HOME >BLOG

BLOG

未払残業代のお話

2010-08-26(木) 18:34:39

カテゴリー:

数年前から電車内で 「支払い過ぎた利息を取り戻せるかも知れません。」 という弁護士や司法書士の吊広告をよく見かけるようになりました。最近ではテレビやラジオでもCMを聴くようになりました。

多くの消費者金融は利息制限法の制限金利である20%を超えて貸付を行っていたため、これを超える利息を支払い続けてきた債務者は、利息の過払いが発生しているケースがあります。

20%と制限されているのに何故それを超えて貸付できるのかといいますと、別の法律である出資法が上限金利を29.2%と定めているからです。

こうした過払い金が発生している債務者に対し、完全成功報酬を謳って弁護士や司法書士が過払い金の返還交渉や訴訟を手掛けるようになり、同様の事例が一気に広がり 「過払い金返還請求」 という一つのビジネスが成り立つようになりました。

そして、次に注目されている同様のビジネスが、「未払残業代請求訴訟」 です。

これが前出の過払い金返還請求と同様に広がり始めると、日本の中小企業はかなりの打撃を受けます。

日本の中小企業の場合(大企業もそうかも知れませんが)、適正に残業代を支払っている企業はそう多くありません。良くも悪くも労使ともにサービス残業を甘受しているというのが現状です。

しかし、労働基準法が経営側の実態を顧みずに労働者保護の姿勢をより強めていることもあり、最近では 「あなたは残業代をちゃんともらっていますか?」 と未払残業代請求訴訟を煽るような弁護士も出てきています。

会社に不満があり退職していった人などは、完全成功報酬型の弁護士に依頼することで訴訟に躊躇することはないでしょう。

しかも労働基準法第114条は、「裁判所は、(中省略)~規定による賃金を支払わなった使用者に対して、労働者の請求により、~使用者が支払わなければならない金額についての未払い金のほか、これと同一額の付加金の支払いを命ずることができる。~」 と規定しており、場合によっては倍額の支払いを要するケースもあります。

よって会社側は、このような未払残業代請求訴訟を提訴されないよう事前に社会保険労務士などの専門家に相談し、万全の対策を考える必要があります。

節税と脱税と租税回避行為

2010-08-25(水) 19:30:07

カテゴリー:

節税とは法に規定されている特例制度などを活用し合法的に税額を減少させることです。

脱税とは不正行為などにより税を免れることであり脱法行為です。

では租税回避行為とは何でしょうか?

租税回避行為とは、本来であれば税額は発生する取引について、通常では用いない不自然な法形式を採用することにより税負担を回避することです。

その取引自体は有効な取引であって、何ら仮装や隠ぺい行為は認められないところに特徴があります。

しかし、課税庁は、租税回避行為を認めると税負担が不当に減少してしまう場合には、これを認めずに課税してきます。その結果、課税庁と納税者の争いに発展することも多々あります。

そんな租税回避行為に対する課税として数年前に大きく報道されたのが武富士事件です。

この事件は、消費者金融大手・武富士の元会長から海外投資会社の株式を多額に贈与された長男が、租税回避行為を否認された結果、1,330億円もの課税を受けたというものです。

本件贈与が行われた平成11年当時は、海外に住所を有している者が海外にある財産を贈与されても、日本の贈与税は課税されないこととなっており、資産家の間では、息子を海外に居住させ、国内にある財産を様々な方法で国外財産に転換し、そしてそれを海外で贈与するという租税回避スキームがもてはやされていました。

本件は、当該スキームの典型例として注目されてきたのですが、一審は納税者が勝訴し課税処分が取り消されたものの、控訴審では課税庁が逆転勝訴し、課税処分は適法であると判断されています。

現在、最高裁で審理中ですが、経済のグローバル化・ボーダレス化が進み、生活形態が多様化している今日、最高裁がどのような判断を示すのか注目されます。

行きすぎた「節税」は租税回避行為と認定されることもありますから、充分な注意が必要です。

(ちなみに現在は法が改正され、上記スキームは課税されます。)

不動産賃貸借契約の更新料裁判

2010-08-24(火) 17:22:43

カテゴリー:

更新料裁判とは、マンションやアパート、事務所などの不動産賃貸借契約において更新料を支払うと定めた条項が、消費者契約法第10条に違反し無効なのか否かが争われている裁判です。

借主側の主な主張は、更新時に更新料を支払うと定めた契約条項は消費者契約法第10条に違反しており、よって更新料を支払う義務はない、というものです。

現在、この考え方を前提とした更新料の支払拒絶や、過去に支払った更新料の返還請求がなされる事例が多くなってきており、裁判になっているケースもあります。

そして裁判では、これまでは更新料の支払いを定めた条項が有効であるという「有効判決」が続いていましたが、最近では更新料の支払いを定めた条項は無効であるという「無効判決」が多くなってきました。

地裁・高裁での各裁判の判決は以下の通りです。

 東京地裁H17年10月26日 有効

 京都地裁H20年01月30日 有効

 大津地裁H21年03月27日 有効

 京都地裁H21年07月23日 無効

 大阪高裁H21年08月27日 無効

 京都地裁H21年09月25日 無効

 大阪高裁H21年10月29日 有効

 大阪高裁H22年02月24日 無効

このように、最近の裁判の流れは無効であるようにも思えますが、高裁でもその判断は分かれており、この大阪高裁の3つの裁判は全て上告され、現在、最高裁判所に係属しています。

最高裁がどのような判決を出すのか注目されますが、今後、貸しビルなどのオーナーは賃貸借契約ではなく定期借家契約とするなど何らかの対応が必要となりそうです。

更新料と同じような商慣習に、賃借している物件から退去するときに敷金から一定金額を無条件に差し引くという所謂「敷引き(償却)」がありますが、これも今後は契約条項の有効性を争うようなことになるかも知れません。

税務調査と書面添付制度

2010-08-23(月) 20:18:28

カテゴリー:

今年の初めに納税額数億円の相続税の申告をしました。

納税額が大きいため、税務調査必至と覚悟していたところ、今月初旬に早々と連絡がありました。

これまで私が経験した相続の調査はどれも申告してから2年くらい経ってからでしたので、税務署の素早い対応に驚きました。

この申告書には税理士法第33条の2に規定されている書面を添付して申告しておりましたので(いわゆる書面添付制度)、税務調査の前に税理士の意見聴収するとのことで税務署に呼ばれたのですが、どうせ形ばかりの意見聴収で後日税務調査するに違いないという思いで税務署へ向かいました。

担当の調査官(国税局の機動課)はかなり細かいところまでいくつも質問してきて、こちらも丁寧に一から説明してあげたのですが、最後に、では税務調査するかどうかも含めて来週連絡します、と言い、その日は終わりました。

やれやれ、やはり後日税務調査か、と思っていたところ、本日、税務署から電話があり、今回は調査省略しますとのこと。

ビックリしました。

書面添付制度は結構実践しているのですが、こんなに多額の申告が調査省略となったのは初めてのことです。

書面添付制度を実践している税理士はまだまだ少数派ですが(結構大変なので)、このようにきちんと実践すれば税務調査が省略される場合があります。

顧問の先生が書面添付制度を実践していない場合、実践するようにお願いしてみると良いかも知れません。

急場をしのぐ法人税の節税

2010-08-22(日) 17:36:37

カテゴリー:

事業年度末3か月前くらいになると、そろそろ今期決算の数字を本格的に予想して納税準備に入りますが、たまに、事業年度末近くになって急に多額の契約が取れて売上金額が一気に計上される場合があります。このような場合にどうするか?

生命保険に加入して所得圧縮を図ることも考えられますが、キャッシュがないと生命保険には加入できません。

そんなとき、事業年度を途中で切ってしまうという方法があります。

例えば4月~翌3月の事業年度の会社が、3月に多額の売上計上があることが確実視されていて、そのまま3月末を迎えると納税額が多額になってしまうようなケース。

この場合、決算期変更を行い2月末でいったん事業年度を切ってしまい、3月の売上を翌期にしてあげれば、とりあえず今期は課税されなくて済みます。そうすれば、次の決算期まで約1年ありますので、ゆっくり対策を考えることができます。

ただし、事業年度の変更はそうちょくちょくは使えません。毎年事業年度が変わってしまうのは課税上問題があるからです。本当に困った時、奥の手として検討するくらいが丁度良いかも知れません。