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生命保険金と生命保険契約に関する権利について

2020-03-04(水) 11:44:12

カテゴリー:

<生命保険金の課税関係>

被相続人の死亡により取得した生命保険金が相続税の課税対象となることは広く知られておりますが,保険料負担者(一般的には契約者)の違いにより,課税関係は次のとおりとなります(父が亡くなった場合)。

被保険者 契約者 保険金受取人 税金の種類
1 相続税
2 贈与税
3 所得税

 

1は,父が自分を被保険者として生命保険に加入し,子が生命保険金を受け取ったケースで,父から子への財産の移転としてみなして相続税の課税対象となります。

2は,母が父を被保険者として生命保険に加入し,子が生命保険金を受け取ったケースで,母から子への財産の移転とみなして贈与税の課税対象となります。

3は,子が父を被保険者として生命保険に加入し,自分(子)が生命保険金を受け取ったケースで,自らの所得として所得税の課税対象となります。

 

このうち1のケースについては,相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人を除く)が受け取った生命保険金のうち「500万円×法定相続人の数※」までの金額については相続税がかからないこととされています(※養子がある場合は一定の制限有り)。

 

相続が発生し実際に生命保険金を受け取っている場合には相続税の申告漏れは余り考えられませんが,次の「生命保険契約に関する権利」については,しばしば申告漏れとなることがあるので注意が必要です。

 

<生命保険契約に関する権利について>

生命保険契約に関する権利とは,相続が発生した場合において,まだ保険事故が発生していない生命保険契約(いわゆる掛捨ての保険契約を除く)で,その保険料の全部又は一部を被相続人が負担しており,かつ,被相続人以外の人がその契約者である場合の権利のことをいいます。

例えば次のような場合です。

被保険者 契約者 保険金受取人

 

上記のような,父が契約者(一般的には保険料負担者)で,母が被保険者である生命保険契約については,父が亡くなった段階では生命保険金は支払われず,父亡き後に契約者変更で母が契約者となり,その後,母が亡くなった段階で生命保険金が子に支払われます。

父が亡くなった段階では生命保険金は支払われませんが,契約を引き継いだ母がその後解約すれば解約返戻金を受け取ることができますので,父が亡くなった段階において,この解約返戻金相当額が「生命保険契約に関する権利」として相続税の課税対象になります。

 

しかし,死亡による契約者変更という課税事由を税務署が把握するのは容易ではなかったことから,これまでは生命保険契約に関する権利の相続税の申告漏れは頻繁に見受けられました。

 

このため,平成30年1月1日以後に生命保険契約等に関して死亡による契約者変更が生じた場合には,その保険会社等は税務署に対し,翌年1月31日までに「保険契約者等の異動に関する調書」を提出しなければならないこととなりました。ちなみに,平成30年中に死亡により生命保険契約等の契約者変更が生じ,期日までに提出された調書はおよそ10万枚にのぼるそうです。

 

生命保険契約に関する権利の評価額は,相続開始の時においてその契約を解約するとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額によって評価します。

なお,解約返戻金以外に支払われることとなる前納保険料や剰余金の分配額等がある場合にはこれらの金額を加算し,解約返戻金の額につき源泉徴収されるべき所得税の額がある場合には,その金額を差し引いた金額により評価します。

 

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