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短期前払費用を活用した節税の盲点

2012-03-24(土) 14:39:02

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短期前払費用は,決算期末直前に対応可能な節税方法として広く知られていますが,その実行が容易であるために本来は注意すべき点を忘れがちです。
そこで,今回は短期前払費用の留意点を確認します。

3月末決算の法人が3月中に4月分の家賃や保険料を支払った場合,会計上は,支払った3月の費用とはせずに4月の費用とするのが原則です。
但し,重要性が乏しいものについては例外的な処理が認められており,法人税基本通達2-2-14では次のように規定されています。

「前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう)の額は,当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが,法人が,前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において,その支払った額に相当する金額を継続して支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは,これを認める。」

要するに,本来は前払費用であるが,向う1年以内のものであれば継続適用を条件として支払った時に費用計上しても良いということです。
これを活用して,決算期末直前に向う一年分の事務所家賃や保険料などを一気に支払い,その支払った金額の全部を費用に計上することで利益を圧縮し,その結果,税額を抑えることができます。

以下,留意点ですが,まず,継続適用を前提条件としていますので,家賃や保険料を年払いにした場合,毎年同時期に同じ金額を支出する必要があります。年払いと月払いをコロコロ変更することはできませんので,資金繰りを充分に検討する必要があります。

次に,一定の契約に基づいている必要がありますので,2月まで月払いであった家賃を,契約変更をしないで一方的に3月から年払いにしたとしても短期前払費用の取扱いはできません。

次に,継続的に役務の提供を受けるために支出した費用である必要があるのですが,継続的な役務の提供とは「等質等量であるサービス」のことをいいます。
等質等量であるサービスには,土地や建物の賃借料,生命保険や損害保険の支払保険料,機械装置の保守料などが該当します。
一方,月刊誌の購読料はサービスではなく月刊誌の購入代金を前払いしたに過ぎないため等質等量のサービスには該当しません。
また,来期に実施される社員旅行のツアー代も,一時的な費用であって継続的サービスではないため等質等量のサービスには該当しません。
弁護士や税理士の顧問料なども毎月の報酬額は同一ですが,月によってサービスの内容が異なるため等質等量のサービスには該当しません。

短期前払費用を活用した節税は,決算期末直前に急場をしのぐには極めて使い勝手の良い節税方法ですが,上記のような留意点を充分に検討しておかないと税務調査で否認されがちです。活用する場合には注意しましょう。