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自筆証書遺言書保管制度

2021-05-25(火) 09:18:15

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遺言は相続をめぐる紛争を防止するために有用な手段であり,自筆証書遺言は自筆さえできれば遺言者本人のみで作成できますので手軽で自由度の高いものです。

しかし,遺言者本人の死亡後,相続人等に発見されなかったり,一部の相続人等により改ざんされたりする等のおそれが指摘されています。

そこで,自筆証書遺言のメリットを損なわずに問題点を解消するための方策として,自筆証書遺言書保管制度が創設されました。

 

<制度の流れ>

①自筆証書遺言書を作成する。

保管の際に,法務局職員(遺言書保管官)が自筆証書遺言書が民法が定める外形的な要件を充足しているか確認してくれますが,遺言の内容について相談に応じることはありません。

 

②保管の申請をする遺言書保管所を決める。

保管の申請ができる遺言書保管所は,遺言者の住所地,本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所です。

なお,既に他の遺言書を遺言書保管所に預けている場合は,その遺言書保管所となります。

 

③保管の申請をする。

保管の申請は予約制です。

申請書を法務省HPからダウンロード又は法務局窓口で入手し,必要事項を記入します。

そして,次の書類を用意して,予約した日時に遺言者本人が遺言書保管所へ出向いて申請をします。

イ.遺言書

ロ.申請書

ハ.添付書類(本籍記載の住民票など)

ニ.本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)

ホ.手数料(1通3,900円)

 

④保管証を受け取る。

手続終了後,氏名,生年月日,遺言書保管所の名称,保管番号が記載された保管証が交付されます。

 

<遺言者が預けた遺言書を見る場合>

遺言者は,遺言書の閲覧請求をして保管されている遺言書の内容を確認することができます。

遺言書原本の閲覧の場合は保管されている遺言書保管所でしか閲覧できませんが,モニターによる閲覧の場合は全国どこの遺言書保管所でも閲覧することができます。

閲覧請求できるのは遺言者本人のみで,事前に予約が必要です。

モニター閲覧は1回1,400円,原本閲覧は1回1,700円の手数料がかかります。

 

<保管申請の撤回>

遺言者は,遺言書保管所に保管されている遺言書について,保管申請の撤回をすることで遺言書の返還を受けることができます。

 

<相続が発生した場合>

遺言者の死亡後,相続人や受遺者は,遺言者が本制度を利用していることを既に知っている場合には,遺言書の内容の証明書である「遺言書情報証明書」の交付を請求することができます。

相続人等の一人が当該証明書の交付を受けると,遺言書保管官は他の相続人等に対して遺言書を保管している旨を通知することになっています。

また,相続人等は,亡くなった方が本制度を利用しているか不明な場合には,遺言書が保管されているか否かを確認するために「遺言書保管事実証明書」の交付を請求することができます。

それにより遺言書が保管されていることが判明した場合には,遺言書情報証明書の交付請求や遺言書の閲覧を行うことで,遺言書の内容を確認することができます。

 

従来の自筆証書遺言書は,遺言者自身が原本を管理する必要があり,また,相続人等は遺言者の死亡後に家庭裁判所で遺言書の検認を受ける必要がありましたが,本制度では法務局という公的機関が遺言書を管理することで,この検認手続きが不要となりました。

 

自筆証書遺言書保管制度は,費用をかけずに遺言書を作成し,安全に保管したいというニーズを満たす仕組みとして,今後普及していくことが期待されています。

 

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