場合には,給与所得と相殺することができるので給与所得から源泉徴収された所得税の還付を受けることができます(これを「副業節税」という)が,副業が「雑所得」に該当する場合には給与所得と相殺できないため,原則としてそのマイナスは無かったものとみなされ,当然,還付はありません。

 

では,何を基準に事業所得あるいは雑所得に該当すると判断するのか,ですが,所得税法においては「事業」から生ずる所得は事業所得に該当し,事業と称するに至らない程度の「業務」から生ずる所得は雑所得に該当すると区分しているものの,「事業」とは何かの明確な定義規定はありません。

政令において「対価を得て継続的に行う事業」が事業所得に該当する,と定めているに過ぎません。

 

この点につき最高裁昭和53年10月31日判決(訟月25巻3号889頁)は,

「『対価を得て継続的に行う事業』に該当するか否かは,結局,一般社会通念に照らして決めるほかないと思われるが,その判断に際しては,営利性・有償性の有無,継続性・反復性の有無のほかに事業としての社会的客観性の有無が問われなければならず,この観点からは,当然にその取引の種類,取引における自己の役割,取引のための人的・物的設備の有無,資金の調達方法,取引に費やした精神的,肉体的労力の程度,その者の職業・社会的地位などの諸点が,検討されなければならない」

としています。

 

よって,その人の営む副業が事業所得あるいは雑所得のどちらに該当するのかは個別に判断するしかありませんが,国税庁は,令和4年10月7日に所得税基本通達35-2(業務に係る雑所得の例示)を改正し,国税庁としての見解を公表しました。

 

注目すべきは新たに付された注意書き部分で,

「事業所得と認められるかどうかは,その所得を得るための活動が,社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。なお,その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え,かつ,事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には,業務に係る雑所得(中略)に該当することに留意する。」

と示されたことです。

 

注意書き前半は,前掲最高裁判決が判示した「社会通念で判断」をそのまま踏襲しておりますが,後半のなお書き部分は,取引を記録した帳簿保存が無い場合には雑所得に該当すると明示しました。

 

ただし,カッコ書きにおいて,その所得に係る収入金額が300万円を超え,かつ,事業所得と認められる事実がある場合を除く,となっていますので,この場合には帳簿保存が無くても原則に立ち返り社会通念で判断することになります。

 

上記通達をまとめると次のようになります。

収入金額 帳簿保存有り 帳簿保存無し
300万円以下 社会通念で判断
300万円超 原則:雑例外:事業(注1)
(注1)事業所得と認められる事実有りの場合

 

副業と称するくらいですから一般的には給与所得者が行う副業は雑所得に該当すると思われますが,仮に事業所得に該当するケースがあるとしても,事業と称するレベルで副業を行って赤字を生むというのも本末転倒であり,その赤字を給与所得と損益通算するというのはそもそも無理があるように思いますので,安易な副業節税にはご注意下さい。

 

不動産所得に係る損益通算の取扱いについて

2022-12-14(水) 15:46:52

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所得税は総合課税を原則としていますので,基本的には個別に計算した各種所得の金額を総合して税額計算を行いますが,各種所得の金額のうち損失が生じているものがある場合には,一定の順序によりその損失の金額を他の所得から差し引くことができます。これを損益通算といいます。

 

所得税法が定める所得は全部で10種類ありますが,損益通算できる損失は,不動産所得,事業所得,山林所得及び譲渡所得の4種類だけです。

 

損益通算には細かいルールがたくさんあるのですが,これらのうち不動産所得に関する主な事項は次のとおりです。

 

<不動産所得に係る損益通算の特例>

不動産所得の金額がマイナスとなった場合において,必要経費に算入した金額のうちに業務の用に供する土地又は土地の上に存する権利を取得するために要した借入金の利子の額があるときは,その損失の金額のうち,次の区分に応じて計算した金額については生じなかったものとみなされます。すなわち損益通算できません。

 

(1)借入金利子>損失金額

損失金額全額が損益通算不可。

不動産収入100 必要経費120(うち借入金利子30)

不動産所得100-120=-20 → 0

損失金額20は全て借入金利子で構成されていると考えられるので損益通算できません。

 

(2)借入金利子<損失金額

損失金額のうち借入金利子部分は損益通算不可。

不動産収入100 必要経費120(うち借入金利子5)

不動産収入100-120=-20 → -15

損失金額20のうち5は借入金利子で構成されているので,5を差し引いた15だけ損益通算できます。

 

区分所有マンション等のように,土地と建物を一括して借入金で取得した場合は,その借入金はまず建物の取得に充てられたものとして計算することができます。

 

不動産所得の損失金額につき損益通算が制限されるようになったのは平成4年からですが,当時,土地は必ず値上がりするものと考えられており,借入金で不動産を購入し利息を支払うことで意図的にマイナスの不動産所得を生じさせ,給与所得と損益通算することで所得税の還付を受けるという節税策が流行したことが背景にあります。

 

<国外中古建物の不動産所得に係る損益通算の特例>

国外中古建物に係る賃料収入がある場合において,その年分の不動産所得の金額の計算上,国外不動産所得の損失の金額があるときは,その損失の金額のうち,その国外中古建物の償却費の額のうち一定の金額については生じなかったものとみなされます。

 

一定の金額の計算方法は,前述の借入金利子の場合と同様で,借入金利子を償却費の額と読み替えて下さい。

 

国外中古建物の不動産所得の損失金額につき損益通算が制限されるようになったのは令和3年からですが,それは,法定耐用年数のほとんどを経過した国外の中古建物を購入して過大な減価償却費を計上することで意図的にマイナスの不動産所得を生じさせ,給与所得と損益通算することで所得税の還付を受けるという節税策が流行したことが背景にあります。

 

米国等では数十年経過した中古建物であっても価値が下がらないため,購入後数年間はこの節税策で所得税の還付を受け,その利益を享受した後にそれほど値下がりしない金額で売却して資金を回収するということが可能でした。

 

<別荘を賃貸したことによる損失の金額>

所有している別荘を自己が利用しない期間に賃貸した場合の不動産所得につき損失が生じた場合には,その損失の金額は「生活に通常必要でない資産」に係る損失の金額であるため生じなかったものとみなされ,損益通算することはできません。

 

源泉徴収制度について

2022-11-17(木) 13:52:15

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所得税は,納税者が自らその年の所得金額とこれに対する税額を計算して,これらを自主的に申告・納付する「申告納税制度」を採用していますが,これと併せて特定の所得については,その所得の支払者がその支払の際に所得税を徴収して国に納付する「源泉徴収制度」を採用しています。

 

源泉徴収制度と申告納税制度の関係を税理士を例にとって説明しますと,税理士に報酬を支払う法人はその支払いの際に,一定の所得税を源泉徴収して国に納付しなければならず(ここまでが源泉徴収制度),そして税理士は,自らが所得金額と税額を計算して確定申告する際に,源泉徴収された所得税を自らが前払いした所得税として認識し,過不足を精算する(ここが申告納税制度)ことで課税関係が完結するという関係です。

 

源泉徴収の対処となる所得を支払う者で所得税を源泉徴収する義務を有する者を「源泉徴収義務者」といいますが,源泉徴収は義務ですのでそれを怠ると当然罰則があります。

 

前述した源泉徴収制度と申告納税制度との関係から,報酬を支払う法人が源泉徴収を失念しても,報酬を受け取った個人が確定申告すれば最終的には国に納付する税額は同額になるので問題ない,と考える向きもありますが,法律の構成上も過去の裁判例からもこういった主張は認められません。

 

源泉徴収義務者が源泉徴収を失念して満額を支払ってしまった場合には,支払いを受けた者から源泉徴収すべきであった金額を返還してもらい,あらためて源泉徴収義務者が国に納付する必要があります。

 

返還を受ける前に源泉徴収義務者が源泉徴収すべきであった金額を国に納付した場合には,支払いを受けた者に対し求償権が発生します。

 

この求償権を行使して源泉徴収すべきであった金額を回収できれば良いのですが,様々な理由から回収できなかった場合には,その求償権に相当する金額が追加で所得を支払ったと認識され,その追加所得に対する新たな源泉徴収義務が生じるといった堂々巡りの状態となってしまいます。

 

実務では逆算して源泉徴収すべき金額を計算するなどして堂々巡りにならないよう対処しますが,いずれにしても源泉徴収義務を怠ると結構厄介です。

 

源泉徴収を失念した場合等を含め,納付すべき源泉徴収による国税を法定納期限までに納付しなかった場合には,原則として,納付すべきであった金額の10%に相当する不納付加算税が課税されます。

また,法定納期限から納付された日までの延滞税も課税されます。

 

ところで,法人経理において,個人に対する支払いについて全て所得税を源泉徴収しているケースをまま見かけますが,「源泉徴収の対象となる所得」とは所得税法に定められた所得だけをいいますので,個人に対する支払いであってもその全てが源泉徴収の対象となるわけではありません。

 

しかし,源泉徴収の対象か否かの判断が難しいため,個人に対する支払いについて全て所得税を源泉徴収してしまっても,支払いを受けた個人からすれば,いずれ確定申告で源泉徴収された所得税を精算するわけであり,源泉徴収義務者である法人からすれば,判断を誤って源泉徴収せずに不納付加算税や延滞税を課税されるといったリスクを回避できるわけですから,こういった処理は実務的な知恵であり,支払いを受ける個人から同意を得ているのであれば何ら問題ないと思われます。

 

源泉徴収が必要となる所得は,上記の報酬・料金以外にも,給与所得,退職所得,公的年金等,利子所得及び配当所得など多岐に渡ります。

 

また,非居住者や外国法人に対しては,不動産の譲渡対価や賃貸料に対しても源泉徴収義務を有する場合があり,特に注意が必要です。

 

一般的に不動産譲渡は金額が大きいため源泉徴収すべき金額も大きくなりますが,これを失念しますと,まずは源泉徴収義務者として源泉徴収すべきであった金額を国に納税し,同額の求償権が発生するものの海外にいる非居住者や外国法人から回収するのは容易ではなく,仮に回収不能となった場合の影響は甚大です。

 

個人や外国法人へ支払いをする際は,常に源泉徴収義務を意識して,不利益を被らないよう注意しましょう。

 

高齢者の財産管理として注目される家族信託

2022-10-05(水) 18:31:37

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超高齢社会となった我が国では高齢者の財産管理に問題が生じてきています。

 

平成29年度高齢者白書によると2025年には5人に1人が認知症になると推計されていますが,認知症になると財産管理及び処分が著しく難しくなります。

例えば,老人ホームに入所するための資金を捻出するために自宅を売却しようと思っても,認知症により判断能力がない場合には売買契約を締結するという法律行為を行うことができません。

また,本人が認知症となってしまったため家族が窓口で預金を引き出そうと思っても,成年後見制度等による本人を代理する権限がない限り,原則として金融機関は引き出しに応じてくれません。

 

よって,本人が意思を伝えられる元気なうちに,財産管理や処分について何らかの対策をしておくことは非常に重要です。

 

<法定後見制度>

法定後見制度は,認知症や知的障害等で本人の判断能力が不十分になった後に,家庭裁判所によって選任された成年後見人等が本人を法律的に支援する制度です。

親族が成年後見人等になれれば一番良いとは思いますが,様々な理由から親族以外の第三者(弁護士や司法書士等)が成年後見人等に選任されるケースの方が多く,その割合は平成30年で約76.8%です(厚労省発表)。

また,法定後見制度はあくまでも判断能力が無い人の生活を守るための制度ですので,基本的には自宅の売却,孫への贈与,投資商品の購入等はできません。

 

<任意後見制度>

第三者に財産を管理されることに抵抗がある場合には任意後見制度を利用すれば親族を後見人に指定することができます。

任意後見制度は,本人の判断能力が十分なうちに,あらかじめ,任意後見人となる人や委任する事務の内容(本人の生活,療養看護及び財産管理)を定めておき,本人の判断能力が不十分になった後に,任意後見人がこれらの事務を本人に代わって行う制度です。

親族や任意後見受任者が,任意後見人を監督する任意後見監督人の選任を家庭裁判所に申し立てて選任されると,任意後見契約の効力が生じ,任意後見人は契約で委任された内容を行うことができるようになります。

任意後見制度は委任契約の一種であり委任する事務の内容は契約によりますので,将来の自宅売却も契約内容に含めておけば,任意後見人は本人に代わって自宅を売却することができます。

 

<家族信託>

法定後見制度は見ず知らずの第三者が財産を管理する上に信託報酬が発生しますし,任意後見制度は親族が任意後見人になれますが,本人の判断能力が十分であるうちは任意後見契約の効力は生じません。

しかし,高齢者の中には判断能力が十分であるうちから財産管理を任せたいという根強いニーズがあり,そこで注目されているのが家族信託です。

家族信託とは,本人が所有する財産を信頼できる家族に託して管理や処分等をしてもらう制度です。

信託といいますととても難しいことのように聞こえるかもしれませんが,実務で行われる家族信託は,例えば次のようにとてもシンプルです。

登場人物は2人だけ

・委託者=財産の所有者=父親

・受託者=財産を託される人=息子

・受益者=利益を受け取る人=父親

ものすごく簡単に説明しますと,家族信託とは,父親が息子に自宅や貸アパートの管理,運用及び処分を任せて(委託し),そこから生じる収益は父親が受け取る,ということを,信託契約という形式にすることです。

一度家族信託を設定しますと,仮に信託期間中に委託者が判断能力を失ったり死亡した場合であっても,そのことが家族信託の終了事由となっていない限り,家族信託は継続されます。また,そのように設計することで遺言と同等の効果を得ることができますし,更に,次の世代まで受益者を連続して指定することも可能です。

家族信託は,工夫次第で様々な財産管理や遺産の分配を可能とする制度です。

インボイス制度の概要の概要

2022-09-12(月) 17:56:11

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2023年(令和5年)10月1日から,いよいよ適格請求書保存方式(インボイス制度)がスタートします。

インボイス制度が始まりますと確実に実務に大きな影響を与えますので,制度の内容をよく理解しておく必要があります。

 

以下,概要の概要をご説明します。

 

インボイス制度とは,適格請求書(インボイス)と呼ばれる一定の要件を満たす請求書を受け取った場合にのみ、消費税の仕入税額控除を認めるという制度です。

 

消費税は,ものすごく大雑把に言えば,売上げに係る消費税から,仕入れに係る消費税を控除して,プラスなら納税し,マイナスなら還付されます。

 

これまでは,原則として,仕入れに係る消費税を支払えば控除することができましたが,インボイス制度が始まりますと,インボイスが無い支払いについては控除することができなくなります。

 

よって,支払先がインボイス発行事業者ではない場合や,インボイス発行事業者であっても適正なインボイスを受け取っていない場合には,消費税の計算上控除できないので消費税の納税額が多くなってしまいます。

 

<インボイスを発行する側の対応>

インボイスを発行できるのはインボイス発行事業者として登録された消費税の課税事業者のみです。

これまで消費税の課税事業者であった法人又は個人事業主は,一般的には2023年(令和5年)3月31日までにインボイス発行事業者の登録申請をして、同年10月スタートのインボイス制度に備えます。

 

一方,消費税の免税事業者であった法人又は個人事業主は,まずはインボイス発行事業者になるか否かを判断する必要があります。

 

消費税の免税事業者は消費税の申告及び納税の必要はないものの,今後,インボイスを発行することができないため取引が減少してしまう恐れがあり,これらのメリット・デメリットを総合的に検討する必要があります。

 

インボイスには,次の7つの事項を記載する必要があります。

①発行者の氏名又は名称

②登録番号

③取引年月日

④取引の内容(軽減税率の対象品目である旨)

⑤税率ごとに区分して合計した対価の額及び適用税率

⑥税率ごとに区分した消費税額等

⑦受領者の氏名又は名称

 

上記のうち,②登録番号,⑤適用税率,⑥税率ごとに区分した消費税額は,新たに記載が必要と追加された項目です。

 

<インボイスを受け取る際の注意点>

インボイス制度がスタートしますと,適正なインボイスが無いと仕入税額控除ができないのですが,今後混乱が予想されるのが従業員の経費精算です。

 

従業員が立て替えた経費を精算する際に,会社は従業員から領収書等を受け取ると思いますが,この領収書等が適正なインボイスでない場合,法人税では損金(必要経費)となっても,消費税では原則として仕入税額控除できません。

 

免税事業者からの領収書はそもそも仕入税額控除できませんが,店舗名称と所在地だけをスタンプで押して手書きで金額が記載されている領収書や飲食店などの手書き領収書は、適正なインボイスでない場合が多いと思われますので要注意です。

 

宛名が従業員の名前となっている領収書については,上記⑦の要件を満たさないのでそのままでは仕入税額控除できません。

 

このような場合には,従業員から立替金精算書(名称は任意)を提出してもらい,立替金精算書+領収書等の保存をもってインボイス制度の要件を満たすこととなります。

 

電子帳簿保存法と相まって、制度スタート前から混乱必至のインボイス制度ですが,適正に経理処理の対応をしないと消費税の納税額に直接影響するだけに,制度スタートまでまだ1年ある今のうちに,余裕をもって適正な経理手順等を確認しておくことが賢明と思われます。