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高齢者の財産管理として注目される家族信託

2022-10-05(水) 18:31:37

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超高齢社会となった我が国では高齢者の財産管理に問題が生じてきています。

 

平成29年度高齢者白書によると2025年には5人に1人が認知症になると推計されていますが,認知症になると財産管理及び処分が著しく難しくなります。

例えば,老人ホームに入所するための資金を捻出するために自宅を売却しようと思っても,認知症により判断能力がない場合には売買契約を締結するという法律行為を行うことができません。

また,本人が認知症となってしまったため家族が窓口で預金を引き出そうと思っても,成年後見制度等による本人を代理する権限がない限り,原則として金融機関は引き出しに応じてくれません。

 

よって,本人が意思を伝えられる元気なうちに,財産管理や処分について何らかの対策をしておくことは非常に重要です。

 

<法定後見制度>

法定後見制度は,認知症や知的障害等で本人の判断能力が不十分になった後に,家庭裁判所によって選任された成年後見人等が本人を法律的に支援する制度です。

親族が成年後見人等になれれば一番良いとは思いますが,様々な理由から親族以外の第三者(弁護士や司法書士等)が成年後見人等に選任されるケースの方が多く,その割合は平成30年で約76.8%です(厚労省発表)。

また,法定後見制度はあくまでも判断能力が無い人の生活を守るための制度ですので,基本的には自宅の売却,孫への贈与,投資商品の購入等はできません。

 

<任意後見制度>

第三者に財産を管理されることに抵抗がある場合には任意後見制度を利用すれば親族を後見人に指定することができます。

任意後見制度は,本人の判断能力が十分なうちに,あらかじめ,任意後見人となる人や委任する事務の内容(本人の生活,療養看護及び財産管理)を定めておき,本人の判断能力が不十分になった後に,任意後見人がこれらの事務を本人に代わって行う制度です。

親族や任意後見受任者が,任意後見人を監督する任意後見監督人の選任を家庭裁判所に申し立てて選任されると,任意後見契約の効力が生じ,任意後見人は契約で委任された内容を行うことができるようになります。

任意後見制度は委任契約の一種であり委任する事務の内容は契約によりますので,将来の自宅売却も契約内容に含めておけば,任意後見人は本人に代わって自宅を売却することができます。

 

<家族信託>

法定後見制度は見ず知らずの第三者が財産を管理する上に信託報酬が発生しますし,任意後見制度は親族が任意後見人になれますが,本人の判断能力が十分であるうちは任意後見契約の効力は生じません。

しかし,高齢者の中には判断能力が十分であるうちから財産管理を任せたいという根強いニーズがあり,そこで注目されているのが家族信託です。

家族信託とは,本人が所有する財産を信頼できる家族に託して管理や処分等をしてもらう制度です。

信託といいますととても難しいことのように聞こえるかもしれませんが,実務で行われる家族信託は,例えば次のようにとてもシンプルです。

登場人物は2人だけ

・委託者=財産の所有者=父親

・受託者=財産を託される人=息子

・受益者=利益を受け取る人=父親

ものすごく簡単に説明しますと,家族信託とは,父親が息子に自宅や貸アパートの管理,運用及び処分を任せて(委託し),そこから生じる収益は父親が受け取る,ということを,信託契約という形式にすることです。

一度家族信託を設定しますと,仮に信託期間中に委託者が判断能力を失ったり死亡した場合であっても,そのことが家族信託の終了事由となっていない限り,家族信託は継続されます。また,そのように設計することで遺言と同等の効果を得ることができますし,更に,次の世代まで受益者を連続して指定することも可能です。

家族信託は,工夫次第で様々な財産管理や遺産の分配を可能とする制度です。

 

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