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贈与税の配偶者控除は相続税の節税に応用できます。
相続税を計算する場合において、その亡くなった方(被相続人)から亡くなる3年前に贈与により取得した財産がある場合には、その価額を相続税の課税価格に加算して相続税額をいったん計算し、そこから既に納めた贈与税額を控除することになっています。
ところで、贈与税には配偶者控除というのがありまして、その内容はといいますと以下の通りです。
婚姻期間20年以上の配偶者に対し、居住用不動産又は居住用不動産を購入するための金銭を贈与した場合には、贈与税の課税価格から2,000万円を控除することができる。
そうすると、相続開始年だと贈与税の配偶者控除が受けられないのか、という疑問が生じます。
例えば、今年の1月に夫から自宅を贈与され、贈与税の配偶者控除を受けるつもりでいたところ、3月に夫が亡くなってしまったようなケース。
このような場合、相続開始前3年以内の贈与は相続税の課税価格に算入されるため、贈与税の配偶者控除の適用を受けることができないのか???
答えは、上記のような場合であっても贈与税の配偶者控除の適用を受けることができます。
相続税の申告書に贈与税の配偶者控除の適用を受ける旨を記載して、相続税の申告書とは別に贈与税の申告書を提出すればOKです。
そして、これは応用すれば相続税の節税に使えます。
灯台もと暗しではないですが、税理士でも意外と気付かない方もいらっしゃいます。
実行税率だけを議論する不思議
来年度の税制改正論議が新聞の紙面を盛んに賑わせています。
その中の主要項目の一つとして取り上げられている法人税の実効税率の引き下げ論。
法人税の税率を下げることが、日本経済の活性化にいくばくかでも貢献するのであればもちろん賛成です。
しかし、実効税率を下げろと主張する方々の議論を聞いていると、その論調にいささか説得力の無さを感じます。彼らの多くは、諸外国と比較して日本の税率は高い、だから外国から日本に進出しようとする企業が少ない、あるいは、日本企業の国際競争力を妨げている、と主張する。
こういった論調は間違ってはいないと思いますが、実は、実効税率を下げるだけでは日本に進出する企業は増えないでしょうし、日本企業の国際競争力もたいして強くなりません。
その理由は以下の通りです。
例えば、Aという国にある企業の今期の収入が1,000、経費が800だったとします。
会計上は差し引き200が利益ということになりますが、この200に対していきなり税率を乗じて税金を計算するわけではありません。
国により政策的に、800のうち700しか法人税を計算する上で経費とは認めない、あるいは600しか経費とは認めない、ということがあるわけです。
日本であれば、交際費や寄付金はある一定の限度額が設けられていて、支出した金額の全てが法人税を計算する上での経費となるわけではありません。
交際費について、フランスは全額経費計上が可能ですが、アメリカは50%だけ経費計上が可能、ドイツは70%が可能、というように国によって違いがあるわけです。
(ちなみに日本は大企業は全額経費計上不可、中小企業は600万円までの90%だけが経費計上可能でそれを超える部分は不可となっています。)
このように、同じ金額の所得であっても、税率を乗じる前の段階で国によって違いがあるのですから、そこから議論を始めないと何の意味もないわけです。
しかし、こういうことをマスコミはあまり報道しませんし、代議士でこういったことに言及しているのを聞いたことは少なくとも私はありません。
民主党政権になってから増税ばかりの税制改正が目立ちますが、折角の減税論議なのでしっかりと検討して頂きたいと思います。
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22年税制改正 小規模宅地等の減額の具体例(その4)
<承前>
改正前は、被相続人が不動産貸付業を行っていた宅地(賃貸ビルなどの敷地)については、誰が相続しようとも200㎡まで50%の評価減が可能でした。
改正後は、その宅地を相続した人がその不動産貸付業を引き継いで、申告期限までその宅地を保有していない限り小規模宅地等の減額は適用できなくなりました。
納税資金がないから賃貸ビルを売却してその代金を納税資金に充当しようとすると、小規模宅地等の減額が適用できなくなりますので要注意です。
<具体例>
父親が賃貸ビルを保有していた。土地200㎡で相続税評価額1億円と仮定
↓
父死亡
↓
納税資金が無いのでこの賃貸ビルを売却して、その代金を納税に充てた。
↓
相続税の申告期限を迎えた。
改正前は不動産貸付業を継続する人がいなくても小規模宅地等の減額が適用できました。
1億円×50%=5,000万円が評価額から減額された。
改正後は不動産貸付業を継続しない場合、小規模宅地等の減額の適用なし。
よって1億円の評価額のまま。評価額にして5,000万円の実質増税です。
納税資金があるかどうかも含め、事前のタックスプランニングが重要です。
22年税制改正 小規模宅地等の減額の具体例(その3)
<承前>
その2のケースで、宅地を相続した息子が相続開始前3年以内に自己又はその配偶者名義の家屋に居住したことがない場合(要するに、亡くなった親とは別に暮らしていたけれどもまだ自宅を購入しておらず賃貸マンション等に居住していた場合)には、「特定居住用宅地等」に該当し、240㎡まで80%の小規模宅地等の減額が可能です。
<具体例>
被相続人は夫に先立たれ、同居親族もなく1人で居住していた。
その家屋と土地を相続した息子は、親と別に暮らしているが自宅はまだ購入しておらず賃貸生活。
家屋の評価額1,000万円、土地の評価額9,000万円(240㎡)と仮定
改正前は240㎡まで小規模宅地等の減額の適用あり。
土地9,000万円×240㎡/240㎡×80%=7,200万円が評価額から減額されます。
よって評価額の合計は家屋1,000万円+土地(9,000万円-7,200万円)=2,800万円
改正後も改正前と同様です。
但し、相続した宅地を申告期限前に売却してしまうと「特定居住用宅地等」に該当しなくなり、
小規模宅地等の減額は適用できなくなります。
※改正前は居住用宅地に対する評価減は50%と80%の2種類がありましたが、改正後は80%減額だけと
なりました。
「特定居住用宅地等」に該当すれば80%減額がありますが、該当しなければ評価減は1円もなしです。
22年税制改正 小規模宅地等の減額の具体例(その2)
<承前>
改正前は被相続人が居住していた宅地については、誰が相続しても200㎡まで50%の減額が可能でした。
改正後は、「特定居住用宅地等」の要件を満たさない者が取得した宅地については、小規模宅地等の減額は適用されなくなりました。
<具体例>
被相続人は夫に先立たれ、同居親族もなく1人で居住していた。
その家屋と土地を相続した息子は既に自宅を所有してその家族とともに生活している。
家屋の評価額1,000万円、土地の評価額9,000万円(240㎡)と仮定
改正前は誰が相続しても小規模宅地等の減額が適用できました。
土地9,000万円×200㎡/240㎡×50%=3,750万円が評価額から減額された。
よって評価額の合計は家屋1,000万円+土地(9,000万円-3,750万円)=6,250万円
改正後は、「特定居住用宅地等」の要件を充足しないため小規模宅地等の減額の適用なし。
よって評価額は家屋1,000万円+土地9,000万円=1億円
評価額にして3,750万円の実質増税です。
※特定居住用宅地等
被相続人が居住していた宅地等で、その配偶者か、次のいずれかの要件を満たすその被相続人の
親族が 相続又は遺贈により取得したものをいいます。
・その親族が、その被相続人と同居していた者であって、その土地を相続してそのまま居住し続けること。
・被相続人に配偶者又は同居親族がいない場合であって、自己所有の不動産を持たずに別に居住して
いた親族(息子など)が、その土地を相続して、相続税の申告期限までにその土地を保有していること。
(注意)
上記はわかりやすくするために条文の用語とは異なる言葉を使用しています。