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名義預金

2021-10-27(水) 16:43:30

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相続税の税務調査において,申告漏れが指摘されることが多い項目の一つに名義預金があります。

 

国税庁が令和2年12月に発表した「令和元事務年度における相続税の調査等の状況」では,申告漏れ相続財産の金額の構成比において現預金は33.1%と,最も申告漏れが多い相続財産となっています。

 

名義預金とは,預金の名義人と真実の所有者が異なる状態にある預金のことをいいます。

典型的な例は,親が管理保管している子供名義の預金です。

 

相続税に限らず税法には,実質課税の原則あるいは実質所得者課税の原則という考え方があり,その趣旨は,税法の解釈等については各税法の目的に従い,租税負担の公平を図るよう,それらの経済的意義及び実質に即して行うものとするという考え方です。

 

よって,預金の名義が子供であっても,それを管理保管しているのが親であり,親が自由に引き出して消費し得る状態にあるような預金は,その真実の所有者は親であることになります。

相続税に当てはめれば,被相続人の配偶者や子供名義の預金であっても,それを管理保管していたのが被相続人であり,被相続人が自由に引き出して消費し得る状態にあったのであれば,その預金の真実の所有者は被相続人であり,相続税の申告に含める必要がある,ということになります。

 

名義預金が生じるケースで多いのは,

①配偶者や子供名義の預金を作成し,そこに毎年贈与として被相続人の預金から資金を移転するものの,その配偶者や子供名義の預金を被相続人自身が管理しているケース,

②生活費として夫が妻の口座へ資金を毎月移転したものの,費消しなかった余剰金が累積したケースです。

 

①については本人は贈与したつもりであっても贈与が成立していないとして,②については生活費を拠出したのは夫であり余剰部分は拠出者に帰属するとして,それぞれ名義預金と判断されることが多いです。

 

このような名義預金ですが,実務的には誰に帰属する預金であるのかの判断が難しいこともあります。

名義預金の帰属の判定要素としては,

(A)原資の出損者は誰か,

(B)取引や口座開設の意思決定をし,その手続きを行っていたのは誰か,

(C)管理運営により利得を収受していたのは誰か,

(D)名義人との関係性,

(E)名義人が名義を有することになった経緯,

等があり,これらを総合勘案して真実の所有者が推定されます。

 

では名義預金と認定されないためにはどのような対策を講ずれば良いのかですが,上記①について言えば適正に贈与契約を成立させておく,ということになります。

 

民法上,贈与とは,贈与者が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し,これを受贈者が受諾することによって効力が生ずる契約です。

あげます(申込み),もらいます(受諾)という関係が必要で,一方的にあげますだけでは贈与契約は成立していません。

 

民法上は口頭でも贈与契約は成立し得るのですが,第三者(主に課税当局)に贈与の事実を立証する必要がありますので,贈与契約書は作成すべきです。

氏名と日付は印字ではなく自筆とし,出来れば公正証書が望ましいですが,公正証書はちょっと手間だと思われる方は,作成した贈与契約書に任意の切手を貼って郵便局に持参しますと切手に消印を押してくれますので,これを保管しておくと贈与契約書作成日時の証明にはなります。

 

また,贈与の事実を通帳に残すために資金移動は通帳から通帳への振込みとし,贈与する金額はあえて贈与税の申告が必要となる110万円超にしておくという工夫も有効です。

 

贈与後は通帳と印鑑を受贈者に渡しておく必要がありますが,多額の預金を自由に使える状態にしておくことに不安がある場合には,贈与後の資金を原資に生命保険に加入させ貯蓄させたり,贈与するのは資産管理会社の株式とし,会社の資金管理を取締役として一緒に行うようにするなどの方法が考えられます。

 

名義預金は,表面上は被相続人名義でないことから相続税の申告財産に含めることに積極的になれないかも知れませんが,名義預金であることを認識した上での申告漏れの場合には重加算税の対象になり得るため,適正に申告財産に含めることが望まれます。

 

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