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養子縁組と相続税

2015-01-22(木) 19:43:40

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 いよいよ平成27年1月から,相続税の基礎控除引下げ&税率の引上げとなりました。

 これにより,これまで相続税が課税されてなかった層にも課税されるようになり,大都市の場合,「自宅+多少の金融資産」を相続しただけで,相続税が課税される可能性が高くなります。

 

 そんな中,最近,相続税を減少させるシンプルな方法として注目されているのが「養子縁組」です。

 

 養子縁組には「普通養子」と「特別養子」の2種類の制度があり,通常,相続対策として用いられるのは専ら普通養子です。

 普通養子制度は,20歳以上の養親になろうとする者と,養子になろうとする者の合意のみで行うことができ,また,婚姻と同様に両当事者の合意による離縁も認められています。

 養子縁組をしますと養親の子が増えます。民法上は,養子縁組は何人とでも行えます。血縁上の実子と養子との間に相続や扶養等につき法律上の差異はありません。

 また,よく誤解されがちですが,養子縁組を行っても実の親との親子関係は消滅しませんので,養子縁組により養親の子になっても,実の親の相続人であることに変わりはありません。

 

 養子縁組をしますと,次の4つの観点から相続税の節税に繋がります。

 

 1.基礎控除額の増加

 遺産に係る基礎控除額は,「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算するのですが,養子縁組をすることにより法定相続人が増えるため基礎控除額が増加し,結果として相続税が減少します。

 ただし,基礎控除額を計算する上においては養子の数に制限があり,何人養子がいても,被相続人に実子がある場合には1人,被相続人に実子がない場合には2人までしか法定相続人にカウントされません。

 そうしませんと,養子縁組を利用して理論上は無限に法定相続人の数を増やすことができてしまうからです。

 

 2.法定相続人の増加による累進税の緩和

 相続税は超過累進税率を採用しているため,法定相続人が増えることで1人当たりの課税価格が減少し,全体の累進税率が緩和され,結果として相続税の総額が減少します。

 ただし,相続税を計算する上において,養子の数が制限されるのは基礎控除と同様です。

 

 3.生命保険金・退職手当金の非課税限度額の増加

 生命保険金・退職手当金の非課税限度額は,それぞれ「500万円×法定相続人の数」で計算しますので,法定相続人が増えますと非課税限度額が増えます。

 ただし,相続税を計算する上において,養子の数が制限されるのは基礎控除と同様です。

 

 4.相続一代飛ばしによる相続税負担の軽減

 孫を養子にした場合,その養子に財産を相続させた分だけ相続を一代飛ばすことができます。

 ただし,養子に限らず孫が相続しますと,通常の相続税額の2割増で納税する必要があります(2割加算制度)。

 しかし,2割加算制度の対象になったとしても,上記節税効果がなくなるわけではありませんので,節税効果と2割加算とを比較し,孫にどれくらいの財産を相続させるのがベストであるか充分に検討することが重要です。

 

 実務上の留意点

 孫が複数いる場合には,養子縁組する孫としない孫がもめないように配慮する必要があります。また,養子縁組により法定相続人が増えることを歓迎しない他の法定相続人がいることもありますし,孫を養子にしますと結果として親子で兄弟となりますので,当事者はもちろんのこと関連する方々の理解が必要となります。

 単に相続税対策ということだけではなく,孫が次世代の後継者として予定されている場合には,養子縁組は是非とも活用したい制度であると言えます。