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裁判例

従業員持株会から自社株で代物弁済を受けた場合は「みなし配当」に該当するとした事例

掲載:2012-09-27

税目
所得税
裁判年月日
大阪高裁平成24年2月16日判決

建設業を営む甲社(原告)は,従業員持株会に対し約320億円の貸付金を有していたところ,その返済を受けることができなかったために,平成16年に従業員持株会から甲社株(自社株)による代位弁済を受けた。

これらの取引について課税当局は,代位弁済による消滅債権約320億円のうち「取得株式に対応する資本金等の額」約40億円を超える約280億円は「みなし配当」にあたり,甲社には所得税の源泉徴収義務があるとして,源泉所得税の納税告知処分等を行った。甲社はこれを不服として提訴。

 

甲社は,①本件代位弁済は従業員の福利厚生対策の危機を救済するためのものであり,単なる資本取引としての自己株取得ではから「みなし配当」には該当しない。②仮に「みなし配当」に該当するとしても,代位弁済で消滅した320億円には,甲社株の本来の取得価額50億円(資本取引)と福利厚生費に充てた270億円(損益取引)が混在しており,みなし配当の計算上,上記270億円は除外されるべきであると主張した。

 

大阪地裁及び大阪高裁の判断は,①従業員持株会は「民法上の任意組合」に該当し,その会員は甲社から債務を負う状態にあった。そして,本件代位弁済によりその債務が消滅したという事実関係がある以上,所得税法第25条で規定する要件を充足しており,みなし配当は生じている。②甲社は代位弁済で消滅した320億円に,本来の取得価額と福利厚生費が混在していると主張するが,所得税法上みなし配当の計算において,「取得株式に対応する資本金等の額」と比較すべきものは「交付金銭等の額」であると規定している以上,その主張は採用できない,として納税者の主張を斥けた。(平成24年9月27日現在上告中)

20120216