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修繕費か資本的支出か

2015-02-26(木) 20:39:08

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 自社使用であっても賃貸用であっても,建物を所有していますと大なり小なり毎年何らかの修繕を行うことがあると思いますが,その修繕に係った費用が支払った時点の一時の費用となるのか,或いは減価償却資産として数年間の費用となるのか,それにより税金の額は大きく変わります。

 上記に関する注目すべき裁決事例が公表されましたので,今回はそれをご紹介します。

<システムキッチンの取替工事費用 H26.04.21裁決>

 不動産貸付業を営むAは,賃貸用マンションの流し台等の取替工事に係る費用約500万円を修繕費として不動産所得の必要経費に算入して申告した。

 後日,税務調査があり,課税庁は,当該費用は減価償却資産の新規取得に該当するため,適正に計算した減価償却費約33万円だけが必要経費となり,残りの約467万円は翌年以降,順次,減価償却費として必要経費に算入することになる,よって,467万円は経費の過大計上となるため修正が必要であり,追徴税額は約150万円になると主張した。※金額は説明上,設定した仮の金額です。

納税者Aの主張の概要

 本件建物は築後17年が経過し,各設備の劣化も目立つようになっており,賃料も当初と比較して下がり,空室も目立つ状況にあった。

 本件修繕工事は,居住用機能を回復させるための工事であり,建物の躯体に影響を与えるものではない。

 また,建物の使用可能期間を延長させることもなければ,その価値を高めるものでもない。更に,修繕後の賃料の引上げも行っていないため,よって,修繕の目的は現状維持することである。

課税庁の主張の概要

 本件修繕工事は,見積書等によれば,既存の資産を解体し,単価の違いはあるものの,新たにシステムキッチン,洗面化粧台及びユニットバス等の資産の取付け並びに既存の資産の解体等に係る費用であると認められる。

 また,Aは,流し台等を取替えないと一世帯の賃貸機能が満たされないため,空室になったところから新品のものへ取替えを行った旨主張しているが,それはつまり本件修繕工事が,通常必要と考えられる修繕費用ではなく,劣化した既存の資産を新品に取替えることによって,建物本体の価値を高めるものであると認められる。

 従って,本件修繕費用は,本件建物に設置された内部造作のための資本的支出に該当し,通常の維持管理のための修繕費には該当しない。

国税不服審判所の判断

 建物に対する修理,改修等のための費用が,修繕費或いは資本的支出として新たな減価償却資産の取得のいずれに該当するかについては,その支出した金額の内容及び支出効果の実質によって判断するのが相当であり,本件修繕工事が本件建物の住宅の居住用機能を回復させる目的があったとしても,本件建物の規模との比較のみによって判断するものではない。

 そして,本件修繕工事の内容は,既存の台所及び浴室を全面的に取壊し,新たなシステムキッチン及びユニットバスを設置し,台所及び浴室を新設したものであり,本件修繕費用は,それらの台所及び浴室を新設したことによって本件建物の価値を高め,又はその耐久性を増すことになると認められ,本件建物に対する資本的支出に該当するから,修繕費とされる通常の維持管理のための費用とは認められない。

本件のポイント

 賃貸用マンションの場合,壁紙や鍵の交換,エアコンやガスコンロ等を単体で交換,修理するような費用は,経年劣化を原状回復するための費用であり,修繕費として支払った時点の一時の費用で良いと思いますが,システムキッチンやユニットバスを交換した場合は,機能も大幅に向上しているでしょうし,経年劣化の回復とか,単なる交換とは呼べず,やはり資本的支出として減価償却資産に該当するという判断が常識的であるように思います。