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非居住者への不動産譲渡は要源泉徴収

2019-10-01(火) 10:38:22

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所得税は,自らがその年の所得金額とこれに対する税額を計算し自主的に申告・納税する「申告納税制度」が建前です。

これと併せて特定の所得については,その所得の支払者がその支払の際に所得税を源泉徴収して納付する「源泉徴収制度」が採用されています。

 

この源泉徴収制度で最も一般的なのは会社が支給する給与等です。

給与等の支払者はその支払の際に,所得税を源泉徴収して国に納付しなければなりません。

これを源泉徴収義務といいます。

 

この源泉徴収義務は「義務」ですので,源泉徴収を怠ると罰則があります。

正当な理由なく納期限までに完納されなかった場合には納付すべき金額の10%に相当する不納付加算税が課されます。

 

さて,この源泉徴収制度ですが,会社が支給する給与や報酬及び配当等については比較的周知されていますので所得税を源泉徴収することを失念することは余りないのですが,不動産取引においても源泉徴収義務を有する場合があるので注意が必要です。

 

不動産取引において源泉徴収義務を有する場合とは,非居住者又は外国法人から一定の不動産を購入する場合です。

すなわち,非居住者又は外国法人から国内にある不動産を購入する場合には,その対価の支払をする者はその譲渡対価に対して10.21%の所得税及び復興特別所得税を源泉徴収し,国に納付しなければなりません。

ただし,購入する者が個人であって,自己の居住用に取得する場合で,かつ,対価の額が1億円以下である場合には源泉徴収の必要はありません。

 

ところで,所得税法における居住者と非居住者の区分ですが,居住者とは「国内に住所を有し,又は現在まで引き続き1年以上居所を有する個人」をいい,非居住者とは,「居住者以外の個人」をいいます。

また,住所は,個人の生活の本拠をいい,生活の本拠かどうかは客観的事実によって判定します。

したがって,居住者か非居住者であるかについて国籍は関係ありませんし,住所がどこであるかについて住民票の有無は関係ありません。

住民票が日本に無い外国人であっても,日本に1年以上居住していれば居住者に該当することはありますし,反対に,住民票が日本にある日本人であっても,客観的事実に基づく住所が外国にある場合には非居住者に該当することもあります。

 

一般的に不動産取引をする場合,仲介業者を介することが多く,プロでない限り売主と買主が直接やり取りすることはまれですが,仲介業者が必ずしも源泉徴収制度を承知しているとは限りません。

もし仮に,仲介業者が源泉徴収制度を知らず,売主が非居住者であるにもかかわらず売買代金の全額を売主に渡してしまったら,源泉徴収義務違反となり,譲渡対価の10.21%を買主が国に納税しなければなりません。

加えて,その源泉税の10%に相当する不納付加算税も課税されます。

結果として二重に支払ったこととなる源泉税については,当然,売主に返金請求することはできます。

できますが,相手が返金してくれるか否かはわかりません。

売った不動産が居住用であれば売主は引っ越しするでしょうし,それが外国であれば連絡を取ることも容易ではありません。

運良く連絡が取れたとしても,返金を拒否されたら,現実的には取立ては難しいです。

 

源泉徴収を失念した場合であっても,源泉税の本来の「負担者」である売主から国が直接徴収すれば良いという意見を耳にしますが,法律上の「納税義務者」はあくまでも買主ですので,国が売主に課税処分をすることはありません。

 

東京五輪以降,不動産価額が縮小すると予想する声も大きく,非居住者や外国法人が多くの不動産を売却するかも知れません。

そのタイミングで不動産を購入する場合には,くれぐれも源泉徴収義務にご注意下さい。

 

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