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不動産所得に係る損益通算の取扱いについて

2022-12-14(水) 15:46:52

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所得税は総合課税を原則としていますので,基本的には個別に計算した各種所得の金額を総合して税額計算を行いますが,各種所得の金額のうち損失が生じているものがある場合には,一定の順序によりその損失の金額を他の所得から差し引くことができます。これを損益通算といいます。

 

所得税法が定める所得は全部で10種類ありますが,損益通算できる損失は,不動産所得,事業所得,山林所得及び譲渡所得の4種類だけです。

 

損益通算には細かいルールがたくさんあるのですが,これらのうち不動産所得に関する主な事項は次のとおりです。

 

<不動産所得に係る損益通算の特例>

不動産所得の金額がマイナスとなった場合において,必要経費に算入した金額のうちに業務の用に供する土地又は土地の上に存する権利を取得するために要した借入金の利子の額があるときは,その損失の金額のうち,次の区分に応じて計算した金額については生じなかったものとみなされます。すなわち損益通算できません。

 

(1)借入金利子>損失金額

損失金額全額が損益通算不可。

不動産収入100 必要経費120(うち借入金利子30)

不動産所得100-120=-20 → 0

損失金額20は全て借入金利子で構成されていると考えられるので損益通算できません。

 

(2)借入金利子<損失金額

損失金額のうち借入金利子部分は損益通算不可。

不動産収入100 必要経費120(うち借入金利子5)

不動産収入100-120=-20 → -15

損失金額20のうち5は借入金利子で構成されているので,5を差し引いた15だけ損益通算できます。

 

区分所有マンション等のように,土地と建物を一括して借入金で取得した場合は,その借入金はまず建物の取得に充てられたものとして計算することができます。

 

不動産所得の損失金額につき損益通算が制限されるようになったのは平成4年からですが,当時,土地は必ず値上がりするものと考えられており,借入金で不動産を購入し利息を支払うことで意図的にマイナスの不動産所得を生じさせ,給与所得と損益通算することで所得税の還付を受けるという節税策が流行したことが背景にあります。

 

<国外中古建物の不動産所得に係る損益通算の特例>

国外中古建物に係る賃料収入がある場合において,その年分の不動産所得の金額の計算上,国外不動産所得の損失の金額があるときは,その損失の金額のうち,その国外中古建物の償却費の額のうち一定の金額については生じなかったものとみなされます。

 

一定の金額の計算方法は,前述の借入金利子の場合と同様で,借入金利子を償却費の額と読み替えて下さい。

 

国外中古建物の不動産所得の損失金額につき損益通算が制限されるようになったのは令和3年からですが,それは,法定耐用年数のほとんどを経過した国外の中古建物を購入して過大な減価償却費を計上することで意図的にマイナスの不動産所得を生じさせ,給与所得と損益通算することで所得税の還付を受けるという節税策が流行したことが背景にあります。

 

米国等では数十年経過した中古建物であっても価値が下がらないため,購入後数年間はこの節税策で所得税の還付を受け,その利益を享受した後にそれほど値下がりしない金額で売却して資金を回収するということが可能でした。

 

<別荘を賃貸したことによる損失の金額>

所有している別荘を自己が利用しない期間に賃貸した場合の不動産所得につき損失が生じた場合には,その損失の金額は「生活に通常必要でない資産」に係る損失の金額であるため生じなかったものとみなされ,損益通算することはできません。

 

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