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相続対策に向かない成年後見制度

2013-03-20(水) 23:34:23

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成年後見制度とは,認知症・知的障害者・精神障害等によって物事を判断する能力が十分ではない方(以下,「本人」という)について,本人の権利を守る援助者(「成年後見人」等)を選ぶことで,本人を法律的に支援する制度です。

 

成年後見制度を利用する場合,まずは家庭裁判所に申立てをする必要があります。

申立てをすることができる者は,本人・配偶者・四親等内の親族等です。

 

家庭裁判所はこの申立てがあった場合,最も適任と思われる者を成年後見人に選任しますが,必ずしも申立て時に挙げられた候補者から選任するとは限らず,候補者以外の弁護士,司法書士,税理士等の専門家を選任することもあります。

 

よって,一般的には本人の親族を成年後見人の候補者として申立てすると思いますが,全く関係のない第三者が成年後見人として選任されることも有り得ます。

 

選任された成年後見人は,本人の意思を尊重し,本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら,本人に代わって財産を管理したり必要な契約を結んだりします。

本人の利益のために,本人の財産を適切に維持し管理する義務を負うのですが,この財産維持管理義務が相続対策の上ではネックになります。

 

例えば,資産家の子がその資産家の成年後見人となった場合,多額に相続税が課税されそうなので生前に贈与を受けようと思っても,それは子の為であって本人の為ではないので認められません。

土地を担保に銀行からお金を借りて賃貸不動産を建築しようと思っても,借金をする行為が本人の為ではないとして認められません。

過去には成年後見人が本人の財産を費消しているとして,家庭裁判所が業務上横領で告発した事例もあります。


また,家庭裁判所の「成年後見制度」というパンフレットには,「成年後見人が本人の財産を投機的に運用することや,自らのために使用すること,親族などに贈与・貸付けをすることなどは,原則として認められません。」と記載してあります。

 

このように,成年後見制度での財産管理とは,現状のままで固定することです。


不動産を多数所有している資産家ならば,不動産売買による資産の組換え,借入による相続財産の圧縮,生前贈与等の対策は必須ですから,成年後見の申立てをしてしまうと,積極的な相続対策は事実上できなくなってしまいます。

 

成年後見制度を利用する場合は,それによるメリット・デメリットを充分に検討する必要があります。