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結婚・子育て一括贈与
今年の税制改正では「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」が創設されます。制度の概要は以下の通りです。
贈与を受ける人(子や孫・20歳以上50歳未満)の結婚・子育て資金の支払いに充てるために,親や祖父母が金銭等を拠出し,金融機関に信託等をした場合には,子や孫1人につき1,000万円までは贈与税が課税されないという内容で,概ね教育資金一括贈与の非課税特例と同様です。
<扶養義務者相互間贈与はそもそも非課税ですが…>
1,000万円贈与しても贈与税が課税されないと聞くととても素晴しい制度だと思う方もいらっしゃるかも知れませんが,実はそうでもありません。
相続税法では「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」は贈与税非課税と規定しています(相法21条の3)。
扶養義務者とは,配偶者・直系血族及び兄弟姉妹・3親等内の親族で生計を一にする者をいいますので(民法877),親や祖父母が子や孫の入学金・挙式費用・出産費用等を「都度」負担してあげても,実はもともと贈与税非課税です。わざわざ金融機関と信託契約する必要はないし,税務署や金融機関にこれらの領収書を提示する必要もありません。
但し,「都度」負担するのではなく,まだ幼い子供の入学金や結婚費用として合計1,000万円を予め贈与しておく,というような場合は,もともと贈与税非課税とはいえなくなります。
よって,今回創設された制度は,「都度」払いであれば贈与税非課税であるものを,「一括」払いにさせるための制度であり,仮に当該制度を活用する場合は,この辺りの違いをきちんと理解しておく必要がありそうです。
<教育資金一括贈与と結婚・子育て一括贈与の違い>
教育資金一括贈与の非課税特例と結婚・子育て一括贈与の非課税特例は,制度概要は似ておりますが,次表のような違いがあります。
教育資金一括贈与 | 結婚子育て一括贈与 | |
非課税限度額 | 1人1,500万円 | 1人1,000万円 |
拠出期限 | 平成25年4月1日~平成31年3月31日 | 平成27年4月1日~平成31年3月31日 |
受贈者の年齢制限 | 30歳未満 | 20歳以上50歳未満 |
年齢制限前に受贈者が死亡した場合 | 贈与税課税なし
残額は受贈者の相続財産 |
贈与税課税なし
残額は受贈者の相続財産 |
年齢制限前に贈与者が死亡した場合 | 残額があっても相続税課税なし | 残額は相続税の課税対象となる |
<結婚・子育て一括贈与の最大の欠点>
結婚・子育て一括贈与の非課税特例の最大の欠点は,贈与者が死亡した場合に,一括贈与した資金のうちまだ使用していない残額がある場合には,その残額に対して相続税が課税されるということです。
これに対し,教育資金一括贈与の非課税特例は,贈与者が死亡した場合に,一括贈与した資金のうちまだ使用していない残額があったとしても相続税の課税はありません。
よって,両制度のうち相続対策として活用できそうなのは,教育資金一括贈与のほうであると言えます。
<他の贈与特例との併用>
上記以外にも贈与税には特例措置があり,これらとの併用も可能です。
暦年贈与基礎控除(年間110万円)又は相続時精算課税贈与(特別控除2,500万円),直系尊属からの住宅取得等資金非課税贈与特例(最大3,000万円又は1,500万円,重複適用可能)・教育資金一括贈与の特例(最大1,500万円)・結婚子育て一括贈与の特例(最大1,000万円),これらを併用しますと,総計7,000万円以上の贈与が非課税で可能となります。