HOME >BLOG

BLOG

通常の贈与と教育資金の一括贈与

2022-06-03(金) 18:03:00

カテゴリー:

個人からの贈与により取得した財産は原則として贈与税の課税対象となりますが,扶養義務者相互間における生活費又は教育費に充てるためにした贈与で通常必要と認められるものについては,贈与税は課税されません(ちなみに法人からの贈与により取得した財産は贈与税の課税対象とはなりませんが,一時所得として所得税の課税対象となります)。

 

これは,日常生活に通常必要となる費用を扶養義務に基づいてした贈与についてまで課税するのは適当でないからです。

 

扶養義務者とは,次の者をいいます。

①配偶者

②直系血族及び兄弟姉妹

③家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族

④三親等内の親族で生計を一にする者

なお,扶養義務者に該当するか否かは,贈与があった時の状況により判断します。

 

通常必要と認められるものとは,被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案し,社会通念上適当と認められる範囲の財産をいいます。

よって,一律に判断されるものではなく,人や時代により異なります。

 

贈与税が非課税となる生活費とは,その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除く)をいい,治療費,養育費その他これらに準ずるものを含みます。

ただし,保険金や損害賠償金により補填される部分の金額を除きます。

なお,具体的にどの程度のものまで生活費として認められるかについては,一律に決めることは適当でないので,個々の事情に即して社会通念に従って判断すべきものとされています。

 

次に,贈与税が非課税となる教育費とは,被扶養者の教育上,通常必要と認められる学資,教育費,文具費等をいいます。

義務教育費に限りませんので,幼稚園,高校,大学,各種学校等の義務教育以外の教育に要する費用も広く含まれます。

 

贈与税が非課税となる生活費又は教育費は,それが必要となる都度,直接これらの用に充てられるためにされた贈与である必要があります。

生活費又は教育費の名義で取得した財産であっても,これを預貯金とした場合や株式の買入代金又は家屋の買入代金等に充当したような場合には,贈与税が非課税となる生活費又は教育費には該当しません。

 

なお,離婚又は認知があった場合において,その離婚又は認知に関して子の親権者又は監護者とならなかった父又は母から,生活費又は教育費に充てるためのものとして子が一括して取得した金銭等については,その額がその子の年齢その他一切の事情を考慮して相当と認められる場合に限り,通常必要と認められるものとして取り扱われます。

 

以上のとおり,父母や祖父母が子の生活費又は教育費をその必要となる都度負担してあげても(贈与しても),通常必要と認められる範囲内であれば贈与税が課税されることはないのですが,教育費については将来にわたり多額の資金が必要であり,一括贈与のニーズも非常に高いです。

 

そこで,高齢者が保有する資産を若い世代へ移転させることで,子供の教育資金の早期確保を進め,多様で層の厚い人材育成に資するとともに,教育費の確保に苦心する子育て世代を支援し,経済活性化に寄与することを期待するという趣旨で,平成25年に「教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」という制度が創設され,今に至っています。

 

制度の概要は次のとおりです。

・贈与者:直系尊属(祖父母等)

・受贈者:30歳未満の孫等(前年の合計所得金額1,000万円以下の者に限る)

・非課税額:孫等ごとに1,500万円(学校以外の者に支払われるものは500万円)

・贈与方法:教育資金管理契約に基づき銀行等へ預け入れる方法等

・管理方法:贈与者が受贈者の銀行口座等へ教育資金を預け入れる→受贈者は教育資金の領収書等を銀行へ提出する→銀行は受贈者へ教育資金を払い出す

 

受贈者が30歳(在学中の場合は最高40歳)に達する等一定の事由に該当した日に口座は終了し,その時点で残高があれば贈与税が課税されます。

 

※ブログの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。