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未払決算賞与の損金算入時期

2019-12-05(木) 16:49:52

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事業年度終盤になると1年間の業績もおおよそ予測がつきますので,業績の良い法人では決算対策の一環として使用人に決算賞与を支給することがあります。

決算対策ですので,当然,当該事業年度の賞与として費用に計上したいところですが,そのためにはいくつか条件があります。

 

まず,法人税法上の使用人賞与の損金算入時期は,次に掲げる区分に応じ,次に掲げる事業年度です。

 

(1) 労働協約又は就業規則により定められる支給予定日が到来している賞与(使用人にその支給額が通知されているもので,かつ,その支給予定日又はその通知をした日の属する事業年度においてその支給額につき損金経理したものに限る)→ その支給予定日又はその通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度

 

(2) 次に掲げる要件の全てを満たす賞与 → 使用人にその支給額の通知をした日の属する事業年度

イ その支給額を,各人別に,かつ,同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること

ロ イの通知をした金額を通知した全ての使用人に対しその通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること。

ハ その支給額につきイの通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。

 

(3) (1)及び(2)以外の賞与 → その支払をした日の属する事業年度

 

(1)は予め支給日が決まっている通常の使用人賞与のことですので課税上余り問題になることはなく,実務上,しばしば課税当局から課税上の問題を指摘されるのは専ら(2)についてです。

 

具体的には次のような場合で,今期の業績が好調だった法人が社員の頑張りに報いると同時に利益圧縮を図るため期末間近になって決算賞与の支給を決定することはよくあることですが,実際の支給が翌事業年度になった賞与まで無条件に損金算入を認めてしまうと,事業年度終了後に未払賞与を計上することで課税所得をいくらでも減らすことが可能となってしまい,課税上問題であると言わざるを得ません。

 

そもそも法人税法では,債務が確定した費用のみ損金に算入することができ,まだ債務が確定しているとは言えない見積計上や引当金は,法令に別段の定めがあるものを除き,損金算入は認められません。

 

しかしながら,債務の確定が確証できる未払賞与についてまで損金算入を認めないというのも,それはそれで他の債務が確定した未払費用の損金算入が認められることと整合性が取れませんので,上記(2)のような条件を満たした未払賞与については,その損金算入が認められることになっています。

 

すなわち,未払賞与を損金算入するためには,①事業年度が終了する日までに各人に支給額を通知し,②事業年度終了後1か月以内に通知した者全員に通知した金額を支給し,③その事業年度で未払計上することが条件となっています。

 

これらの条件のうち,実務上,特に厄介なのが「通知をしていること」という条件です。

法令上は文書での通知が必要とは規定されていませんが,後日,税務調査があった場合には「通知をしていること」を立証する必要がありますので,口頭ではなく文書で通知することが必要となります。

 

更に,文書そのものは日付を遡って作成することが可能ですので,より念を入れて,事業年度終了の日までに通知したことを客観的に立証できるようにしておくことが必要です。

公証役場での確定日付までは必要ないと思いますが,社員一人ひとりから通知書の受領書を取得するという方法は広く用いられているようです。

 

また,法人によっては支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合がありますが,この場合のその支給額の通知は,ここでいう「通知」には該当しません。

よって,未払賞与を損金算入するためには,支給日において既に退職している使用人がいたとしても通知額どおりに支給する必要があります。

 

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